【体幹を深く知る(脊柱の動き、下位胸郭)】
体幹を深く知る(脊柱の動き、下位胸郭)
当サイトの記事を愛読してくださっている先生は
動作分析を行い、アップローチされていることだと思います。
今回は、体幹について深く知り
それを現場で活かしていただきたく思います。
体幹・胸郭とは・・・
【体幹】
脊柱(頸椎、胸椎、腰椎、仙椎)
と肋骨・胸椎で構成
【胸郭】
胸椎/肋骨/胸骨 で構成
胸骨には各部位で各名称があります。
胸骨丙
胸骨角
胸骨体
今回の記事では、これらの部位も含めて体幹とさせていただきます。
・身体重心 center of gravity
福井勉ら:結果の出せる整形外科医学療法、2009、MEDICAL VIEW
身体重心:身体に加わる全ての重力の代表点
→上半身質量中心と下半身質量中心の中点
(=上半身中心) (=下半身中心)
・重心線 line of gravity :重心から下方に伸びた想定線
上半身質量中心:
→肩甲骨下縁付近
(第7-9胸椎レベル)
下半身質量中心:
→大腿1/2のやや上方
今回は上半身質量中心としての胸郭・体幹を「評価対象」ではなく「治療対象」としてお伝えしていきます。
『下位胸郭』アライメント・rib flare(リブフレア)の評価
上位胸郭:Th1~7・第1~7肋骨
下位胸郭:Th8~12・第8~12肋骨
胸郭は一般的にこのように分けることができます。
理想的な胸郭の形状としては
剣状突起レベルで一番凸していて
下位に行けばしぼんでいきます。
画像参照(左)
本間生夫:呼吸運動療法の理論と技術,MEDICAL VIEW,2003より改変引用
真ん中の画像では、
下位の胸郭がポコッと広がってしまっているのです。
これがリブフレアです。
下位胸郭リブフレアの評価
まずは、触診で確認していきます。
被検者を仰臥位で寝ていただき。
D-4セミナーより
画像のように
下位胸郭が上がっているのを
触って確認してみてください。
確認できたら、
次は左右差を確認してみましょう。
D-4セミナーより
画像の被験者は左のほうが高いのがわかります。
リブフレアは左右差がある場合もあります。
ご自身の確認をする時は
立位で確認することもできます。
剣状突起レベルの胸郭を触り
下位に降りて行った際に
浮いてくるのか窪んでいくのかを確認していきます。
浮いていればリブフレアだとわかります。
D-4セミナーより
立位でのアライメントでも評価していきます。
リブフレアと関連する姿勢として
Sway back postureが挙げられます。
Sway back postureは下位胸郭が後傾して
上位胸郭が前傾します。
つまり、この下位胸郭の後傾がリブフレアと関連してくるのです。
D-4セミナーより
『下位胸郭』リブフレアの特徴
・Sway back posture
前述したようにSway back postureの特徴にリブフレアがあります。
・(上位)胸椎屈曲位・後方位
下位胸郭よりも後方に位置します。
・(下位)胸郭前方位
上位胸郭よりも前方に位置します。
・荷重位置:後足部荷重
歩行や立位姿勢でも確認が可能です(後述)。
・大腿筋膜前面緊張↑
後方荷重になると緊張があがります。触診で確認可能です。
外部股関節伸展モーメント↑/内部股関節屈曲モーメント↑になり
股関節屈曲筋側の緊張が強くなります。
他には
殿筋機能が低下し
腹筋機能・腹圧低下
上背部・前胸部stiffness
というような特徴もあります。
・荷重位置:後足部荷重 確認
術者は被検者の後方にたち、
PSISを触診し、下の写真のように骨盤レベルを前方に押します。
D-4セミナーより
次に後方に骨盤を引いて、前方・後方どちらに動きやすい(動いてしまいやすい)かによって、
前方に押し出されやすい場合を後足部荷重位、
後方に引かれやすい場合を前方荷重位、として判断します。
D-4セミナーより
また、前方・後方に骨盤を動かした際に、
後方上方から後足部を覗くようにして
指をさしている部位がポコッと出れば
後方荷重の可能性が高いと言えます。
骨盤前方位
骨盤後方位
そして
(片側)前方回旋が顕著な場合
大腿筋膜の近1/3あたりが前方に引っ張られます。
そうすると、胸腰筋膜も前方(外方)に引っ張られます。
・胸腰筋膜
プロメテウス 解剖学アトラス 解剖学総論/運動器 第3版 監訳 坂井 建雄 村松 讓兒 p,157 参照
胸腰筋膜は固有背筋すべてを包む骨と結合組織でできた管の外側部分を形成しており、
最新の解剖学用語集では、胸腰筋膜は3つの層に区分され、これまでの深葉は中葉、新たな深葉はこれまで腰方形筋の筋膜とされていたものとなっています。
プロメテウス 解剖学アトラス 解剖学総論/運動器 第3版 監訳 坂井 建雄 村松 讓兒p.169 抜粋
回旋要素で腰痛を考えると
胸腰筋膜が前方(外方)に引っ張られると
筋実質(腰方形筋と腸肋筋)を抑え込み
胸腰筋膜の内圧が上がります。
その場合。腰部外側あたりの圧痛が多くなる傾向があります。
伸展要素で腰痛を考えると
伸展によって椎間関節の
圧縮ストレスや単純に伸展することによって内圧が上がる場合あります。
その場合は、多裂筋や最長筋などの緊張が高まり痛みが出るパターンがあると考えることができます。
岩崎博:脊椎エコーの全て、日本医事新報社、2021より改変・引用
画像の赤い表示のように
多裂筋筋内圧上昇で、脊柱神経後枝の内側枝を圧迫
これは、伸展要素の腰痛が考えられます。
画像の青い表示のように
腸肋筋内圧上昇で脊柱神経後枝の外側枝の圧迫
回旋要素での腰痛が考えられます。
画像の青い表示のような痛みは
リブフレアなどによる原因が考えられます。
まずは、リブフレアのような姿勢不良を前述したように
臥位や立位で評価を行い
その特徴を理解して
アプローチを組み立てていくことが重要になります。
今回はここまでの内容になります。
D4セミナーでは今回の内容のような
下位胸郭の姿勢不良と考えられる
リブフレアの考え方から
評価・テストや痛みの捉え方
今回の内容にはなかった
リブフレアを歩行で評価
歩行での病態や特徴
そしてアプローチを考える内容になっています。
腰痛や姿勢を深く知る
そんなセミナーになっています。
柔道整復師 十川
参考文献:参考資料
写真はD4セミナーより参照
プロメテウス 解剖学アトラス 解剖学総論/運動器 第3版 監訳 坂井 建雄 村松 讓兒
福井勉ら:結果の出せる整形外科医学療法、2009、MEDICAL VIEW
本間生夫:呼吸運動療法の理論と技術,MEDICAL VIEW,2003
岩崎博:脊椎エコーの全て、日本医事新報社、2021より改変・引用