【皮膚が関節の動きに与える影響について】
【皮膚が関節の動きに与える影響について】
今回は、皮膚が関節の動きに与える影響についてお話させていただきます。
皮膚運動学など、書籍なども出ているように筋肉や筋膜同様、皮膚も動きや痛みに多大なる影響を与える場合があります。
私も普段治療をしていると、
・だいぶ痛みが取れてきたけど完全には落ちきらない。
・筋肉自体がかたくて中々緩まない。
・関節自体の動きは良くなってきたが、症状が変わらない。
・痛みの場所が変わった。
などなど、評価をした上で治療をしていき、動きは変わるが症状の改善が中々一致してこないなどという時があります。
その場合に皮膚の動きを確認して、徒手的に誘導したり、テーピングなどで誘導すると症状の改善、痛みがなくなったなど。
いくつかそのような症例と出会いました。
意外と見落としがちな皮膚の動き。
先生方は、評価されていますでしょうか?
このセミナーでも、皮膚の動きについてはいくつか触れさせていただいております。
例えば、股関節屈曲時の大腿の誘導、股関節の内外転時にどのように皮膚が動いていくのかなど。
そこについて、改めてお話しさせていただきます。
まず、皮膚の動きは
皺ができるところは、皺がよらない方向に皮膚が動きます。
逆に皺ができるところと対象となる側は、それとは反対の方向に皮膚が動きます。
これをわかりやすく関節でイメージしてみると、
股関節を屈曲していくと大腿前面は皺ができる側なので、股関節から離れていくように動いていきます。
なので、近位から遠位に向かって動いていきます。
対象となる大腿後面は、遠位から近位に向かって動いていきます。
この事象については、K1セミナーの中でも少し触れています。
K1セミナーで触れるSWAY BACK姿勢についてはこちらをどうぞ。
https://arch-seminar.com/posturalanalysis/sway-back姿勢へのアプローチ/
実際の患者さんやクライアントさんでイメージをすると、仰臥位で股関節を屈曲していくと詰まってしまう人に対して、股関節屈曲時に大腿前面を遠位から近位に向かって皮膚を多動的に誘導しながら股関節の屈曲を行うとつまり感が軽減されます。
股関節屈曲時に痛みが出てしまう人なども同様に痛みが改善される場合があります。
これは、まさに皮膚の動きによって、関節の可動域の改善、症状の改善が見られるパターンです。
では、そもそもなぜ
皺ができるところは、皺がよらない方向に皮膚が動く。
逆に皺ができるところと対象となる側は、それとは反対の方向に皮膚が動く。
このようになるのかは、皺ができるところに皺がよるように動いていくと皺が邪魔になってしまうので、集まりすぎないように皺がよる方向と反対側へ動いていきます。
対象となる側は、その逆となるので皮膚が足りなくなってしまってそれ以上伸ばせない。という状況にならないように動きを助ける方向に対して動きます。
そのため、例に挙げたような股関節の屈曲時の大腿で言うと、
大腿前面は、遠位から近位に向かって
大腿後面は、近位から遠位に向かって動いていきます。
そのため、症状の改善や可動域の向上を狙うのであれば、その動きを助ける方向に徒手的に誘導したり、テーピングを行うことによって改善することができます。
そのため、コラムやセミナーでも良くお伝えさせていただいているヒップリフトエクササイズで股関節の屈曲可動域の獲得をしたい場合は、徒手的に大腿前面を近位から遠位に向かって誘導しながら繰り返していくことで、股関節屈曲可動域の獲得、つまり感の軽減が見込めます。
慣れてくれば、ご自身でその方向に誘導しながら行ってもらうことで、ホームエクササイズとしても行ってもらえます。
その他にも、K2セミナーでお伝えさせていただいている股関節内転、外転の動きの時には、
股関節を外転していくと、
大腿外側は、皺が集まってくるため
近位から遠位に対して皮膚が動いていきます。
反対の大腿内側は、皮膚が足りなくなってしまうため遠位から近位に向かって皮膚が動いていきます。
股関節の内転の場合は、外転時とは反対に
大腿外側は、遠位から近位へ
大腿内側は、近位から遠位へと皮膚が動いていきます。
股関節内転筋についてはこちらをどうぞ。
https://arch-seminar.com/gaitanalysis/歩行時の骨盤・股関節/__trashed-5/
実際に指やマーカーをつけて動かしてみると実際に皮膚がどのように動いていくのかがわかりやすいかと思います。
そのため、股関節の内転、外転の可動域を向上させようとすると、
皮膚の動きを助ける方向に誘導することで、変化が出ます。
逆を言うと、それとは反対方向へ誘導をすることによって可動域を狭めてしまったり、症状を悪化させてしまうこともあると言うことでもあります。
私が、実際の患者さんで診させていただいた症例では、足関節捻挫で来院されたが、固定をしたり骨アライメントの修正や筋、筋膜のリリースを行なっても前距腓靭帯部分の背屈時痛、歩行時痛の変化がみられませんでした。
足関節の解剖についてはこちらをどうぞ。
https://arch-seminar.com/posturalanalysis/足関節背屈制限因子はどうやって作られるのか?-2/
また、テーピングによる固定を行なっても歩行時痛の改善がみられませんでした。
そこで、足部の皮膚の動きを確認してみたところ立方骨から第5中足骨の部分の皮膚が内側側に動く動きが少なくなっていました。
そこで、徒手的に皮膚を内側側に誘導した状態で非荷重の状態で背屈動作をしてもらうと痛みがありませんでした。
それとは反対に徒手的に外側へ誘導すると、痛みが上がりました。
そのため、内側方向へと皮膚のリリースを行なっていくと歩行時痛もなくなりました。
このような症例以外にも、足関節の背屈を皮膚の誘導をしながら1番動かしやすい状態を確認しながら行い、その方向に向かって皮膚をリリースしたり、伸縮テープなどで誘導することにより症状の改善がみられる場合は多いように思います。
先生方も、普段の評価に付け加えたり、症状の改善があまりみられない場合は、一度皮膚の動きの評価を取り入れてみてください。
中川 直紀(なかがわなおき)【鍼灸師】
アーチ鍼灸整骨院/Athlete Village 浜松