【sway backと前鋸筋の関係とrib flare】
Sway backと前鋸筋の関係とrib flare
今回はsway back姿勢と前鋸筋の関係についてお話ししていこうと思います。
Sway backとは
セミナーを受講している先生方、コラムを読んでくださっている先生方はご存知かと思いますがもう一度説明させていただきます。
① 頭部:前方変位
② 胸椎:後方変位
③ 骨盤:後傾・前方変位
簡単に言うと画像のような姿勢になります。
今回は②の胸椎の後方変位に重点を置いてお話ししていこうと思います。
胸椎の後方変位が起こるとどうなるのか
前胸部が短縮位になり大胸筋や小胸筋、前鋸筋も短縮位になります。
【前鋸筋】
起始:第1〜9肋骨
停止:肩甲骨上角・内側縁・下角
支配神経:長胸神経
では、前鋸筋の短縮により何が起こるでしょうか。
前鋸筋のはたらき
① 第1肋骨と第2肋骨に起始する線維の一部は肩甲骨上角に停止する(superior part)
前鋸筋の上部線維はその走行が水平方向になっており、肩関節の水平内転方向への身体の回転軌道を誘導するに適しています。
② 第2肋骨に起始する線維の一部と第3肋骨に起始する線維群は下角までの内側縁に停止します(middle part)
③ 第4~第9肋骨に起始する線維は、肩甲骨下角に集中して停止します(inferior part)
前鋸筋の下部線維は、斜め下方向へ走行しており身体の回転軌道を下側の上腕骨長軸方向へ誘導するのに適しています。
また、前鋸筋の起始部の下部線維は外腹斜筋と筋連結を有していて、前鋸筋の下部線維の活動が外腹斜筋の活動を誘発し体幹の屈曲回旋が強まる性質を持っています。
肩甲骨の外転+僧帽筋上部と共に肩甲骨の上方回旋
肩甲骨の外転に作用する場合、胸郭に対して前鋸筋の短縮が起こらないといけません。
逆に肩甲骨が固定され前鋸筋が短縮した場合、胸郭が後方変位します。
ここがポイントです。
Sway back姿勢だから
骨盤の後傾を取るためにハムストリングをリリース
臀部を使えるようにスクワット系のトレーニングを入れてみる
上半身の質量中心の位置を変えてみる
前足部に体重が乗るように足部のアライメントを見てみる
前胸部が短縮位だから大胸筋をリリース、ダンベルフライを試してみる
全て当てはまりますし、間違いではありません。
ですが、それでも施術後は良くなりますがまた元に戻ってしまうなど経験があるかと思います。
そんな時に前鋸筋を狙ってみるのもいいと思います。
その際に、前鋸筋のリリース、ストレッチ
サイドベントなどのトレーニングを入れてみるのもいいでしょう。
Sway backと胸郭の後方変位ともう1つ関係あるものがあります。
それは、rib flareです。
rib flareとは
胸骨下角が90度以上あり肋骨が浮き上がった状態のことを言います。
左右に出ていることもあれば片方だけ出ている場合もあります。
rib flareの人の特徴があります。
① Sway back
② 上位胸椎屈曲位・後方位
③ 下位胸郭前方位
④ 荷重位置が後方
⑤ 大腿筋膜前面緊張増大 です
これに伴い
① 臀筋機能低下
② 腹筋機能・腹圧低下
③ 上背部・前胸部stiffness
が起こります。
rib flareの方の歩行時の特徴
① 下位胸郭の抜ける感じ
→後方重心・身体が残る・のけ反る
② 床を押せない(前足部荷重不良)
→伸び上がらない・骨盤の横揺れ(sway)
③ 股関節伸展不良
→前に進まない・蹴れない
があります。
rib flareかを確認するために
まずは下位胸郭のアライメントを確認しましょう。
下位胸郭は下位胸郭は第7~12胸椎の範囲と考えます。
下位胸郭は肋骨の下あたりを後ろから把持して、
右が前にあるのか、左が前にあるのかを確認します。
また、下位胸郭は骨盤の上に載ってきますので骨盤による影響も受けやすいです。
ですから、sway back姿勢で骨盤が前方回旋している場合下位胸郭も一緒に前へ出ている可能性があります。
このような場合は
sway backと一緒にrib flareも改善していかなければいけません。
そして、rib flareの場合横隔膜が動きづらくなっていることがあります。
下位胸郭はバケツの取っ手のように左右に広がり膨らみます。これを『Bucket-Handle motion』と言います。
Backet-Handle motionには、横隔膜の下降が絶対条件になるのですが、このrib flareがあると横隔膜の下降があまり起きなくなってしまいます。
【横隔膜】
起始: 胸骨部 剣状突起の後面
肋骨部 第7~12肋軟骨な内面
胸椎部 第1~3腰椎、前縦靭帯
停止:腱中心
作用: 呼吸、腹腔内臓への加圧を助ける
横隔膜と呼吸に関する資料
吸気の際には収縮し、中心が下がり胸郭が広がり空気が入り、呼気の際には弛緩し中心が上がり空気が吐き出されます。
これが横隔膜の正しい動きになりますが、先程のようにうまく胸郭が動かなければ、この動きも制限されることになります。
このことからrib flareを改善するためには横隔膜も大切だということが分かるかと思います。
今後sway backの患者さんを診る際に
骨盤の前傾を出す
足部のアライメントを見る
頭部の前方突出を見る
前胸部の短縮位を取る
インソールを作成する
プラスαで
胸郭の後方変位・前鋸筋の短縮・呼吸も一緒に診てみてください。
普段のアライメント確認の他にも幅を広げて診てみること、普段とは違う視点で考えることが大切だと思います。
是非参考にしてみてください。
鍼灸師:髙塚 咲羽