歩行動作における足関節背屈制限が与える影響について
【歩行動作における足関節背屈制限が与える影響について】
足関節背屈制限は臨床上目にすることが多いのではないでしょうか。
この症状は小学生から高齢者の方まで幅広く患者さんがいらっしゃると思います。
足関節背屈制限があることで歩行動作、走行、スポーツ活動など多くの影響が生じます。
文献にもよりますが、歩行では10度、走行では30度足関節背屈の可動域が必要と言われています。
これが様々な理由で背屈可動域が制限されてしまいます。
特に歩行は日常生活でも絶対に必要な動作になります。
そこで、今回は足関節背屈制限が歩行中にどのような影響を与えるのかご紹介していきます。
足関節の背屈が制限される因子は様々です。
・捻挫によるもの
・背屈筋群の弱化によるもの
・下腿三頭筋の筋緊張によるもの
他にもこのような原因があります。
歩行中はOKCではなくCKCでの動作なので
足部は床に固定された状態で下腿が前傾していきます。その際足部は、
距骨下関節(以後ST)回内→距骨底屈・内旋→ショパール関節(以後MT)外転・回外→リスフラン関節背屈・回外・外転→下腿内旋
このような一連の運動連鎖が起こり足関節の背屈が出来ます。
特に、歩行中この足関節背屈が必要になるフェーズはMst~Tstにかけてです。
Mstで足関節背屈5度、
Tstで足関節背屈10度必要と言われています。
Mst=始まり:反対側の足が地面から離れた瞬間
終わり:対象側の踵が床から離れた瞬間
Tst=始まり:対象側の踵が床から離れた瞬間
終わり=反対側のIC
つまり、Mstは対象側の足底が地面に接地してから踵が離れるまで
Tstはつま先が床から離れるまで
そして、Mstの特徴として
・立脚側を遊脚側が追い越していく
・片脚立位になる
ということです。
Tstの特徴は
・骨盤の後方回旋が起こることです
Mstの際、距腿を中心に振り子運動のように重心を前方へ移動させます。
この機能をアンクルロッカーと言います。
アンクルロッカー機能により、
重心を前方へ移動、下腿が前傾し背屈が起こります。
さらに、下腿が前傾していく際床反力が働きます。
外部足関節背屈モーメント(足関節を背屈方向へもっていこうとする力)が働きます。
これに対して内部足関節底屈モーメント(足関節を底屈方向へ自家筋力でもっていこうとする力)が働きます。
そして、膝関節は屈曲から伸展方向へ働きTstへと移行していきます。
これらがMstからTstのフェーズで起こります。
この時、足関節背屈制限があったらいかがでしょうか。
様々なパターンが考えられますが、多くの場合
「ショパール関節の外転」で足関節の背屈を代償します。
このように代償動作が出る原因として、
OKCとCKCの違いが関係しています。
背屈制限がある方の場合で多いアライメントが、
【ST回外・距骨外旋・背屈・下腿外旋】 ※OKCの場合
このパターンが非常に多く見受けられます。
しかし、歩行中のMst~TstのフェーズはOKCではなくCKCの動作なので
【ST回内・距骨内旋・底屈・下腿遠位内旋・近位外旋】となります。
※このパターンだと下腿外方傾斜を伴うことが多い為、大腿に対して下腿近位は外旋位となります。
つまり、OKCの状態でも背屈制限があるので
荷重状態のCKCでは下腿を前傾(足関節背屈)することが出来ません。
その為、STを過剰に回内し内側のアーチを潰しながら
MTは外転して足関節背屈を代償し重心を前方へ移動させようとします。
※STの回内可動域が無い場合はこれにあてはまりません
さらにMst~Tstにかけて(対象側の足底が地面に着いてから踵が床から離れるまで)骨盤は後方回旋します。
骨盤の後方回旋に伴い、大腿は内旋方向へ働きます。
先ほどのMT外転で代償する場合下腿近位は外旋位でした。
その為、大腿内旋・下腿近位外旋となります。
これでは膝関節の回旋ストレスが強くなり
膝関節内側や外側に痛みを訴える可能性があります。
また、MTが外転代償することで
先程の距腿を中心に重心を前方へ移動させるアンクルロッカー機能が正常に働きません。
それによって重心が後方化し骨盤の後傾や回旋が強くなり、
ハムストリングスや下腿三頭筋などにストレスがかかることがあります。
足関節背屈制限は各関節に影響を及ぼします。
この状態で一日何百歩、何千歩と歩けば症状が悪化する可能性があります。
もちろん、これはあくまでも一つの例なので背屈制限があったからと言ってすべての人にこれが当てはまるわけではありません。
パターンから外れることは多々あります。
なぜ背屈制限が生じるのか、その原因を見抜くことが必要だと思います。
石井 涼(いしいりょう) 【アスレティックトレーナー】
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