中殿筋機能低下と歩行評価
【中殿筋機能低下と歩行評価】
私は柔道整復師を取得後パーソナルトレーニング施設であるAthlete Village浜松で働き始めました。
今までの接骨院とは違う形。
痛みで困っている方やパフォーマンスアップを目指している方としっかりと向き合える贅沢な施設です。
何が贅沢というと痛みの根本改善のために1対1で行い、初回のカウンセリング(接骨院でいう問診)に90分時間をかけられてしっかりと診させて頂けます。
Athlete Villageには長年痛みを抱えながら生活されている50代以上の方が多くいらっしゃいます。
1年目、ここでエクササイズの重要性を学びました。
どこの関節を使うと膝に負担がかからないのか。どの筋で股関節の外転外旋を出すと効率がいいのか。階段の上り方・下り方に繋げるエクササイズや歩行のイニシャルコンタクトの際の衝撃吸収をどこで行うかなど多くのエクササイズを知りました。
そして、もっともっと重要なことがエクササイズはもちろん姿勢や歩行の中に隠れていることを教えてもらいました。
隠れているものを見つけられる力が痛みの改善、パフォーマンスアップには必要だと思います。
今回は中殿筋の機能不全と歩行評価についてお話させていただきます。
どの資格をお持ちの方でも中殿筋のトレーニングやMMT(徒手筋力評価)を一度は行ったことがあるのではないでしょうか?
中殿筋の機能不全といえばトレンデレンブルグ徴候(姿勢)やデュシェンヌ徴候(姿勢)を思い浮かぶと思います。
痛みのある方、ケガをした多くの方は中殿筋機能の破綻がよく見受けられます。この中殿筋機能低下により歩行中何が起こるのかを見ていきたいと思います。
◇中殿筋機能低下を歩行評価で推測する
中殿筋機能低下の推測は歩行の立脚期の骨盤側方Swayがあるかないかで判断できます。
骨盤側方Swayとは体重がかかるIC~Mst期に見ることができる骨盤が外側に逃げるような動きのことをいいます(トレンデレンブルグ徴候に似た形)。
歩行動画→骨盤側方Sway
骨盤側方Swayについてはコチラ→【歩行分析の基礎 骨盤を診る】
骨盤側方Swayが過剰な場合、遊脚側骨盤が傾斜するため股関節内転を強いられる。この状態ですと本来IC~Mstで筋活動が起こるはずの中殿筋に力が入らず延長している状態となる。
※観察による歩行分析引用
筋出力が低下すると筋活動で制御できないため筋膜、靱帯、骨支持が優位な状態となり、中年女性の大腿部では浅筋膜の肥厚のようなものがよく見受けられます。
↑イメージ写真
この結果痛みの出やすい状況となります。
とくに痛みのある側の立脚期における骨盤の側方Swayに着目してみると痛みの原因となる動きが見えてくるかもしれません。
◇臥位での中殿筋機能評価
2種類をご紹介します。
まず①側臥位で一般的にMMT(徒手筋力評価)に用いられる方法です。
②股関節屈曲位で評価する方法です。
①は歩行中でいうMst→Tst=股関節伸展相での中殿筋機能
②ではIC→LR時=股関節屈曲相での中殿筋機能
を反映できます。
①②の評価ではどのように外転外旋をしてくるかを以下のような動きに着目して見ます。
・骨盤による代償動作の有無
・①軽度股関節伸展での外転が可能か
・外転可動域の有無
・外転位でキープが可能か
◇エクササイズでの中殿筋機能評価
臥位での評価同様エクササイズの動きからも同じように評価できます。
①マウスハウス
股関節軽度伸展位で脚を水平のまま遠位方向に伸ばし骨盤を下制します。
この状態にすることで中殿筋を働きやすい位置となります。このスタート位置をとれるかどうかがポイントです。この時点で骨盤による代償がある場合は機能不全が考えられます。また股関節屈筋の一部であるTFL(大腿筋膜張筋)・縫工筋・大腿直筋(外側広筋)による股関節屈曲外転する場合も中殿筋機能低下の要因になります。
動画→マウスハウス
②シェル
股関節屈曲位での外転外旋動作での中殿筋エクササイズです。この際も骨盤による代償、外転外旋がしっかりとできているかを確認します。
動画→シェル
◇中殿筋機能改善のための3要素
歩行・臥位・エクササイズによる評価をお伝えさせていただきましたが《歩行時の骨盤側方Sway + 臥位評価》または《歩行時の骨盤側方Sway + エクササイズ評価》のセットで確認することをおすすめ致します。評価で中殿筋機能低下を見つけた場合機能改善のために3つの要素を考えます。
①中殿筋・深筋膜の滑走不全
②浅筋膜の滑走不全
③内転筋の短縮
①中殿筋・深筋膜の滑走不全は骨盤側方Sway≒股関節内転により筋長が延長することで滑走しにくい状態となっています。
②浅筋膜の滑走不全は外側支持組織として骨盤側方Sway≒股関節内転を制御しているため分厚く硬くなる傾向になることで股関節の可動域制限の原因に感じることがあります。
③内転筋の短縮は骨盤側方Sway≒股関節内転となるので内転筋は短縮位の状態となります。これが外転可動域制限の要因となり結果的に中殿筋機能低下に反映されることとなります。
①~③の要因にアプローチをすることで中殿筋機能の改善につながります。中殿筋機能が回復することにより痛みの原因となる動きである骨盤側方Swayを制御できることになります。一度中殿筋の機能を《歩行中の骨盤側方Sway + 臥位評価またはエクササイズ》をセットで評価してみてください。
新たな発見が見えてくるかもしれません。
松島研也(まつしまけんや)【柔道整復師】
ARCH Village