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歩行時の足部

【扁平足が原因で起こる足底腱膜炎やシンスプリントと歩行の関係について】

【扁平足が原因で起こる足底腱膜炎やシンスプリントと歩行の関係について】

 

 

足部内側縦アーチの過剰低下のことを一般的に扁平足と言います。学生や一般の方でも多い症状ではないでしょうか。

 

私も普段の臨床やトレーナー帯同した時、扁平足の方や選手を見ることは多いです。

 

扁平足は痛みの無い方も多くいらっしゃいますが、痛みを感じる方もいらっしゃいます。

 

扁平足で痛みを感じる方の多くは、足底腱膜炎やシンスプリント、外脛骨障害などを訴えます。

 

足底腱膜炎の痛みについてはこちらをご覧ください

 

さらに、扁平足では歩行時に様々な影響を与えます。歩行時、足部は衝撃吸収や前への推進の役割があります。

 

これがアーチの過剰低下で上手く働かなければ足部だけでなく、各関節に影響が出てしまいます。

 

足部以外の各関節に影響が出れば先程の足底腱膜炎やシンスプリントなどの症状をさらに強めてしまいます。

 

このような状態では本来の歩行動作から逸脱した動作となります。

 

そこで、今回は足部内側縦アーチの過剰低下(扁平足)が起こると歩行にどのような影響を与え足底腱膜や脛骨内側がなぜ痛みが出るのか紐解いていきます。

 

~Contents~

 

・足部・足関節の構造

・足部アーチの役割

・静的支持機構と動的支持機構

・トラス機構とウインドラス機構

・内側縦アーチ過剰低下の足部アライメントと運動連鎖

・内側縦アーチ過剰低下の歩行パターン

 

【足部・足関節の構造】

足部は26個の骨で構成されておりそれぞれ関節を形成しています。

 

ショパール関節についてはこちらをご覧ください

リスフラン関節についてはこちらをご覧ください

 

筋肉や靭帯も多く付着していて足部の可動性や安定性に役立っています。

 

そして、もう一つ安定性や衝撃吸収に役立っているのが「足部のアーチ」です。

足部アーチは3つで構成されていて、内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチがあります。

 

この3つのアーチは後述する静的支持機構や動的支持機構に支持されており靭帯や筋肉によってアーチが保持されています。

 

筋肉や靭帯が機能することで私たちは歩行やランニングが可能となるのです。

 

【足部アーチの役割】

足部アーチの大きな役割は

荷重時の衝撃吸収と推進期の力の伝達効率上昇 

引用:片寄 正樹、他 足部・足関節理学療法マネジメント

とされています。

 

つまり、アーチがあることで地面からの力を上手く吸収して前方へ進みやすくすることを言います。

 

逆を言えば、アーチの低下はスムーズな前方移動を阻害することになります。

 

そして、アーチにはそれぞれ役割があります。

先程の、内側縦アーチ・外側縦アーチ・横アーチですが、

内側縦アーチは、踵骨、舟状骨、内側楔状骨、第一中足骨で構成されています。

内側縦アーチは舟状骨を頂点としてカーブを描くような構造をしています。

 

一般的に言われる扁平足はこの内側縦アーチが消失したことを言います。

 

内側縦アーチが消失すると距骨下関節(以下ST)が過回内しショパール関節(以下MT)が外転するので、

 

舟状骨や楔状骨に停止を持つ後脛骨筋や前脛骨筋は機能しづらくなり足底腱膜炎やシンスプリント発症の可能性を高めてしまいます。

 

距骨下関節の回内についてはこちらをご覧ください

距骨下関節の回外についてはこちらをご覧ください

 

外側縦アーチは踵骨、立方骨、第4.5中足骨で構成されています。

特に内側の靭帯(脛舟・脛踵・前脛距・後脛距)が外側縦アーチ保持に貢献しています。

 

内側縦アーチの上昇又は、外側縦アーチが消失したことをハイアーチと言います。

 

横アーチは、内・中・外側楔状骨で構成される中足部、第15中足骨で構成される前足部に分けられます。

横アーチの低下は開張足や外反母趾を生じさせます。

 

この中で臨床上多く見られ、痛みに繋がるのは内側縦アーチの低下です。

 

その為、この内側縦アーチがどのような組織に支えられているのか知っておかなければなりません。

 

【静的支持機構と動的支持機構】

内側縦アーチを保持しているのは静的支持機構と言われる靭帯や関節包と動的支持機構と言われる筋肉や腱によって支持されています。

 

静的支持機構の中でも重要な支持組織が底側踵舟靭帯長・短足底靭帯足底腱膜3つの組織がアーチ保持に貢献しています。

 

