【歩行における立脚中期とラテラルスラストについて】
【歩行における立脚中期とラテラルスラストについて】
変形性膝関節症(以下膝OA)の文献や記事を読んでいると、よくキーワードとして出てくるラテラルスラストという言葉。臨床に出ている先生方や学生の皆さんも一度は聞いたことがあると思います。
ラテラルスラストが膝OAの原因の一つになることは間違いありません。
ではなぜラテラルスラストは起こるのか。
膝に痛みがある方で、片方の膝だけに痛みが出るのはなぜなのか。
「先生、私はなぜ右膝だけに痛みが出るのですか?」
この質問を患者さんやクライアントさんからされて答えられますか?
不安な先生はぜひ最後まで読んでください。
今回の記事は、ラテラルスラストが起こりえる原因を歩行評価をもとに解説していきます。
~ラテラルスラストとは~
ラテラル(外側)スラスト(押す)、つまり膝関節ラテラルスラストとは膝が外側に押し出されるということです。
よくO脚の方の歩行を観察すると、歩くたびに膝が外側に倒れそうになるのを見かけると思います。
ラテラルスラストの原因は大きく分けて3つあります。
一つ目は足部の問題。
二つ目は骨盤の問題。
三つめは上半身の問題。
今回はこの三つの問題の中で骨盤の問題を解説していきます。
ヒトの歩行は
『左右対称に歩いていない』
という事が大原則としてあります。
左右対称に歩いていないとはどういうことか。
ヒトの歩行には【踏み出し脚】と【蹴り出し脚】がありましたね。
踏み出し脚と蹴りだし脚についての記事はこちらをどうぞ。
はじめての歩行分析 | 歩行と姿勢の分析を活用した治療家のための専門サイト【医療従事者運営】 (arch-seminar.com)
踏み出し脚と蹴り出し脚は何で決まるのか。
ズバリ【骨盤の回旋差】です。
立位の骨盤の評価で、上前腸骨棘を左右で触り、どちらが前方にあるかで骨盤の回旋差を評価するというのがありましたね。
そして、立位で骨盤を回旋させて、どちらが回旋しやすいか(立位骨盤回旋テスト)を見る評価がありましたね。
詳しくはこちらをどうぞ。
治療家になって三年目の先生へ ~上前腸骨棘から始める股関節評価~ (arch-seminar.com)
上前腸骨棘の触診をした際、より前方にある方や、立位骨盤回旋テストで骨盤の回旋量が多い方が踏み出し脚になりやすかったと思います。
では次に歩行を評価して踏み出し脚と蹴りだし脚を決定します。
骨盤の中心にテーピングなどでマークを付けるとわかりやすいと思います。
テープを基準に回旋量の大きい方が踏み出し脚とします。
実は膝関節ラテラルスラストは、この踏み出し脚が原因になっていることが多くあります。
踏み出し脚では、蹴りだし脚に比べて遠くに足をつきます。
つまり、
前外方へ加速していき慣性力が強くかかってくる
ということです。
言葉を変えると、外部膝関節内反モーメントが強くかかり、内部膝関節外反モーメントでそれを制御している。ということです。
これは歩行周期のなかでIC(初期接地)~MSt(立脚中期)に起こり、特にMStを観察すると踏み出し脚側のほうが蹴り出し脚側よりもラテラルスラストが大きく出ることが多いです。
それがもし一日3000歩もウォーキングする人の膝だとしたら…
毎週のように登山に行く人の膝だとしたら…
痛くなりそうですね。
膝OAのラテラルスラストに対しては様々なアプローチ方法があると思います。
「アプローチしても痛みの変化がない」
「その時はよくてもまた痛くなる」
このようなケースの場合、今回のような歩行評価を取り入れ、踏み出し脚を蹴り出し脚に変化させるアプローチをしていくのも面白いかもしれませんね。
注目すべきは、ラテラルスラストによる痛みだけではなく、何が原因でラテラルスラストが起きているのかを評価して見極めることだと思います。
【柔道整復師】 小池 隆史 (こいけ たかふみ)