【カップリングモーションとその評価】
【脊柱のカップリングモーションとその評価】
初めに、カップリングモーションという言葉を聞いたことはありますか?
私はこの言葉を学生時代に聞いたことはありましたが、正直、内容はさっぱりで、
治療家となってからも評価が難しく、すごく苦手な分野でした。
ですが、臨床においてあらゆる場面(治療やパフォーマンスの向上)において体幹の回旋動作は必要となります。
きっと、私のように苦手意識がある先生や学生の方も多いかと思います。
そんな方のために分かり易く、【脊柱のカップリングモーション】について考えていきたいと思います。
まず、脊柱のカップリングモーションとは何かというと、脊柱が運動する際にカップル(側屈と回旋)の二つ一組で起こる脊柱の運動のことをいいます。
わかりやすく言うと、
脊柱が側屈をする際には回旋を伴うということです。
しかし、その回旋の方向が一定ではなく、
頸椎、胸椎、腰椎ではそれぞれ回旋方向が違うと言われています。
ここがまず頭が混乱する難しいところですが、覚えてしまえば簡単です。
- 頸椎 上位頸椎(後頭骨/C1~C2) 側屈時に対側回旋を伴う
下位頸椎(C3~C7) 側屈時に同側回旋を伴う
- 胸椎 上位胸椎(Th1~Th4) 側屈時に同側回旋を伴う
中位・下位胸椎(Th5~Th12) 側屈時に同側回旋を伴う
(→ただし、胸椎伸展位の場合は側屈時に対側回旋を伴う)
- 腰椎 (L1~L5) 側屈時に対側回旋を伴う
例えば、胸椎の左回旋時には、
頸椎:左側屈
胸椎:左側屈
腰椎:右側屈
骨盤:左回旋
と、このように動きます。
このカップリングモーションの特性を理解しておけば、アライメントの評価や動作を見る
うえでとても有利になります。
脊柱アライメントの評価方法は、
脊柱の棘突起を指でたどっていき、全体的に側弯がないかをチェックします。
(棘突起の左右への偏位を把握)
どこが凸側になっているのかがわかれば、アプローチする場所も絞れてきます。
立位で行うと、脊柱起立筋などの緊張があり棘突起に触れづらいので、
患者さんに前屈してもらい棘突起をたどる方が的確です。(座位でも同じく)
次に、座位の回旋テストです。
胸の前で腕組みをして体幹を左右に回旋します。
脊柱のS字カーブがどのように動くのかを観察しましょう。
左回旋 右回旋
この左右の座位回旋テストの写真を見比べると、
左回旋(右前方回旋)の方がスムーズに回旋していることがわかりますでしょうか?
右回旋に比べて、左回旋の方が背中のロゴ(ARCH)の文字が見える範囲は少なくなっています。
※わかりにくい方は、服のシワを参考にしてみてください。
この被験者のアライメントは以下のようです。
(イラスト内のAは前方、Pは後方を意味します)
立位のアライメント評価で、
・上位胸郭(左後方回旋)
・下位胸郭(左後方回旋)
・骨盤(左前方回旋)
このアライメントからわかるように左胸郭が後方にあるため、
左回旋の方が回旋しやすいと言えるでしょう。
側弯などの関係で絶対ではないですが、
胸郭の前方回旋側への回旋は制限されることが多くなります。
回旋制限をもたらす原因はたくさんあると思いますが、
上記の被験者の場合ですと、左胸椎多裂筋の短縮によって起こる左側屈があるので左側が凹側になります。
そこをリリースすると右側屈の可動域が増えて、右回旋テスト時に回旋の変化が出やすくなります。
立位での回旋テストもありますが、骨盤や股関節の要素が強くなるため、カップリングモーションを見たい場合は座位の方が有効だと思います。
脊柱アライメントによる頚部痛や腰痛、
また上半身質量にも関わっているので、膝OAの方のアプローチとしても有効です。
スポーツ現場での、回旋可動域の獲得や、重心の位置(左に跳びやすいけど右は苦手)等、応用すれば様々なシーンでの判断材料となります。
歩行分析時のカップリングモーションについてはこちら↓↓↓
全身の評価をするうえで、先生方のひとつの引き出しになれば幸いです。
【柔道整復師】 石本 楓華(いしもと ふうか)