『治療家向け』変形性膝関節症へのアプローチ -足関節と股関節に着目した評価をもとに考える-
変形性膝関節症へのアプローチ
~足関節と股関節に着目した評価をもとに考える~
変形性膝関節症(膝OA)の患者さんを担当すると、
多くの場合「膝関節自体」に目が行きがちです。
「それはそうだ」と思われる先生方も多いのではないでしょうか?

もちろん膝関節そのものの変形や炎症は痛みの大きな要因です。
ですが、痛みが出てしまった原因は膝関節だけでなく
その上下を挟む関節である、
足関節や股関節の可動域制限、筋力の弱さなどによるものが多く存在すると私は考えています。
建内(2020)によると,
歩行動作において、立脚期前半での股関節伸展筋の作用・立脚期後半での足関節底屈筋の作用が歩行には必須であり、
下肢の中でも股関節の大部分、そして足関節底屈筋が歩行動作の推進には重要な部分である、としています。

建内宏重 : 股関節 協調と分散から捉える第1版,株式会社ヒューマンプレス、2020
しかし、いきなり足関節・股関節に対するアプローチをされることで、
患者さんとしては「痛いのは膝なのに・・・」と不信感が募ってしまうこともあるでしょう。
膝の痛みを訴える患者さんからすれば、
膝を治療して欲しいのは当たり前のことです。
患者さんとの良好な関係を築くためにも、
リハビリをより意味のあるものにするためにも、
患部外へのアプローチの必要性を伝えることがとても大切になります。
今回は、73歳女性の膝OA症例を通し、
歩行分析をしていくにあたり、
「足関節」と「股関節」に注目したアプローチを考えていきます。
目次
・症例紹介
・評価のポイント
・評価後のアプローチ
・まとめ
◇症例紹介

- 73歳の女性
- 10年以上前に整形外科でのレントゲン撮影による診断にて両側の変形性膝関節症(当時、KL分類グレード2)
- 日常生活で痛みを感じる場面
・立ち上がりや階段昇降で右膝内側に痛み
・歩行中に左膝の内側(内側裂隙〜鵞足部)と膝の外側前方(外側広筋停止部)に痛み
- 痛みは右膝よりも左膝の内側の方が強い
- 画像所見:両膝内側関節裂隙の狭小化を確認
- ADL:自立しているが、痛みのため活動量が減少し、筋力低下や動きの硬さも出てきている
- 下腿外方傾斜が両側で確認
ー下腿外方傾斜についてはこちらのコラムをお読みください
◇評価のポイント
今回の方の場合、左右の膝関節の痛みがありましたが、
今回は左のみのアプローチを表記いたします。
- 足部の評価
距腿関節・距骨下関節・横足根関節・リスフラン関節 の評価
【距腿関節】
自動にて背屈をした際、左右差が顕著に見られました。
他動にて背屈のチェックをした際も左足関節の背屈制限を確認しました。
この背屈制限がどのようになって生み出されているのか、紐解いていきます。

【後足部】 内反
【距骨下関節】 回外傾向
【距骨】 外旋+背屈
距骨下関節回外についてのコラムはこちら

【横足根関節】 内転傾向
【リスフラン関節】 底屈・回内優位
【前足部】 外反

横足根関節・リスフラン関節の評価については
下記のコラムをご覧ください。
足部評価のまとめ

後足部 内反
距骨下関節 回外
距骨 外旋・背屈
横足根関節 内転・回内
リスフラン関節 底屈・回内
前足部 外反
足部の評価から推測できること
距骨下関節が回外すると踵骨の上についている距骨は外旋・背屈します。
その結果、下腿は距骨の動きに連動するので外旋します。

足関節背屈に必要なのは距骨の内旋・底屈、下腿内旋です。
このままでは足関節の背屈が出来ないので下腿は外旋+外方傾斜をして足関節背屈を代償します。

- 股関節の評価
股関節の伸展制限が見られ、
骨盤前傾位による腰椎の伸展代償が強く出現しています。


皮膚や筋膜の動きを確認したところ股関節の内転・内旋位が強く、
下の写真のように、伏臥位での股関節自動伸展運動の評価において、股関節伸展制限および、臀筋機能の低下による、腰椎の伸展代償が見られます。

