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歩行時の膝関節

歩行時の膝関節

膝関節を構成する骨は、大腿骨と脛骨、そして膝蓋骨です。
大腿骨と脛骨でつくられる関節が、大腿脛骨関節(以下:FT)。
大腿骨と膝蓋骨でつくる膝蓋大腿関節(以下:PF)の2つがあります。

膝関節は、stability(安定性)かmobility(可動性)のどちらの関節かと聞かれたら、stabilityに分類されます。
膝関節上下の関節である足関節・股関節はmobility。
この足関節・股関節の可動域が悪くなると、代償的に膝関節が過剰に働かなくてはいけない、という事が言えます。
同時に、足関節と股関節がしっかりと使うことができない場合も、その負担は膝に来る、という事にもなります。

<図:mobilityとstability>

それでは、より細かく話をしていきましょう。

「膝は自分では動かない、動かされていると考える」
この考え方についてお話します。
膝関節は上下からの影響を受けます。

まずは、下からの影響を考えてみましょう。
日常では、足が地面について生活しているので、膝関節は足関節・足部からの影響は間違いなく受けています。これはなんとなくイメージが付くかと思います。
しかし、具体的にどのように影響を受けているのか、が大切です。

膝の下には距腿関節があります。距腿関節は、距骨と脛骨・腓骨から構成される関節で、距骨の上に下腿両骨が乗ります。そしてこの下腿は膝関節を構成します。

距骨は、距骨下関節として、3軸の方向に動きますが(サイト内「距骨下関節の基礎」をご参照ください)、距骨の上に乗っている下腿は、距骨と同じように動きます。
この動きが、足関節・足部からの影響、つまり下からの影響になります。
これを「上行性の運動連鎖」と呼びます。
今度は、上からの影響を考えてみましょう。

先程の反対で、「下行性の運動連鎖」になります。
例えば、極端ですが大腿骨が、骨盤とガチッとくっついたとしましょう。
この状態で骨盤が前方に出たり、回旋したりすれば、同じように動いていきます。大腿骨は膝関節を構成しているわけですから、膝関節に与える影響はもちろんあるという事です。

このように膝関節は上下からの影響を受けます。

では、次に歩行と照らし合わせて考えていきましょう。

IC時に距骨下関節は回外します。そうなると、下腿は距骨の動きに伴って外旋します。(距骨下関節の基礎を読むことをおススメします。)→ 距骨下関節の基礎

<図:下腿外旋・距骨下関節も回外>

ここから、LRにかけて膝は屈曲しようとしますが、そうさせないように制御するのが大腿四頭筋です。大腿四頭筋が膝関節を伸展させようと、遠心性収縮をおこします。

ここに一つのポイントがあります。
もしこの時、足の位置を遠くにすればするほど(体から前方に放していくほど)、大腿四頭筋の遠心性収縮が強くなり、これが膝伸展機構障害につながってくるということです。
非常に大事なポイントになりますのでまた別でお話ししていきます。その話はこちら→ 歩行時の骨盤

 

さて、このとき大腿骨は、ICからLRにかけて、内旋します。

この理由は、同側の骨盤はIC時前方に回旋し、その回旋にともない大腿骨も内旋するからです。

 

<図:骨盤の前方回旋と大腿の内旋の矢印>

骨盤の動きに連動した大腿骨の内旋と捉えられます。

 

ただし、

 

大腿骨と脛骨を相対的に比べるのがポイントで、このとき大腿骨より骨盤が内旋して、骨盤と比べると大腿骨は外旋になります。

 

ここは大きなポイントです。

 

そして、大腿骨に対して脛骨はより外旋位となります。

 

これは、距骨下関節の回外に伴う下腿の外旋が、大腿骨の内旋よりも大きいからです。さらに筋活動でいえば、大腿骨は骨盤の前方回旋に伴い内旋しますが、IC時には大殿筋がショックアブソーバーの役目をなして、遠心性収縮で働くために、大腿骨を外旋方向にもっていく力が作用し、過度な内旋にならないわけです。

そのため、膝関節はICからLR時は見た目上は大腿骨も下腿も内旋方向に動きますが、相対的に下腿は大腿骨に対して外旋位、大腿骨は下腿に対して内旋位となります。
これが、治療で痛みを取るために本当に知っておきたい知識です。

次にMStからTSt、PSwにかけての話に移ります。

この時、膝関節はあくまで重心の移動と遊脚側のスイングによる受動的な動きをし続けます。

MStは前半と後半では膝関節が屈曲方向にもっていかれるのか、伸展方向にもっていかれるのかが大きく違うポイントになります。

LRの続きであるMSt前半は、大腿四頭筋がまだ筋活動の高い状態にありますが、後半では膝関節に伸展モーメントが発生し、大腿四頭筋は働かなくてよくなります。

そして、TSt、PSwにおいても膝関節は受動的な動きをします。

MSt時、骨盤が前方回旋している状態からニュートラルポジションに戻るため、それに伴い大腿骨も外旋位からニュートラル状態に戻ります。

<図:骨盤は前方回旋から戻る>

下腿は、距骨下関節が回内するため内旋位になり、FTでは大腿骨のニュートラルに対して、下腿の内旋という最大限のねじれが生じます。このとき、急激な下腿の内旋を大腿二頭筋や大腿筋膜張筋の働きで防いでくれています。

TSt、PSwでは、距骨下関節は回外位になるため、下腿は外旋します。この時、骨盤は後方回旋をするため、同時に大腿骨は外旋します。

<図:下腿・大腿外旋・骨盤外後方回旋の矢印>

MStの後半から逆側の下肢が対象側を追い越すため、逆側の骨盤は前方回旋、対象側では後方回旋になります。そして、TStの終わりには逆側のICになるため、荷重の移動が起こります。荷重が反対側に移り、骨盤の後方回旋によって得られた、大腿骨の外旋はOKC(オープンキネティックチェーン)による運動連鎖により、下腿も外旋位となります。
膝関節は、正常であれば大腿骨と下腿はともにニュートラル状態となるため、この時期には回旋ストレスは受けなくなります。

このように、膝関節は上から、下から、いろいろな要素から影響を受け、

「膝は自分では動かない、動かされていると考える」
ということになってきます。

 

ここでお話した各部の動きでも、様々な障害や痛みの原因につなげて考えてみることができますね。

 

 

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