【スポーツ選手に多い肉離れ(姿勢からのアプローチ)】
【スポーツ選手に多い肉離れについて】
姿勢からのアプローチ
今回はスポーツに携わっている方なら1度は経験した、もしくは目にしたことがあるであろう肉離れについてお話ししていきます。
肉離れとは筋肉が収縮している方向の反対方向に向かう力が強く、筋肉が引き伸ばされながら収縮しているときに起こりやすいと言われています。(遠心性収縮)
競技によっても異なりますが、ハムストリングスや大腿四頭筋、腓腹筋に多いのではないでしょうか。
肉離れが起きたら、まずは炎症症状を抑え、痛みを緩和するための処置をしていきます。
そして私たちは、
①瘢痕形成を防ぐ
②滑走不全を防ぐ
③再発を防ぐ
というところまで考えて治療をしていく必要があります。
筋の修復過程は、
損傷部の筋線維が壊死→それをマクロファージが侵食、それと同時にマクロファージから出るサイトカインが発現→筋衛星細胞が分化して筋線維芽細胞になる(筋衛星細胞は基底膜と細胞膜の間に、活動していない状態)このときに筋衛星細胞は損傷部付近から遊走してくる→筋線維芽細胞は筋管細胞となり、神経が入り込んで筋線維となる
という手順で修復されていきます。
期間は、損傷度にもよりますが2から3週間程度で損傷前と同じ状態になると言われています。
その間に少しでも先程の①②③をしなければなりません。
今回は①②③をするためのに「姿勢」の面からのアプローチ方法をお話ししていきます。
先日、実際に治療院に来た陸上部の短距離をしている選手の症例です。練習で100m×8本をやっていて最後の1本の途中で右足を着いた瞬間に右大腿二頭筋の中央から遠位に痛みが走り倒れ込んでしまったそうです。
なぜ右足を痛めたのか?そして、なぜ大腿二頭筋の遠位を痛めたのか?それを、アライメントから見つけていきます。
ではアライメントを見ていく前にまずランニングについて復習していきます。
ランニングとは、両足が地面に着いている時間がありません。つまり、両脚支持期がないということです。
足が地面に接地してからまた同じ足が地面に着くまでのサイクルを「走行周期」と言います。
【運動療法のなぜがわかる超音波解剖より引用】
まずは歩行周期の確認をしたい方はこちらをご覧ください↓↓
走行周期は、足が地面に接地している立脚期と、地面に着いていない遊脚期の2つに分けられます。右足が地面に接地して地面から離れるまでを右立脚期、右足が地面から離れて地面に着くまでを右遊脚期となります。
膝関節は、ランニング中に遊脚期と立脚期の2回、屈曲と伸展を繰り返します。遊脚期では、股関節屈曲および膝関節伸展により、前方に振り出した下肢に対してハムストリングスがブレーキを掛けるように遠心性収縮を行います。
そして、立脚期では膝関節が伸展位となっているときに股関節が屈曲強制されたときにハムストリングスが遠心性収縮をします。
【スプリント周期における筋活動(meroandkomi,1986:novacheck,1995:馬場ほか,2000)より引用】
ランニング中の筋活動については、大腿二頭筋は遊脚期後半と立脚期に強く活動します。遊脚期後半の強い活動は先程の通り振りだした下肢を制動するために生じます。
一方、立脚期では股関節屈曲および膝関節伸展位で接地し、その後、床反力で重心を持ち上げます。このときに股関節は強い伸展モーメントが作用します。この伸展モーメントを生み出すために股関節の伸筋群の大殿筋とハムストリングスの強い筋活動が求められます。
さてそれでは、それを踏まえた上でこの選手のアライメントを見ながらなぜ右足の大腿二頭筋遠位を痛めてしまったのかを考えていきましょう。
この選手の立位ライメントは、骨盤後傾、骨盤前方偏位で後方重心になっています。
そうです。まさにSway back姿勢。
【K1セミナーより画像引用】
スポーツ選手に多い腰痛については、こちらをご覧ください↓↓
そして、なおかつ右の骨盤前方回旋になっています。
この選手の場合、立脚期では股関節屈曲および膝関節伸展位で接地し重力に抗して重心を持ち上げるさいに、骨盤が後傾しているとしたら、どうなるでしょう。
本来、骨盤の前傾がとれていれば必要な股関節の伸展モーメントは、大殿筋とハムストリングスの近位の活動で行うことがてきますが、骨盤が後傾していればハムストリングスの遠位の活動で補うことになってしまうため、大腿二頭筋の下部のストレスは大きくなります。
なおかつ、骨盤の右前方回旋があるということは左よりもストライドを大きくとることになるため、右のハムストリングス下部の伸長を助長してしまっているのです。
【Kセミナーより画像引用】
これがわかれば、あとはアライメントを修正するためのリハビリや治療をすることで、
①瘢痕形成を防ぐ②滑走不全を防ぐ③再発を防ぐ
ということができるのではないでしょうか。
その部位が痛くなるには必ず原因があります。その原因をアライメントや動作の中から見つけ出し、痛めたところを治すだけではなく、その後のことを常に考えて治療に望んでいきたいものですね。
柔道整復師
増田鮎美