【ハイアーチによる足関節背屈制限と歩行の関係について】
【ハイアーチによる足関節背屈制限と歩行の関係について】
ハイアーチは足関節背屈制限を呈する因子の一つです。
今回はハイアーチが歩行中になぜ足関節背屈制限を起こすのか、その結果どのような疾患に繋がるのかについて紐解いていきたいと思います。
~ハイアーチとは~
ハイアーチとは、「足部内側縦アーチの上昇や足部外側縦アーチの低下」とされています。
片寄 正樹:足部・足関節の理学療法マネジメント
このようにアーチが低下してしまう、もしくは上昇してしまう原因は、靭帯や筋などの動的・静的支持機構の短縮、癒着などによる伸張性の低下や機能不全によるものです。
靭帯や筋などが働かなくなってしまう為、シンスプリントや足底腱膜炎などの疾患に繋がってしまいます。
そして、ハイアーチに多いアライメントは、
距骨下関節(ST)回外
距骨外旋・背屈
横足根関節(MT)内転・回内
第1リスフラン関節(1Lis)底屈・内転・回内
ここでポイントとなるのが1Lisの背屈可動域です。
1Lisとは、内側楔状骨と第1中足骨で構成される関節です。動きとしては主に背屈(回外)、底屈(回内)を行います。
通常、歩行中は立脚後半で1Lisが背屈していきます。
この時、足部ではSTが回内し、距骨が内旋、底屈、そして1Lisは背屈します。
しかし、ハイアーチの方の多くがこの1Lisの背屈可動域が無いことがあります。
では、背屈可動域が無いとどうなるのか?
答えは、「足関節の背屈可動域が制限」されます。
通常、足関節の背屈可動域が必要になるのはMst~Tstにかけてです。
Mst~足部は、
ST回内→距骨底屈・内旋→MT外転・回外→1Lis背屈・回外・外転→下腿内旋
このような一連の運動連鎖が起こることで足関節は背屈を行うことが出来ます。
しかし、先程のハイアーチのアライメントは上記とは真逆になります。
ハイアーチの方が歩行を行うと(※ST回内の可動域、1Lis背屈可動域が無い場合)
ICは踵骨から接地しますが、ハイアーチの方は前足部外反を呈していることが多いので踵骨の次に母趾を接地させようとします。
踵骨と母趾の接地だけでは前方へ進むことが出来ないのでST回外代償して小趾を接地させます。
母趾から接地
ST回外代償して小趾を接地
STが回外すると踵骨の上についている距骨は外旋・背屈します。その結果、下腿は距骨の動きに連動するので外旋します。
足関節背屈に必要なのは距骨の内旋・底屈、下腿内旋でした。
このままでは足関節の背屈が出来ないので下腿は外旋+外方傾斜をして背屈を代償します。
このような方はTstで足がめくれ上がるような歩行を行います。
まとめるとこのようになります。
踵骨接地→第1Lis関節底屈位→ST回外代償→下腿外旋→足関節背屈制限
さらに、足関節背屈可動域が制限されている為Mst後半~Tstにかけて下肢の伸展相が減少します。股関節の伸展が出来なくなります。
(股関節伸展制限の代償やST回外・下腿外旋から同側骨盤後方回旋する場合もあります)
言い換えれば、下肢の屈曲相が優位になるということです。
下肢の屈曲相優位
下肢の屈曲相が優位になった場合股関節伸展機能がしっかりとしていればいいのですが、機能低下を起こしている場合は大腿四頭筋が優位になり膝関節に対するストレスは強くなります。
この状態で歩行を繰り返せば下腿の外旋はさらに強くなり、大腿四頭筋へのストレスも強くなります。足部はシンスプリントや足底腱膜炎、膝はオスグッドやジャンパー膝などに繋がります。
こういったことを考えても足関節背屈制限は足部だけでなく、膝など他の関節にも影響を与えているので改善しなければいけません。
足関節の背屈が改善してくると下肢の伸展相も増えて大腿四頭筋へのストレスも減少して膝の痛みも改善してくると思います。
もちろんこれは一つのパターンなのですべてがこれに当てはまるわけではありません。
何が原因で動きを制限しているのか、痛みが出ているのかを見抜くことが必要です。
石井 涼 【アスレティックトレーナー】