成長期の踵の痛みと歩行について
【成長期の踵の痛みと歩行について】
治療やスポーツに携わっている先生なら一度は
成長期の踵痛に出会ったことは、あるのではないでしょうか?
少なくとも私はたくさん出会いました。
そんな「踵の痛み」についてです。
踵の痛みは「踵骨骨端症」など多くの疾患名がつきます。
激しい運動をする子どもに好発し
女性よりも男性によくみられるとされています。
酷いと骨棘、血行不全になれば壊死もするほど厄介な疾患です。
多くの保護者のかた、指導者のかたが悩んでいる疾患でもあります。
初期の症状で原因を見つけてあげれば悪化することもなく運動を思う存分できるようになると思います。
個人的には、治療は早ければ早いほどいいです。
今回は二つの症例をもとにお話ししていきます。
二つのパターン以外の症例もありますが
今回は私が担当させていただいて多いと思う
パターンを考えさせていただきます。
- Sway-backによる踵の痛み
このサイトの記事を読んでいただいている先生方なら
理解していただいた方も多いと思いますSway-back。
Sway back姿勢と腹圧の関係による腰痛について*URL
Sway-backの特徴である
「後方重心」によるICでの過度な衝撃
が痛みを生み出します。
ICについてはこちら
踵骨はICで衝撃を吸収する役割を他の関節と行っており
周りには踵骨脂肪体といわれる組織があります。
このパターンはその「踵骨脂肪体」の痛みです
歩行では、文献によって異なりますが
股関節に体重の3~4.5倍
足部には1.3~1.5倍かかるといわれています。
ただ、これは股関節のアライメントが正常で
股関節がしっかりと衝撃を吸収してくれている際の目安で
股関節が衝撃吸収の役割をうまく果たせないときはどうでしょうか?
踵や膝への衝撃がとても強くなるのでは、ないでしょうか。
画像はSway-back時のICと
正常時のICです。
Sway-backの際は股関節の後面を床反力が通るので殿筋が働かず
距腿関節の背屈制限などにより距腿関節が底屈位で接地し安定性がないまま接地することになり
衝撃を上手く吸収できず。踵骨脂肪体に過度な負担がかかってしまいます。
その衝撃を繰り返すことで
踵骨脂肪体は委縮していきます。
踵骨脂肪体には血管も豊富なので、炎症を起こしてしまったし
萎縮により血管不循になることがあります。
立っているだけでも痛く。
歩行ではより痛みがましてしまいます。
Sway-backが原因だった場合は
踵のアップローチや腓腹筋のアップローチだけではなく
後方重心に対してのアップローチも必要だと考えたいですね。
後方重心を前方重心に変えてあげる必要があります。
アップローチの考え方
もう一つは、先程の痛みの部位「踵骨脂肪体」ではなく
アキレス腱付着部あたりの痛みについてです。
「踵骨隆起」
- 反張膝(Back-knee)による踵の痛み
ご存知でしょうか?
詳しくはこちら
反張膝(Back-knee)とは、膝関節が伸展方向にいきすぎる
膝の過伸展状態のことを言います。
膝関節に屈曲制限があり曲がらない場合や
距腿関節の背屈制限がある場合も起こりえます。
今回も膝の屈強制限ではなく、
距腿関節の背屈制限、距腿関節屈曲位の患者さんの
パターンでお話しさせていただきます。
反張膝(Back-knee)の場合、踵をついた際に
床反力が
距腿関節の後面
膝関節の前面
股関節の前面
を通ります。
そうすることで、前に進むことができます。
この場合、距腿関節は底屈位で下腿は後面倒れてしまいます。
股関節は屈曲位になり上半身を前に持っていこうとします。
そのパターンで考えると、膝は後方に押し出されます。
膝が後方に押し出されるのを防ごうと膝関節屈曲筋で後面を走行する、腓腹筋が働きます。
腓腹筋は支えようとするわけですから遠心性収縮をして活動します。
そして、距腿関節での背屈制限があると重心が前方に移動していく際に
本当なら距骨の上を下腿が前方に倒れなければならないができないため
MP関節で背屈をしなければならなくなります。
そうなると、歩行の中で
健側よりも患側の方が
踵が上がるタイミングが早くなります。
踵が上がるということは、距腿関節の底屈ですから、
腓腹筋の求心性収縮が起こっているということです。
ここから
↓
ここです
腓腹筋は踵骨の踵骨隆起につきます。
反張膝(Back-knee)での痛みが出ている場合は
踵骨隆起付近に痛みが出ることが多いと思います。
まとめると、歩行の中で腓腹筋の遠心性収縮から急激な求心性収縮を繰り返すことで
成長期のアキレス腱付着部の踵骨隆起の骨膜に過度の負荷がかかってしまい
痛みがでていると言うことです。
今回の二つのパターンで言うと
圧痛部位や立位時痛、動作時痛はもちろんですが、
歩行周期でどのモーションの際に痛みが出るかでどちらに当てはまるかも
考えていかなければいけないのではないでしょうか。
そのために我々は患者さんとの会話、関係性
動きの違和感、アライメント(姿勢)
すべての判断材料をもとに治療やケアのプランを
立てて考えていきたいです。
十川 椋太朗(そごうりょうたろう)【柔道整復師】
アスリート鍼灸整骨院