【骨盤前方回旋の評価と片側性腰痛について】
- 【骨盤前方回旋の評価と片側性腰痛について】
当サイトをご覧になられている先生方も、臨床で患者様から「いつも腰の片方だけに痛みが出るんです」と言われた経験があるのではないでしょうか?
その時に同側ばかりに痛みが出る理由を説明できると患者様にも納得して頂いて信頼を得ることが出来ます。
そこで今回はなぜいつも腰の片側にのみ痛みが出るのかを骨盤のアライメントから考えていきたいと思います。
片側にのみ痛みが出るということは、痛みが出る側により負荷がかかりやすい姿勢や身体の使い方をしている。
つまり左右差があるということです。
では実際どのように左右差があるのか、立位のアライメントで骨盤の前方回旋を評価してみましょう。
評価方法
左右の母指でそれぞれ左右のPSIS、
左右の中指、薬指でそれぞれ左右のASIS
を把持し、水平面上で左右どちらのASISが前方位にあるかを判断し、前方位側が前方回旋側になります。
また、左右のASIS、PSISを指で把持した状態で、ASISの内側に指を滑らせていくと指が入りやすい側、入りづらい側があります。
指が入りづらい側は骨盤がインフレアー
(水平面上で仙骨に対して寛骨が内旋)
指が入りやすい側は骨盤がアウトフレアー
(水平面上で仙骨に対して寛骨が外旋)
という状態ですが、前方回旋側はインフレアー傾向になるので、これも評価基準の1つになります。
また、前方回旋側のPSISは対側のPSISよりも前額面上で低い位置で触れることが多いです。
つまり前方回旋側の骨盤が後傾している状態なのです。
なので水平面上のASISの位置のみでなく骨盤の後傾も含めて判断することが重要です。
ただ、患者さんのアライメントによってはどちらが前方回旋側かわかりづらい場合もあります。
そこで「立位骨盤回旋テスト」も合わせて行うことでアライメント評価の正確性が増します。
「立位骨盤回旋テスト」
評価方法
歩行時の歩隔で立ち、左右交互に体幹を回旋させる
評価事項
体幹回旋時の骨盤の回旋量の左右差
骨盤の前方回旋量が大きい側が前方回旋側と判断する。
では次に歩行時の骨盤の回旋量をみてみます。
K2セミナーより引用
画像は歩行時の骨盤を真上から見ていますが、骨盤の前方回旋量が右足(右側)の方が大きいですよね。
この場合、右が前方回旋側になります。
前方回旋側である右足は接地位置が左足(対側)より前方位となるため、着地時に関節にかかる負担も大きくなります。
このように前方回旋側に負荷がかかりやすいことが想像出来ますが、回旋要素だけでは力学的ストレスは少ないです。
前方回旋+矢状面、前額面の要素が加わることで痛みが出てきます。
では矢状面の要素とは何か
これは歩行時の股関節の屈曲、伸展要素になります。
歩行のミッドスタンス〜ターミナルスタンス時に前方回旋側は骨盤の後傾もあり股関節の伸展角度が大きくなります。
もう一つの前額面の要素ですが
歩行時の骨盤のSWAY(横揺れ)です。
これは股関節内転筋群の硬さなどから出てくるもので、立脚期に股関節の内転しようとすると臀部が外側に押し出されるようになります。
このように前方回旋にこの2つの要素が加わることで力学的ストレスが増大し痛みが出てきます。
では具体的にどのように片側性腰痛が出てくるのかを考えていきましょう。
まず痛みを訴えられる場所として多いのが起立筋や多裂筋、腰方形筋が挙げられます。
【起立筋、多裂筋】
起立筋と多裂筋の痛みは骨盤の後傾によって筋肉にエキセントリックの刺激が加わり、そこに動作中の前方回旋とSWAYが加わることで胸腰筋膜も伸長され痛みが出てきます。
【腰方形筋】
腰方形筋の痛みは、立位の骨盤アライメントの評価時にお伝えしたインフレアーが関係してきます。
腰方形筋は胸腰筋膜に包まれているため、骨盤の前方回旋によって胸腰筋膜が引っ張られることにより牽引(内圧上昇)ストレスを受けます。
そして腰方形筋は寛骨をアウトフレアーに持っていく働きがありますが、前方回旋側はインフレアーになるので伸長ストレスを受けることなります。
この2つの理由によって腰方形筋に痛みが出てきます。
そして、外旋筋群や大臀筋、中殿筋の短縮で同側の寛骨を前方回旋させてしまいます。
そのため臀部周囲の筋のリリースとストレッチ、SWAYを止めるために内転筋群をリリースとストレッチをする事で胸腰筋膜の負荷を減らし、痛みを軽減していくことが出来るはずです。
今回は骨盤前方回旋の評価と片側性腰痛についてお話してきました。
片側性腰痛は今回の前方回旋やSWAY以外が原因で起こることもあります。
また、痛みが出ている筋がどこなのか、そもそも筋性の痛みなのか神経性の痛みなのかも判断しなければいけません。
今回お伝えしたアライメント評価やスペシャルテストで動作分析をしてしっかりと見極めることが大切です。
鍼灸師 辻岡伸也