歩行時の骨盤
骨盤は左右の寛骨・仙骨・尾骨で構成されています。仙腸関節の可動性について様々な意見がありますが、このサイトでは左右の寛骨の前傾・後傾が、臨床上では明らかに違いがあると考えているので、「動く」前提でお話しします。
歩行時の骨盤はどうなっているのでしょう?
右足IC時には、右寛骨は矢状面上で後傾、水平面上で前方回旋を、そして前額面上でやや内転します。
LRからMSt、TStまでは矢状面上で後傾だったのが前傾へ徐々に傾き、水平面上では前方回旋から後方回旋へ、前額面上では内転のままです。
そして、仙骨はどうなるかというと、仙腸関節は動くという前提ですので、骨盤前傾側に尾側がふれます。これも骨盤と仙骨の連動ですね。ということは、右足のIC時は右寛骨後傾なので、反対側へ尾側がふれているという事になります。TStでは尾側は右寛骨側にふれます。
骨盤は、「歩行時の膝関節」の項でも前方回旋や後方回旋について話しているのでそちらも併せて読んでみてください。また違う角度から知識が入ってくると思います。
私たちは、重力のもと生活をしています。そのため、全ての体の動きには、重心の位置や床反力が関係してきます。
例えば、「歩行時の膝関節」の項で話したように、MSt前半で大腿四頭筋が働き、後半では働かない、ということがありました。
それは、各フェーズでの床反力の方向が違うために、関節にかかるモーメントが違ってくるからです。前半では膝は曲がろうとしてしまうので、それに抵抗して膝を伸ばす伸展筋の大腿四頭筋が働く、その反対に後半は、膝が伸びようとするので、大腿四頭筋はもう働かなくていいという事が起きています。
<図:横から見た下肢の位置と床反力の線線。MSt前半と後半の違い>
このような当たり前の知識、基礎的な知識を知ることは、その時々で「流行っている」“目の覚めるような”どんな徒手療法よりも、この地球上で治療する上で大切な知識かもしれません。もちろん、徒手療法自体が「ダメ」と言っているのではありません。こういったことを知った上での徒手療法に意味があるのではないか、あるいはより効果的ではないか、という事です。
さて、ここでは骨盤の動きに関連した痛み、のお話を一つしたいと思います。臨床でもよく見られる症状でもあります。
歩行中、ほとんどの人に骨盤の前方回旋が強い側と、弱い側があります。
この時、少し視点を変えると、骨盤の前方回旋が強い側の膝は、上半身質量中心から距離が離れるということが分かります。
反対の前方回旋が少ない側と比べると、想像しやすいと思います。
<図:前方回旋が強い側と弱い側の足の位置の違い>

この差がいったい何を生むのか?
それは、膝関節にかかる負担が大きく変化する、ということです。
この左右差のまま、一日何千歩も歩いたら、、、
この左右差のまま、一日何時間も部活で走ったら、、、
どちらが大腿四頭筋が活躍する回数が多いでしょうか?
そうです、骨盤が前方回旋している側です。
ここにかかるストレスは、あきらかに反対側より多くなるはずです。
「右が痛くて、左は痛くない・・・」患者さんのこの声は、このようなことが起こっているという事です。
冒頭でお話しした、IC時、水平面上では、矢状面上では・・・・これがやはり大切な答えであり、この本来の内転位や、前方回旋がより助長されていないかを見極めるのが、とても大切となるわけです。
髙木慎一(たかぎしんいち)【柔道整復師】
Athlete Village浜松代表
アライメント・姿勢・歩行動作を総合的に分析し、その方に必要な
クライアントはパフォーマンスを上げたい小学2年生から、膝の痛