コンピューターモデルを用いた研究ではこれら3つの組織のアーチ保持への寄与率は底側踵舟靭帯が8.0%、長・短足底靭帯が12.5%、足底腱膜が79.5%となっており足底腱膜のアーチ保持の寄与率が高いことが分かります。

引用:片寄 正樹、他 足部・足関節理学療法マネジメント

 

そしてこれら3つの靭帯は特徴があります。

底側踵舟靭帯は上内側線維・下底側線維・内底側斜方線維の3つの線維で構成されており、

 

中でも上内側線維が最も幅が広く、内側縦アーチ保持に役立っています。

 

また、臨床ではバネ靭帯やスプリング靭帯とも言われています。

長・短足底靭帯は踵骨~立方骨、第1~3中足骨に付着していて踵骨や立方骨の回旋を制御しています。

 

この靭帯の緊張が強くなれば立方骨の回内、外の可動域が制限され骨性のロックが働かない場合があります。

 

 

そして足底腱膜は内側線維・中央線維・外側線維の3つで構成されており、

 

中でも中央線維が最も幅が広くアーチ保持に重要な役割を果たします。

 

先ほど述べたように静的支持機構の中ではこの足底腱膜がアーチ保持に一番役立っています。

 

 

一方、動的支持機構とは、後脛骨筋や長趾屈筋、前脛骨筋、母趾外転筋などの足部の外在筋や内在筋のことを指します。

 

特に後脛骨筋は筋の走行上、アーチ保持に役立ちます。

 

後脛骨筋の起始は骨間膜、脛骨後面から舟状骨、全楔状骨、第24中足骨に停止。

後脛骨筋の機能は底屈と内返しですが、

 

足部が地面に接地した時は内側縦アーチが過剰に低下するのを防ぐ機能をします。

 

またSTの制御にも関与していて荷重の際、

 

STが回内方向へ行き過ぎないように働き、蹴り出しの際はSTを回外させ足部の剛性を高める働きがあります。

 

これは筋の走行が内果後方を通り足底の複数の骨に停止する為このような働きが起こります。

STの過回内を制御

 

蹴り出しでSTの回外を制御

 

後脛骨筋はアーチ保持だけでなく足部の動きの制御や剛性を高めることに役立っています。

 

【トラス機構とウインドラス機構】

足部の話をする上で切っても切り離せないのがトラス機構とウインドラス機構です。

 

この2つは正常な歩行を遂行する上でも非常に重要な機能になります。

 

トラス機構とはLR~Mstにかけて荷重がかかっていく際に

 

足部の骨が潰れるのを足底腱膜の引っ張りで耐えることを言います。

 

歩行周期のLR(ローディングレスポンス)についてはこちらをご覧ください

歩行周期のMst(ミッドスタンス)についてはこちらをご覧ください

 

ウインドラス機構はTst~PswにかけてMPが伸展していく際に

 

踵骨内側結節~足趾に付着する足底腱膜が

 

踵骨と足趾の距離を短くして足部の剛性を高めることを言います。

 

歩行周期のTstについてはこちらをご覧ください

 

また、ウインドラス機構が働く時、足部の支点は踵骨からMP関節となり重心を前方へ移動させることが出来ます。

 

これをフォアフットロッカー機能と言います。

MPを支点にして重心を前方へ移動

 

フォアフットロッカー機能が働く時下腿三頭筋は遠心性収縮に働き前方への動きを制御しています。

 

それだけではなくアキレス腱と足底腱膜は連続性がある為、

 

下腿三頭筋の収縮は足底腱膜を緊張させ足部のアーチ挙上に貢献しています。

 

このようにトラス機構、ウインドラス機構は歩行中の様々な場面で活躍しています。

 

トラス機構とウインドラス機構についてさらに詳しく知りたい方はこちら

 

【内側縦アーチ過剰低下の足部アライメントと運動連鎖】

ここから扁平足の足部アライメントについてお話していきます。

扁平足の一般的な足部のアライメントは 

[下腿内旋・ST過回内・距骨内旋、底屈・MT外転優位・リスフラン関節背屈、外転、回外]

となります。

 

 

足部の診かたについてはこちらをご覧ください

 

上記の写真は内側縦アーチがベタっと潰れています。

 

この時点で衝撃の吸収や前方への推進が行いづらいことが分かると思います。

 

通常荷重時の運動連鎖として、

 

STの回内が起こると踵骨の上についている距骨は底屈、内旋します。

 

つまり距骨が下に落ち込みます。

 

その上についている下腿は距骨と動きがセットなので必ず内旋方向へ動きます。

 

これが扁平足の方の場合は過剰になります。

 

STが過回内し距骨の底屈、内旋量が増加します。

 

下腿は距骨の動きについていく為、当然下腿の内旋量も増加します。

 

扁平足の場合下腿が内旋し距骨内旋、底屈、STは過回内

 

