【歩行時のMP関節の動き】
【歩行時のMP関節の動き】
歩行分析をするときに足部に関してはST関節の動きや下腿の傾斜、つま先の向きなどをポイントにしてみるのではないでしょうか。
今回はそれよりも遠位の関節であるMP関節(中足趾節関節)についてです。もちろん、それよりも近位の関節の影響を受けやすい関節ではあると思いますが、より細かく動きを見ていけたらさらに歩行分析が面白くなると思います。
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歩行時、MP関節(中足趾節関節)の動きとしては、底屈(伸展)と背屈(屈曲)が矢状面上で行われます。そしてもうひとつ、内転と外転は水平面上で行われます。
歩行ではICから始まり、体重がどんどん前足部に乗っていき、MSt後期からMP関節への荷重が進み、MP関節の伸展が起きスムーズな蹴り出しが行われています。
その当たり前のような動きにもたくさんの関節がうまく動いているからこそ起こることなのです。
MP関節で言えば、伸展する際に基節骨に対して中足骨が転がりながら種子骨の上を第1中足骨が滑ります。
ここで、種子骨が第1中足骨との間で動くことによって基節骨よりも底側に中足骨を滑らせています。
これがあるからこそ、MP関節はスムーズに伸展します。
では、今の話を元にわたしが診させて頂いているクライアントさんの症例を紹介していこうと思います。
そのクライアントさんは左膝の痛みと大腿前面部の張り感があると言うことで来院されました。
左骨盤の前方回旋が見られていたので、まずはそこを改善させるための治療とトレーニングを進めて行きます。
1回の治療で痛みと張り感は一度はなくなったものの、日が経つとまた元に戻ってしまうようでした。
何が原因で左の骨盤が前方回旋しているのかを探っていきます。
左の足部のアライメントを見ると距骨下関節回内、距骨は底屈内旋、MT関節外転、第1リスフラン関節背屈回外になっていました。
今回はこのクライアントさんに実際に行った、セミナーの中でも出てきているMP関節伸展テストを紹介していきます。
単純にMP関節の伸展の可動域を見ていくのですが、そのときに回外パターンであれば第1リスフランは底屈するため、伸展したときに中足骨が下がって沈んでいくような感じになります。これが転がりと滑りが起こっているということです。ただし、過剰に起こっている場合にはまたそこで不具合が生じることになるでしょう。
逆に、回内パターンでは第1リスフランは背屈しているためMP関節を伸展しても中足骨はあまり動きません。基節骨が伸展するだけというイメージです。
これを見れば大体この人はこうだろうな、というような予想が立てられると思います。簡単にチェックできますので、試してみてください。
話を戻しますが、このクライアントさんはリスフラン関節が背屈しているので、先程説明した基節骨に対して種子骨上をうまく滑ることができなくなり、MP関節の伸展制限が起きてしまっていました。
そのため、体重の前方移動がうまく行われず左足に乗っている時間が長くなってしまっています。左の骨盤前方回旋があるため、右足よりも荷重がかかりやすくなっていることでしょう。そしてなにより、蹴り出す際に大事なST関節の回外が出ていないため、うまく蹴り出せないのだと思います。
クライアントさんによく話を聞いてみると最近、歩いていると左の母趾球の辺りがたまに痛くなり何でだろうと思っていたと言います。ただ、膝や大腿前面の方が痛くて気になっていたためそのことを忘れていたそうです。
きっとそれが、このクライアントさんの痛みの根本的な原因ではないかと考えられます。
ひどくなると、基節骨の背側と中足骨の背側で骨が衝突し、骨棘ができてしまいます。それが余計にMP関節の伸展制限となり、悪循環を引き起こしてしまうでしょう。
そうならないためにも、しっかりとST関節の回外を出してあげなくてはいけません。
「左足部のST関節回外を出す」ことでMP関節の伸展がうまく起こるようになり、歩行時の前方への荷重がスムーズに行われ、左足に多くかかっていた負担が少なくなりました。
クライアントさんの左膝の痛みと大腿前面の張り感もなくなり、左のMP関節のたまに出ていた痛みも出なくなりました。
今回は歩行分析やアライメントを見て狙いを1つに絞ることはなかなか難しいところではありますが、そのクライアントさんとの会話のなかにヒントが潜んでいることもたくさんあるのではないかと教えてもらえたような気がします。
そして、今よりもより細かく歩行分析やアライメント評価をするために日々勉強していく必要があると感じます。
【柔道整複師】 増田鮎美(ますだ あゆみ)