ランナーのアキレス腱部の痛みと歩行評価
【ランナーのアキレス腱部の痛みと歩行評価】
今回はランナーに多いアキレス腱部の痛みと歩行評価についてです。
スポーツ選手を診る機会がある先生は多いのではないでしょうか。特にランニングは幅広い年齢層の方達が楽しんでいるスポーツの1つです。
実際に、ある方の症例を元にお話ししていこうと思います。
このサイトを見てくれている先生や、セミナーに参加してくれている先生方はよく耳にする
『Sway Back Posture』
基本的には骨盤に対して胸郭が後ろにある、もしくは胸郭に対して骨盤が前に出ることを指しています。
どちらにしても身体重心は後方になるということでした。
そしてさらに、骨盤が前方回旋している側が踏み出し脚になりやすく、症状もそちら側に出やすいということも言われています。
では右の骨盤が前方回旋側としましょう。歩行時の踏み出し脚も右側です。
踏み出し脚になると、身体重心からより離れた位置に足を着くことになり、さらには後方重心のため上半身の質量中心と身体重心の距離は近くなります。
そうなると右の踏み出し脚の方が膝関節や腰部へのストレスが大きくなり痛みが出やすいということでした。
(この写真はわかりやすく極端にしていますが、走っているときに下の画像の姿勢になっていました。)
ですが今回お話しするクライアント様は右が踏み出し脚ではありましたが左のふくらはぎからアキレス腱にかけての痛みが出ていました。
踏み出し脚が悪者にされがちですが、反対の蹴り出し脚にも実は痛みの症状を出す場合があることも知っておかなくてはなりません。
私は今までたくさんのクライアント様の姿勢や歩行動作を診させてもらっていますが、アキレス腱周囲の痛みの場合は比較的蹴り出し脚の方に訴えがあることが多いような気がします。
では、このクライアント様の姿勢や歩行はどうなっているのでしょうか?
ポイントは骨盤の後方回旋でした。
基本的に骨盤の後方回旋が入ることは大殿筋がうまく機能している状態だとだと考えられます。
しかしこのクライアント様の場合には、歩行でその良いとされている左の骨盤の後方回旋が急激に入っていました。
「右の骨盤の前方回旋が起こる」
という言い方よりも、まさに、
『左の骨盤の後方回旋が入ってくる』ために、右の骨盤が前方に回旋するしかないというイメージです。
言葉に表すとこんなふうになってしまいます。
何事も過度に行き過ぎるということは良くなくて、どこかに負担がかかってしまうことになります。
なぜ過度な後方回旋が起こってしまったかと言うとイニシャルコンタクトで骨盤が後傾したまま、前傾にならず大殿筋がうまく機能していなかったことが原因だと考えられます。
もちろん右の踏み出し脚側でも骨盤は後傾で大殿筋は機能しずらい状態になっています。
そうなると左の蹴り出し脚が、踵がついてつま先が床を離れるプレスイングまでに時間がかかることになります。
(右と比べて)
ヒラメ筋のエキセントリック収縮が起きている時間が踏み出し脚にくらべて長くなると言うことです。
エキセントリック収縮時には筋活動は強くなると言われています。
それを考えると仕事で歩き回り、毎日6キロ程度のランニングを欠かさずにやっている・・・走りは歩きよりもさらに大きな負荷がかかります。
それは痛くなりますよね?となります。
でもこの歩き方してると右脚にもなにか症状で出てそうだなと思い聞いてみると「そういえば右の膝も痛いときある」と言うことでした。
今回やることは決まりました。
骨盤の前方回旋と後方回旋を逆転させよう。
ただ、左の後方回旋側の大殿筋もうまく機能させてあけなければいけません。
そうしないと静止アライメントでは骨盤の回旋はいい方向に戻っているかもしれませんが、歩行時にはきっとまた左の後方回旋がガツンと入ってきてしまうでしょう。
そしてランニングをすれば痛みがまた出てきてしまうでしょう。
歩行時の骨盤・股関節/100回のスクワットよりも5回のスクワッ
歩行時の上半身・胸郭/ジョギング・ランニングの腕振りが走行スピード
今回のクライアント様は「骨盤の前方回旋と後方回旋を逆転させた」ことで、痛みが改善され、仕事で歩き回ることや毎日6キロ、走ることができています。
骨盤の前方回旋側に何か症状がありそうだと予測を立てるのは、もちろん良いことだと思います。
ただ、姿勢や歩行動作で、どこに大きな負荷ががかかりそうか、それはどこを変えれば改善されるかをカタにはめずに考え治療、リハビリをしていかなければいけません。
いろんな視点から姿勢や歩行動作を診られるようにすること、それを変化させられる引き出しをたくさん持つことを常に考え、勉強していきたいと思っています。
増田鮎美(ますだあゆみ)【柔道整復師】
アーチ鍼灸整骨院/Athlete Village