股関節の評価から推測できること
股関節の伸展制限が見られ、立脚後期で身体重心が膝より後方に残ります。
それにより、膝関節に屈曲方向の外力(外部膝関節屈曲モーメント)が加わりやすくなり、
この状態が続くことで大腿四頭筋は過剰に働き、膝屈曲位での姿勢保持(膝後方組織の短縮)が、
習慣化されてしまいます。
→膝関節伸展制限の助長

https://pt-sonobe.com/archives/4029〜を参考に作図
股関節内旋が強く、下腿との回旋軸のずれが起こり、
下の画像のように回旋軸が内方化してしまうことが推測されます。

DonaldA.Neumann:筋骨格系のキネシオロジー第3版,医⻭薬出版株式会社、2018より改変引用

足関節と股関節評価の結果、推測できることは
距腿関節の背屈不良による下腿外方傾斜が、膝関節に対する内反ストレス増加を促し、
膝関節内側コンパートメントへの荷重増大が小外傷の蓄積による関節破壊が起きているのではないか。
→骨髄内圧の増大・関節包や靭帯の伸⻑・局所的な虚血・滑膜炎が起きていると推測します。
股関節の伸展制限、内転・内戦によるアライメント不良が、膝関節伸展制限や下腿軸の内方化を助長し、
臀筋機能不全による床を押すような、機能的な膝関節伸展が出ず、
大腿四頭筋のオーバーユースなど膝関節優位の動きへと繋がってしまうと考えます。
◇評価後のアプローチ
評価後のアプローチとして、
足関節
「距腿関節背屈制限に対するアプローチ」
①距骨下関節 回外傾向に対してー屈筋支帯リリース
②横足根関節 内転傾向に対してー距舟関節内側リリース
③Kagerʼs Fat Pad『内側圧痛優位』→リリース
④リスフラン関節 底屈優位に対してー下腿中1/3の遠位部(前脛骨筋-長趾伸筋間)を内旋方向へ

距骨下関節回内誘導、横足根関節外転誘導、リスフラン関節底屈可動域改善を目指すことで、
前足部荷重での底屈出力改善、距骨に対して下腿が内旋していけるようアプローチをしました。
股関節
「股関節伸展制限に対するアプローチ」
①股関節後面、②小臀筋、③縫工筋に対するリリース
「股関節内転・内旋に対するアプローチ」
④内転筋短縮へのアプローチ(恥骨筋、長・短内転筋)


その結果、
・下腿外方傾斜の改善
・股関節内旋の軽減
・歩行時膝関節内側の痛みの低下
before

after

◇まとめ
膝OAの患者さんを診るとき、膝そのものに注目しがちですが、
足関節や股関節の機能低下が変形性膝関節症の痛みを悪化させているケースは
非常に多いと思われます。
膝関節の評価・アプローチだけではなく、
足関節・股関節への介入をすることが
結果的に膝OA症状への改善に繋がる可能性が高いと思います。
今回の症例でも、足関節の背屈不良・股関節のアライメント不良や姿勢制御不良が、膝への負担を増幅させていました。
膝OAに対する治療を考えるときは、
膝関節を診ることももちろん大事ですが、
- 距腿関節
- 距骨下関節
- 横足根関節
- 股関節
など歩行動作における下肢機能全体を評価する
といった視点を持つことが、より効果的なアプローチにつながります。
「膝だけを見る」のではなく「全体のつながりで考える」
そのような視点を持つための、
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小手先の知識ではなく、考え方の基盤が変わる内容となっておりますので
ぜひ本セミナーをご覧ください。
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坂本裕哉

参考文献・資料
DonaldA.Neumann:筋骨格系のキネシオロジー第3版,医⻭薬出版株式会社、2018
理学療法士 園部俊晴のブログより https://pt-sonobe.com/archives/4029
建内宏重 : 股関節 協調と分散から捉える第1版,株式会社ヒューマンプレス、2020
本セミナー
K3 『私、O脚なんです・・・ゆがんでますか?』 に対する歩行動作の捉え方とアプローチ
D1 Deep Knowledge –foot & ankle- 足部・足関節について深く知る
D4 Deep Knowledge -Knee- 膝関節について深く知る
D3 Deep Knowledge –Hip&Pelvis- 股関節・骨盤について深く知る
D5 Deep Knowledge -foot & ankle-➁ 足部・足関節について深く知る➁
C1 Change – foot & ankle – 足部・足関節を診て、変える
C2 Change -Function for Gait- 歩行における下肢機能への対応
本文中のリンク先
下腿外方傾斜についてのコラムはこちら
距骨下関節回外についてのコラムはこちら
横足根関節についてのコラムはこちら
リスフラン関節についてのコラムはこちら
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