【Swayback姿勢と腹圧の関係による腰痛について】
【Swayback姿勢と腹圧の関係による腰痛について】
今回は“swayback姿勢”の方に起こる腰痛のお話です。
最近、腹筋のトレーニングをした後に腰が痛くなったという声をよく耳にします。
腹筋群をトレーニングしすぎて、アライメント不良や筋比率のアンバランスにより
疼痛症状を引き起こしてしまいます。
まずは、swayback姿勢についての説明です。
swayback姿勢とは、この写真のように
基本的には骨盤に対して胸郭が後ろに倒れる姿勢(上位胸郭の後方変位)のこと
または、胸郭に対して骨盤が前に出る姿勢(骨盤の前方変位)のことを指します。
骨盤に対して胸郭が後ろにあると、身体重心が後方へ傾きます。
※身体重心とは、上半身質量中心と下半身質量中心を結んだ点です。
・上半身質量中心はおおよそ第7胸椎レベルの高さにあります。
前方から見ると“みぞおち”、後方から見ると“肩甲骨の下角”の付近とすればわかりやすいです。
・下半身質量中心はおおよそ大腿骨の1/2の高さにあります。
歩行での上半身質量の見方はこちらを参考に↓↓↓
正常の立位姿勢の保持には、腹側の筋よりも背側の筋が相対的に重要な働きを担い
主に、頚部伸筋群→脊柱起立筋→大殿筋→ハムストリングス→下腿三頭筋が働きます。
Swayback姿勢の場合、
身体重心が後方にあると、そのままでは転んでしまうので
胸椎を屈曲させ頭部を前方へ変位し、重心を前に乗せてバランスをとろうとします。
その結果、
背側の筋肉(脊柱起立筋)は引き伸ばされ、
腹側の筋肉(腹直筋)は丸まり短縮し、
大殿筋・ハムストリングスは骨盤の後傾により短縮するため
柔軟性の低下で可動域が狭くなることで本来の姿勢が維持できなかったり
姿勢を保持するための十分な筋力が得られず、不良姿勢になってしまいます。
(猫背姿勢のイメージを浮かべるとわかりやすいです)
一般には、腹直筋を強化するためのシットアップ(起き上がり運動)を
多くの人が行っていると思います。
シットアップにおいての筋活動は、外・内腹斜筋を合わせた力よりも
腹直筋単独の方が大きいと言われており、
腹直筋が優位になると、腹斜筋、特に外腹斜筋の活動を抑制してしまいます。
すなわち、腹直筋のトレーニングをしていても、
体幹の回旋を引き起こしたり防いだりする機能を改善できず、
腹直筋の短縮を強くし腰椎の屈曲を生み出して、
結果的に、腰痛の原因を作り出しているということになります。
腹筋の最大筋力の2~3%あれば、脊柱を安定させることは可能になります。
腹筋群の役割の中で最も重要となるのがコントロールを獲得することです。
外・内腹斜筋の共同収縮は、体幹の回旋や骨盤前傾をコントロールする役割があるため
Swayback姿勢の方にとって腹直筋のトレーニングよりも優先すべきトレーニングです。
※体幹の回旋とありますが、具体的には胸椎・骨盤の回旋です。
モビリティスとタビリティについてはこちら↓↓↓
胸椎は可動性のある関節(モビリティ)
腰椎は安定性のある関節(スタビリティ)
となります。
次に、腰椎の安定性は腹圧によってコントロールされます。
腹腔とは横隔膜の下で内臓が集まっている空間で、
その内部にかかる圧力を腹腔内圧、すなわち腹圧といいます。
腹横筋・多裂筋・横隔膜・骨盤底筋(肛門挙筋・尾骨筋)のことを
体幹深部安定化筋群(インナーコアユニット・ローカルシステム)と呼びます。
これらは、骨盤の前傾で正しく働くため、swayback姿勢のように骨盤が後傾してしまうと正常の収縮が得られません。
腹横筋は腹壁を凹ますことで腹圧を高める作用を持ち、
多裂筋と共同収縮し胸腰筋膜を圧迫し、腰椎の安定性を保ちます。
また、腹横筋は立位姿勢で四肢を動かす際の初動時の運動を担う腹筋であるため、
腹横筋の活動の遅延は腰痛を引き起こす要因と考えられます。
腰椎の安定化は、一般的なシットアップ(腹直筋の収縮)よりも
運動パターンや収縮のタイミングをコントロールすることが重要になります。
しかし、インナーコアユニット・ローカルシステムにおいては
慢性腰痛などの再発予防に対しての安定化運動は効果的ですが、
疼痛の軽減・改善にはあまり効果はありません。
ここから言えることは、腹圧は腰痛の直接的な原因として関係ないと言うことです。
疼痛の軽減・改善に対しては、動的安定化運動
(特に、体幹浅部安定化筋群・外腹斜筋・内転筋群)が有効になります。
腰痛の要因が、腹圧ではなく
ここでは骨盤の後傾(アライメント不良)であることとします。
そこで、内転筋とは何なのか?についてお話します。
健常者の大腿部に占める筋群の体積の割合は、
膝関節伸展筋群 約50%
膝関節屈曲筋群 約25%
股関節内転筋群 約25%
内転筋群は、股関節屈曲位では股関節伸展作用があり、
股関節伸展位では股関節屈曲作用があります。
そう考えると、内転筋は股関節内転作用のみではなく、
他の動き(伸展・屈曲作用)にも関与します。
骨盤の後傾は、膝関節屈曲筋であるハムストリングスが短縮し
膝関節伸展筋である大腿四頭筋の滑走不全によって起こります。
その屈曲伸展の両作用に働く、内転筋群が関与していると考えられます。
内転筋の短縮・滑走不全を取り除くことが腰痛改善へのカギとなります。
腰部だけの治療のみならず、
「姿勢を評価し、短縮部位の柔軟性を確保し、筋の滑走をよくする。」など、
マルアライメントを修正していくことが大事です。
スポーツラボ鍼整骨院 滝ノ水 石本【柔道整復師】