【投球障害肩と投球フェーズについて】
今回お話させていただく、「投球障害肩」で悩んでいる選手はとても多いかと思います。
それと同時に、先生方の治療院等に治療に来る選手も多いのではないでしょうか。
そんな投球障害肩と姿勢の関係性についてお話させていただきます。
投球障害肩の種類としては、
肩峰下インピンジメント
Internal Impingement
腱板損傷
関節唇損傷(SLAP lesion)
上腕二頭筋長頭腱炎
リトルリーガーズショルダー
胸郭出口症候群
等があります。
治療院に来てくれる選手の多くは、インピンジメントの痛みが多い印象です。
肩後方のタイトネスで起きやすいと言われている、肩峰下インピンジメント。
肩前方不安定で起きやすいと言われている、Internal Impingement。
このインピンジメントの痛みは、この後出てくる肩甲上腕関節の軸を合わすように治療していくのが、1日でも早く復帰が出来るのではないかと考えています。
では早速、肩甲上腕関節の軸の話からいきたいと思います。
肩甲上腕関節は球関節で関節窩より骨頭の部分の方が大きく、3つの関節軸から構成されている関節です。
1つ目の軸は横断軸
これは前額面にあり、矢状面の屈曲と伸展に関係する軸
2つ目の軸は前後軸
これは矢状面にあり、前額面での外転と内転に関係する軸
3つ目の軸は垂直軸
これは矢状面と前額面の交叉によって決まる。90°外転位での水平面で行われる屈曲と伸展に関係する軸
この3つの軸のうち1つでもずれてしまうと、正常可動域が獲得出来なくなります。
例えば、コマの軸が中心になかったら遠心力を利用しても上手に回ることが出来ないかと思います。
それと同じように、肩甲上腕関節も何かしらのせいで軸がずれていたとするとどうでしょう。
上手に回らなさそうではないでしょうか?
そして治療をするにあたって、どこの軸がどのようにずれているかを評価をすることがとても重要だと考えています。
上腕骨が外旋しているのか、肩甲骨が外転・前傾しているのか、胸郭の後方回旋によって肩甲骨が外転しているのか等。
【肩甲上腕関節の評価法】
・CAT(combined abduction test)
外転角の計測を肩甲上腕関節の角度としてとらえ、肩甲骨を徒手的に固定し上肢を外転しその角度の左右差を調べる
・HFT(horizontal flexion test)
水平屈曲角を同じく肩甲上腕関節の角度としてとらえ、徒手的に肩甲骨を固定してその角度を計測し左右差を調べる。
・HERT(hyper external rotation test)
疼痛再現性徒手検査の一つで、臥位にて肩甲骨の過水平外旋をして疼痛を訴えたら陽性。
左右の各関節の可動域を確認して、投球動作のどこのフェーズで痛くなるかを確認する。
特に2ndの内旋・外旋可動域は、アーリーコッキングからレイトコッキングまでに必ず必要になります。
また、この3つ検査の可動域に左右差があり、投球側の方が角度現象があると、
投球時にゼロポジションまで肩甲上腕関節が上がらなくなり、
いわゆる『肘下がり』という現象が起きやすくなる選手が多いです。
画像左が肘下がり
そして投球時に痛みが出る場所は、肩甲上腕関節前方や上方、後方が多いです。
・アーリーコッキング
・レイトコッキング
・アクセラレーション
・フォロースルー
投球動作と痛みの関係について説明させていただきます。
1つ目のアーリーコッキングで痛い。
アーリーコッキングは『踏み出し脚が地面に着くまで』
これは、先程もお伝えしましたが肩関節2nd内旋可動域制限や、グラブ側の重りを上手に使うことが出来ず並進運動不足が原因になることがほとんどです。
2つ目のレイトコッキングで痛い。
レイトコッキングは『踏み出し脚が地面に着いて、投球側の肩が最大外旋位』
ここのフェーズで痛い選手がとても多いです。
踏み出し脚を着いた際に、投球側は肩甲上腕関節外旋位(結髪動作ぐらい)にあること。
肘の屈曲角度が90°以内であること。
肩甲上腕関節の外転外旋可動域、胸椎伸展可動域がとても重要です。
3つ目のアクセラレーションで痛い。
アクセラレーションは『最大外旋位からボールリリースまで』
前足部に荷重を乗せること
エクステンションを意識すること
エクステンションとは、軸足からリリースポイントまでが自分の身長と同じ長さだと一番力が発揮出来ると言われています。
アクセラレーションで痛みが出る選手に、
「踏み出した足のつま先に体重のせて投げてみて」
という一言で、痛みが減る選手がいます。
それは前足部に荷重が乗ることで、
結果的にリリースポイントが前にいきゼロポジションが作りやすくなるからです。
この「踏み出した足のつま先に体重のせて投げてみて」という言葉はよく使います。
これはオススメです。
最後にフォロースルーで痛い。
フォロースルーは『ボールリリースからピッチング終了まで』
アクセラレーション期での荷重を前足部に乗せていたかどうか
軸脚が踏み出した脚を超えてくるか
胸郭がしっかりと回旋出来ているかどうか
フォロースルーで重要なのはワインドアップからアクセラレーションまでがしっかり行えていたのかです。
ボールを繰り返し投げていると必ず肩へ外転外旋ストレスがかかります。
その繰り返しのストレスは、避けて避けられません。
もちろんノースローにすればストレスはかかりませんが、
ウォーミングアップでキャッチボールをしたり、
ノックを受けて送球したり。
ピッチャーに関しては、他のポジションと投球数が違います。
これは変えられることが出来ないので、体の使い方を変えていけば、自ずと痛みは無くなっていくかと思います。
肩の治療をして、投げると再び痛いという選手には、医学的なピッチングフォームをわかりやすくお伝えすることも大事かと思います。
中川裕太(なかがわゆうた)【柔道整復師】
スポーツラボ鍼整骨院滝ノ水