【足関節内反捻挫後のショパール関節について】
「足関節内反捻挫後のショパール関節について」
足関節内反捻挫。
スポーツをしていると一度は経験したことのあるケガではないでしょうか。
捻挫の重症度は様々ありますが、「痛くないから」、「何回もやっていて慣れてるから」と言う選手たちに臨床で遭遇すること多くありませんか?
その時に「あなたの足首は捻挫を受傷してしまったことが原因でこのようになってしまっています。だから、治療が必要です。」と説明ができるように今日は捻挫後の足関節について話させていただきます。
まず、足関節というと距腿関節、距骨下関節、ショパール関節(横足根関節)、リスフラン関節がありますが、
今回はショパール関節(横足根関節)に着目していきたいと思います。
ショパール関節について話をしていくうえで関連が深い距骨下関節についてはこちらの記事をご覧ください。
https://arch-seminar.com/gaitanalysis/歩行時の足部/距骨下関節の基礎/
ショパール関節は距骨と舟状骨からなる距舟関節、踵骨と立方骨からなる踵立方関節で構成され、距骨、踵骨と関節を作るため距骨下関節の動きによって大きく変化します。
では、距骨下関節回内時、回外時に距舟関節、踵立方関節の動きがどうなっているのか考えていきましょう。
まずは距舟関節が距骨下関節回外時、回内時にどう動くかを考えていきます。
距骨下関節回外時は踵骨回外、距骨は背屈・外旋し、それに伴いショパール関節も回外位となり、ショパール関節を構成する距舟関節軸と踵立方関節軸が相対的に交差する位置関係となることで運動自由度が減少します。
これにより、中足部の剛性を高めています。
このように2つの関節の相対的な位置関係によって足部剛性が変化する作用をmidtarsal joint locking mechanismといいます。
逆に距骨下関節回内時は踵骨回内、距骨は底屈、内旋し、それに伴いショパール関節も回内位となります。
では、距骨下関節回外時に出てきた2つの軸は回内時はどうなるでしょうか?
回外時は交差していた2つの軸は回内時には平行に並び、運動自由度を増加させます。
これにより、中足部の柔軟性を高めています。
足部・足関節理学療法マネジメントから引用
次は、踵立方関節が距骨下関節回外時、回内時にどう動くか考えていきます。
距骨下関節回外時は踵骨が回外します。この時、立方骨は回内方向に動きます。
立方骨は止まったままで踵骨が回外することで相対的に回内していると考えても構いません。この踵骨の回外位と立方骨の回内位は
骨性のロック状態となり、足部の剛性を高めます。
距骨下関節回内時は逆の動きになります。踵骨が回内するので立方骨は回外方向に動きます。この踵骨の回内位と立方骨の回外位は
骨性のロックを外す状態となり、足部の柔軟性を高めます。
足部・足関節理学療法マネジメントから引用
ここまでの話をまとめてみましょう。
距骨下関節回外時は足部の剛性が高まり、足部が強固になる。
距骨下関節回内時は足部の柔軟性が高まり、足部が動きやすくなる。
ここまでショパール関節の正常な動きについて考えてきました。
では、足関節内反捻挫が起きると足関節にどのような変化が出るのか考えていきます。
足関節の内反捻挫は距腿関節の底屈、距骨下関節が回外方向に強制されて起こることがほとんどです。内反捻挫による足関節外側靭帯損傷後の異常アライメントとして後足部の内返しが増大し、それに伴うショパール関節の回外の増大、下腿の外旋が生じやすくなります。
ここまで話してきたことから考えて内反捻挫により距骨下関節回外を強制させられると正常に回外に動かされた時よりも足部の剛性は高まります。
なぜなら踵骨と立方骨の骨性のロックが過剰にかかるため足部が異常に固くなってしまうのです。
正常だとターミナルスタンスから蹴り出し時に距骨下関節は回外し、イニシャルコンタクトで距骨下関節を回内させ足部を柔らかくして衝撃を吸収しますが、捻挫で足部が固くなってしまうと距骨下関節回内の動きが出づらく、イニシャルコンタクトでの衝撃の吸収ができなくなります。
踵骨―立方骨―第5中足骨で構成される外側縦アーチも回内制限による外側荷重が続き、低下することで安定性が失われます。
立方骨が下方に変位すると立方骨に付着する短母指屈筋、母趾内転筋の機能低下にもつながってしまいます。母趾の機能低下は立脚後期の蹴り出し時にwindlass機構が破綻し、蹴り出し時の不安定さに繋がります。
https://arch-seminar.com/gaitanalysis/歩行時の足部/距骨下関節とWindlass機構/
さらに、距骨下関節回内が制限されるとショパール関節の過回内によって代償しようとします。そうすると立脚中期にかけて過度にショパール関節を回内させるため舟状骨が降下し、内側縦アーチの静的支持機構の底側踵舟靭帯(バネ靭帯)に伸張ストレスがかかります。その状態が続くと有痛性外脛骨になってしまう可能性も高くなることが考えられます。
このように距骨下関節とショパール関節の連動が上手くできない状態になってしまうと様々な症状が重なり、治癒までに時間がかかってしまいます。
捻挫後は踵立方関節の骨性の過剰なロックを外し、立方骨が回内、回外方向にスムーズに動くことが大事になります。
舟状骨をおさえたまま立方骨が回内、回外方向に動くか確認し、可動域に制限がある方向に誘導しながら動かしていきましょう。
今回は足関節捻挫後のショパール関節について話してきました。
足関節捻挫後に起こる足首の固さは今回話したショパール関節以外が原因で起こることも多数あります。
どの部位の何が原因で起こっているのかを足関節の評価、歩行分析から見極めていく必要があるでしょう。
鍼灸師 西島勇気