下腿は内旋量が増加すると大腿は相対的に外旋となります。※空間的に大腿は内旋位

その為、膝への回旋ストレスが強くなり膝の内側に痛みが出たり、

 

骨盤の前傾が強くなったりと上行性の運動連鎖として各関節に扁平足の影響が出る可能性があります。

 

足関節の背屈制限についてはこちらをご覧ください

 

それではこのようなアライメントで歩行を行った時どのような歩行になるのか、また扁平足で足底腱膜炎やシンスプリントが歩行中になぜ痛むのかをご説明していきます。

 

【内側縦アーチ過剰低下の歩行パターン】

通常、歩行動作はICでSTは回外で接地しLR~Mstにかけて回内しTst~Pswにかけて回外していきます。

 

足部接地から足趾離床までSTの回外→回内→回外が起こります。

 

 

ST回外(IC)

ST回内(LR~Mst)

ST回外(Tst~Psw)

 

STの回外が起こる時、MT関節を構成している距舟関節軸と踵立方関節軸が較差する為足部の剛性が高まります。

 

STの回内が起こる時は距舟関節軸と踵立方関節軸が平行になる為、

 

足部は柔軟性が増加します。

 

つまり、STの回外はショパール関節が内転しロックがかかり、

 

STの回内はショパール関節が外転しロックが外れて足部は自由度が増します。

ST回外時、踵立方と距舟の関節軸は交差する為足部の剛性が高まる

 

ST回内時、踵立方と距舟の関節軸が平行の為足部の柔軟性が増す

 

踵立方関節と距舟関節について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください

 

このSTとMTの動きのおかげで足部接地の時アーチが低下し、足趾離床でアーチを挙上させることができます。他にも、先程ご紹介したトラス機構やウインドラス機構が足部の剛性を高めることに貢献しています。

 

しかし、これは通常パターンの歩行です。

 

では、扁平足の方ではどうでしょうか。

 

扁平足の方の足部アライメントは、

下腿内旋・ST過回内・距骨内旋、底屈・MT外転優位・リスフラン関節背屈、外転、回外

でした。

 

この場合、ICはSTの回内で接地します。

 

STの回内 (IC

 

荷重がかかっていくときアーチが過剰低下しないようにトラス機構や静的・動的支持機構が支持してくれますが、

 

扁平足では元から内側縦アーチが低下している為、これらの機能が正常に働きません。

 

その為、荷重にするにつれて(LR~Mst)STには外反モーメントが加わり回内とMTの外転は強くなります。

 

つまり、足部が内側に倒れていくイメージです。

 

STには外反モーメントがかかる

 

STは回内に動きMTは外転が強くなる為、内側のアーチを潰しながら歩行を行います。

 

すると、次の歩行フェーズのTst~Psw(つま先が床から離れるまで)にかけて先程のウインドラス機構やフォアフットロッカー機能が正常に働きません。

 

つまり、下腿三頭筋の遠心性収縮や足底腱膜の剛性を高めることが出来ません。

 

足底腱膜は踵骨内側結節~足趾に付着しているのでSTが回内のままであれば伸長ストレスが加わります。

 

アーチを挙上させることが出来ないので足底腱膜にストレスをかけながら歩くことになります。

 

このまま歩行を繰り返せば足底腱膜の中央や踵骨付近などに痛みを訴え、足底腱膜炎になったり、足底腱膜炎の痛みが強くなります。

 

赤丸と黒丸に痛みが出やすい

 

さらにこの状態はシンスプリントの可能性も高めます。

 

先程の、内側縦アーチ過剰低下の足部アライメントと運動連鎖。でも述べたようにSTが回内するとその上についている下腿は内旋します。

 

下腿が内旋することで、下腿から足底に筋の走行がある長趾屈筋や後脛骨筋には牽引ストレスがかかります。

 

その中で長趾屈筋や後脛骨筋は筋の収縮を行うので長趾屈筋と後脛骨筋の交差部で滑走不全が起こります。

 

赤丸が長趾屈筋と後脛骨筋の交差部

 

距骨下関節とシンスプリントについてはこちらをご覧ください

 

このような状態で歩行やランニングを繰り返すと、足底腱膜炎同様、脛骨内側に痛みを訴えます。

 

扁平足で痛みが出ているのには必ず原因があります。

 

足部評価はもちろん、姿勢や歩行分析を行うことで痛みが出ている根本の原因を見つけることが大切だと思います。

 

ARCH Village 石井 涼 【アスレティックトレーナー】

 

痛み専門パーソナルトレーニング施設にて股関節や膝、腰、足部などの痛みを改善するための施術やトレーニング指導を行っている。また、現在ビーチサッカー、高校女子バスケ部でトレーナー活動を行っている。

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