【痛みの根本治療のカギを握る姿勢評価と歩行評価】
【痛みの根本治療のカギを握る姿勢評価と歩行評価】
治療家の我々が日々日常的に遭遇する膝の痛み、腰の痛み、股関節の痛み。
これらの治療は多種多様に存在し、様々な論文や書籍で紹介されています。
一方で痛みの部位に対する治療を行ってもなかなか痛みが取れない、一時的に良くなっても次に来院されたときにはもとに戻ってしまう事があることも事実だと思います。
これらの痛みの症状に対して必ず考えなければいけないのは「重力とそれに対する姿勢制御」です。
少し複雑に思われる先生や、苦手意識がある先生も多いのではないでしょうか。
地球上で生きている人間は誰しも重力を受けています。重力を受けながら生活しているということは、常に重力に耐えながら生活しているという事を大前提に考えなければいけません。そうでないと立つことすらできませんからね。
そして人それぞれ重力を受ける位置に多種多様性を持っています。
これこそが痛みの原因を探るうえでとても大切な肝になるのです。
今回の記事では痛みの症状がある場所に重力下でどのような負荷がかかっているのか、姿勢評価と歩行評価をもとに考えていきたいと思います。
【重力をもとに関節モーメント考える】
関節モーメントとは大きく分けて外部関節モーメントと(内部)関節モーメントがあります。
外部関節モーメントは外力(重力・床反力など)によって加わる関節モーメントになります。
(内部)関節モーメントは外部関節モーメントを筋力や皮膚の張力を使って止める力になります。
文章では分かりづらいので図で説明します。
【K−1セミナー資料より引用】
図のような姿勢の方がいるとします。
この図の股関節に加わる関節モーメントはどうでしょうか。
答えは・・・
外部股関節伸展モーメント
(内部)股関節屈曲モーメント
です。
関節モーメントは
【考えようとする関節(今回は股関節)から、その上部にある質量中心がどこにあるのか?】
を考えるとわかります。
今回は考えようとする関節(股関節)の上部の質量中心は股関節よりも水平面上で後方にありますので、その力は股関節を伸展する力(黒矢印)になります。つまりこの人が力を抜くと股関節を伸展させながら後方に倒れるということです。
しかしこの方が倒れないでいるのはなぜでしょうか。
そうです。(内部)関節モーメントが作用(白矢印)しているからです。
つまりこの方は、
外部股関節伸展モーメントを(内部)股関節屈曲モーメント(股関節前面の筋や筋膜)を働かせて立っている
ことになります。
お分かりいただけたでしょうか。
では、この関節モーメントを実際の痛みとつなげて考えていきます。
動作分析と治療マネジメントのサイト内でも何度も出てきたSway back姿勢。
Sway back姿勢とは、図のように骨盤が後傾し胸椎の後弯を強める日本人に多い姿勢でした。
そして姿勢評価をするうえで重要なのが左右の上前腸骨棘を触り、どちらが水平面上で前にあるかで踏み出し脚と蹴り出し脚を評価しました。
踏み出し脚とは、歩行において前方に踏み出しやすい脚(矢状面上でより遠くにつきやすい脚)でしたね。そして踏み出し脚の反対の脚は蹴り出し脚になります。
さて、冒頭で説明した関節モーメントを膝関節で考えていきましょう。
歩行時イニシャルコンタクト~ローディングレスポンスで膝関節に加わる関節モーメントは、外部膝関節屈曲モーメントです。
そして(内部)関節モーメントは、(内部)膝関節伸展モーメントになります。
【入谷誠:足底板の現在、Sports medicine,2008,No.102 より引用】
踏み出し脚では足を遠くにつくため、膝関節から上部の質量中心位置(身体重心または上半身質量中心)が蹴り出し脚に比べてモーメントアームが長くなります。
つまり、踏み出し脚の方が蹴り出し脚よりも外部膝関節屈曲モーメントが強くかかるという事。さらには、(内部)膝関節伸展モーメントである大腿四頭筋を過剰に使いやすくなるとも言えます。
もし膝の前面(膝関節伸展機構障害)を痛がっている患者さんがいたとしましょう。
患側が踏み出し脚だった場合、痛みがある場所や、大腿四頭筋をマッサージなどの手技で緩めたとしてもその場では痛みが軽減されても、たくさん歩いたり、マラソンで走ったり、スポーツをすると踏み出し脚側の膝関節伸展機構を過剰に使う事になる為、痛みが再発する可能性があるのです。
このように痛みの再発、根本治療を行う為には痛みがなぜ出ているのかを考えることが重要で、重力下で生きている我々人間は【重力とそれに対する姿勢制御】を考える必要があります。
そして、姿勢を評価し重力が対象の関節にどのようなモーメント(力)を与えているのかを考える必要があります。
その痛みは結果であって原因ではないことは、臨床で多く経験しますから。
我々が行っているスペシャリストセミナーはこのように姿勢評価、歩行評価をもとに関節モーメントを考え、様々な痛みに対してのアプローチの方法を学ぶことができます。
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【柔道整復師】小池隆史