胸郭と下肢の連動が転倒予防に与える影響
【胸郭と下肢の連動が転倒予防に与える影響】
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運動していない人では、肺の使用量は全体の2~3割しか使われていないのをご存知でしょうか?
運動している人で8~9割。
そう考えると、活動量が落ちている方や高齢者は
肺が2~3割ほどしか使われていないと言ってもいいかもしれません。
そうなると、深呼吸のような胸郭を大きく動かすような動きはしなくても、
浅い呼吸で生活できていることになります。
■胸郭を大きく動かさないようになる
胸郭を動かさないようになるとは、どういうことでしょうか?
胸郭とは、胸骨・胸椎・肋骨、これらで構成されます。
そして、特に胸椎の動きの特徴としてカップリングモーションというのがあります。
カップリングモーションはこちら↓
胸椎は、回旋と側屈にとても関わります。
次に呼吸です。
下位胸郭(肋骨)は、バケツハンドルモーションと言って、左右に広がるような膨らみ方をして、
上位胸郭(胸骨・肋骨)は、ポンプハンドルモーションと言って、胸骨が上に広がるような膨らみ方をします。
「胸郭が大きく動かないようになる」
という事は、この呼吸時の正常な動きが無くなるという事です。
先ほどのバケツハンドル・ポンプハンドルモーションは、浅い呼吸よりも深い呼吸の方が
もちろん大きな動きとなります。
深い呼吸をすることで、関節は可動域最大のところまで動き、内外の肋間筋も伸張されます。
さらには、胸郭が広がることで酸素が肺に入っていき、肺の使われる容量が増えます。
反対の浅い呼吸は、関節も少ししか動かず、筋の伸張も少なくなり、酸素も多く取り込まれません。
肺の使われる容量も少なくて済むという事です。
■胸郭の回旋不足は歩幅を小さくする
動きの小さくなった胸郭。
そんな方が歩き出すと一体どうなるのでしょうか?
歩行時の胸郭の特徴は、Th7付近で上位胸郭と下位胸郭が逆回旋すると言われています。
歩行時の胸郭の特徴はこちら↓
この逆回旋があるおかげで、右足が大きく前に出るときに、右手は大きく後ろに振ります。
これは股関節や肩関節で大きく動いているのではなく、この胸郭のぞうきん絞りのような動きで、
歩幅は作られているという事になります。
となると、動かなくなった胸郭の人は、歩幅がどんどん狭くなるという事が言えます。
■そして転倒へ
大きな歩幅での歩行時の床反力は、股関節を最終伸展時に屈曲方向へと誘導します。
各関節でいうと、
内部股関節屈曲モーメント
内部膝関節伸展モーメント
内部足関節底屈モーメントが働くことになります。
足関節底屈モーメントが働くので、みなさんそれを一生懸命つま先上げ運動を転倒予防で
取り入れると思いますが、
大切なのは、この外部股関節伸展モーメントに対して、内部股関節屈曲モーメントが
働くことで、下肢全体を床から持ち上げるというところです。
この動きを阻害されるから、転倒することにそろそろ気が付かないといけません。
■だから胸郭からアプローチする
もうお分かりかと思いますが、歩幅が狭い場合や姿勢が悪い場合は、
床を蹴り出す際に、床反力が股関節上もしくは、股関節の前面を通過します。
そうなると、股関節を伸展方向にもっていかれるから、股関節屈曲筋で下肢を前方に
もっていこうとする力は働かなくなります。
これではいくらつま先を上げまくったところで、残念ですが効果は出にくいです。
さらに言えば、腸腰筋の魔法も同じです。
腸腰筋の魔法はこちら↓
股関節伸展があるから、はじめて床反力により股関節は屈曲しようとする力が働くわけです。
そして、それらの問題はどこから来ている可能性があるかというと、
それが「胸郭」の可能性があるという事です。
■まとめ
・運動をしない、深呼吸をする機会が減少などで、酸素を多く必要としない
・胸郭の動きは少なくて済む
・胸郭が固まる
・歩幅の減少
・床反力の通る位置が変化する
・本来歩幅があると股関節伸展方向に持っていかれるので屈曲筋が働く
・それがなくなるので、股関節屈曲ができなくなる
・つまづくことにつながり、転倒につながる
胸郭の柔軟性獲得を目指すのは必要という事ですね。
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髙木慎一(たかぎしんいち)【柔道整復師】
Athlete Village浜松代表
アライメント・姿勢・歩行動作を総合的に分析し、その方に必要な
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