【上半身からみる痛みの原因について】
【上半身からみる痛みの原因について】
日頃治療にあたっていると当たり前になっている《体の左右差》。
・右に比べて左脚が長いですね
・右肩が下がっていますね
・骨盤が左が下がっています
・骨盤が右が前に出ていますね
・右の股関節の曲がりが悪いです
このようなことを普段から見たり、触ったり、動かしたり様々な評価で感じるていることと思います。
ではこの感じているものが「痛み」とどのようなつながりをもっているかを上半身の左右差という観点からお話させていただきます。
まず、動作分析と治療マネジメントが運営するセミナーでは歩行分析を行う上で「踏み出し脚」、「蹴り出し脚」を決めることからスタートしています。
この「踏み出し脚」、「蹴り出し脚」は入谷式インソールで有名な入谷 誠先生の考え方です。
上記は「右が踏み出し脚」・「左が蹴り出し脚」の図です。
この場合、右の骨盤・脚全体が左よりもより前に出やすい=踏み出し脚ということになります。
逆に左骨盤・脚は後ろへより動く量が多い=蹴り出し脚となります。
骨盤の回旋差についてはコチラの記事が参考にしてみてください。
続いて上半身全体として診る時に重要なのは「上半身質量中心」です。
上半身の質量中心は、第7胸椎~第9胸椎あたりで、剣状突起(みぞおち)の付近にあたります。
上半身質量中心についてはコチラの記事を参考にしてください。
「上半身質量中心」が右・左どちらによっているかを診る必要があります。
最初にお話しした「踏み出し脚」と「上半身質量中心」には関連性があります。
原則、「上半身質量中心偏位側」⇒「踏み出し脚」となります。
もちろん逆になるパターンもありますが基本的に多くみられるパターンです。
この場合、体全体が右へ加速していきます。
そうなると右へ右へ体が流れていくような力がはたらくため結果的に右脚を前に踏み出そうすることで「右踏み出し脚」となります。
「右踏み出し脚」の下肢形態の特徴として
・骨盤後傾
・下腿外旋/外方傾斜
・ST回内
などがあります。
これらが痛みの要因となることが多くみられますが、
「上半身質量中心の偏位」が原因で【下行性運動連鎖】からの影響を受けて上記のような下肢マルアライメントを引き起こしていることもあります。
次に《上半身質量中心の偏位》パターンを示していきます。
①C字(台形)パターン
C字(台形)パターンは胸椎部での側屈が強く単純に肩が下がっている側に側屈を起こしている状態です。右肩が下がっていれば胸椎右側屈ということになります。この場合上半身質量中心右偏位となります。
②S字(平行四辺形)パターン
腰椎と胸椎での互い違いとなる側屈。例えば腰椎右、側屈胸椎左側屈での上半身質量中心右偏位。
このパターンの場合肩の下がり方は様々となります。上記の場合腰椎の右側屈が強ければ右肩下がり、胸椎の側屈が強ければ左肩下がり、または肩の高さが同じということもあります。
③C字(台形)逆シフトパターン
①のC字(台形)パターンと同様、胸椎部での側屈が強く単純に肩が下がっている側に側屈を起こしている状態です。右肩が下がっていれば胸椎右側屈 + 左(逆側)への偏位となっている状態です。この場合胸椎は右側屈しているが上半身質量中心左偏位となります。
※肩の下がっている側を診る場合は後ろから肩甲骨上端部または下角をみるとしっかりと判断できます。前からみる場合は肩甲骨の前傾が強いと後ろから見ると上がっているのに前からみると下がってえる場合があるので注意してみてください。
おもにこの3つのパターンを頭に入れて「上半身質量中心の偏位」をみることをおすすめします。
まずは「ぱっと見て」どちらに偏っているなと感じることが大切だと思います。
次に脊柱が実際どのような側屈があり「ぱっと見た」偏位を起こしているかを見極めること。
さらに偏位が歩行時にはどのような動きをするか確認していくこと。
このような順番で上半身質量中心をみていくとわかりやすいです。
最後に上半身質量中心の偏位と痛みの関連についての考え方・診かたです。
写真をご覧ください。
この方は明らかに右肩が下がっているのがお分かりかと思います。偏位パターンは①のC字(台形)パターンです。
右のIC(イニシャルコンタクト)時には上半身質量中心が右に偏位しているため写真のような上半身と床反力を受けた骨盤の突き上げが起こり右腰部に対して圧縮ストレスが加わります。
左では右肩下がりが残ったまま(=右偏位のまま)IC~LR(ローディングレスポンス)を迎えるため結果的に股関節が内転位・下腿外方傾斜が強まるため左腰部・股関節・大腿・下腿外側の伸張ストレスが加わります。
このようにみていくと上半身質量の偏位が下肢へ与える影響がわかってきます。
腰痛や下半身(股関節・膝・足)の痛みで下肢へのアプローチをしているけれどなかなか変わらない症状に対して、いち要因として上半身の偏位を次のアプローチ方法として選択してみてはいかがでしょうか?
松島 研也(まつしまけんや) 【柔道整復師】
アーチヴィレッジ