スポーツ動作に多い『体幹の回旋』を紐解く
【スポーツ動作に多い『体幹の回旋』を紐解く】
あらゆるスポーツ(特に球技に多い)に必要な体幹の回旋動作。
コーチやトレーナーの現場でも「もっと体幹を回そう!!」「もっと体を捻って!!」と熱い声が聞こえてくるように思います。
これを言われた選手の心の声は、「体を捻りたいけど捻れないんだよ。。」が多いと思います。
ではなぜ体幹を回せないのか?
私たちは何が原因で体幹を回せないのかを見極めなければいけません。
今回は、スポーツ動作の中で特に必要な体幹の回旋について紐解いていきたいと思います。
~Contents~
【体幹の回旋はどこで起こるのか ~脊椎の機能解剖~】
【カップリングモーションについて】
【アライメントからくる回旋差の予測と改善方法】
【体幹の回旋はどこで起こるのか ~脊柱の機能解剖~】
脊柱は頸椎(7個)、胸椎(12個)、腰椎(5個)の椎骨から構成されています。
そして、頸椎、胸椎、腰椎にはそれぞれ形態的特徴があり、役割も異なります。
例えば頸椎は第1頸椎(環椎)と第2頸椎(軸椎)で構成される環軸関節は、頚部回旋の50%を担っているといわれています。
そして、頸椎はある程度の自由度と、頭部を支える為の固定を要求されルシュカ関節という椎体同士がかみ合った構造をしているのも特徴です。
胸椎は、体幹部分の中心となり脊椎で唯一肋骨と関節を有し(肋椎関節)、胸郭を構成して臓器を保護しています。
腰椎は、体幹部の質量を受け止め、下肢との連結をする部分である為、頸椎、胸椎に比べ椎体が大きいです。
以上のように各部位で構造が異なる為、頸椎、胸椎、腰椎で動く可動範囲、可動方向も違います。
そして、どの方向にどの程度動くのかは椎間関節の形状が大きく影響します。
頸椎の椎間関節は(環軸関節を除く)水平面に対して後方に約45度の傾斜があり、屈曲–伸展の動きを主に行います。
胸椎の椎間関節は前額面に対して平行に近い構造を呈しているため、回旋–側屈の動きが得意です。※下位胸椎は腰椎の構造に近くなるため回旋–側屈の動きは少なくなります。
腰椎の椎間関節は矢状面に対して平行に近くなるため、屈曲–伸展の動きが主となります。
一方で、回旋の可動域はほとんどないとされています。
【カップリングモーションについて】
カップリングモーションについては、以前の記事でも触れていますのでそちらも参考にしてみてください。
カップリングモーションとは「脊柱の動き」を言い、脊柱の側屈に伴い回旋が行われるというものでした。
ここで注目すべきは胸椎のカップリングモーション。
つまり胸椎はすべてにおいて側屈に伴い同側回旋が起こる。
これは考え方を変えれば、
胸椎を回旋させる筋の短縮が側屈の邪魔をしている、もしくは側屈させる筋の短縮が回旋の邪魔をしている可能性があるという事。
また、同じ考えで
側屈の可動域を出せば回旋の可動域も同時に大きくなり、また回旋の可動域を出せば同時に側屈の可動域が大きくなる可能性があるという事。
これを考えることでおのずとアプローチ方法が見えてきます。
【アライメントから予測する回旋差と改善方法】
例えばこのような左肩が下がっている人。
考えられる原因はさまざまありますが、単純に胸椎の左側屈が原因とすると、胸椎は左回旋位となります。
これはゴルフのバックスイングやテニスのフォアハンドのテイクバック、バックハンドのフォロースルーなどの回旋の制限になることが予測されます。
胸椎回旋チェック方法は立位よりも腰かけ座位で行うといいと思います。
※立位で行うと股関節や膝の要素が入ってくるため
胸の前で腕組みしてもらい、振り向くように回旋します。
次に改善方法ですが、胸椎の回旋制限を作る原因はさまざまありますが、今回は筋に着目すると、
胸多裂筋、胸腸肋筋、胸最長筋の短縮があげられます。
胸多裂筋=胸椎の横突起から2~4椎骨上の棘突起に付着し、脊柱の回旋、側屈作用を持つ。
胸腸肋筋=肋骨角に起始と停止部を持ち、胸椎の側屈に関与。
胸最長筋=肋骨角付近に付着部を持ち、片側が収縮すると脊柱を同側に側屈させる。
お分かりいただける通り、胸椎の側屈作用のある筋の短縮が、胸椎の回旋制限の要因になるという事。
これらの筋をリリースしていきます。
胸椎左側屈位の場合、まず左側の多裂筋、腸肋筋、最長筋を狙っていきます。
リリース方法は、手技でリリースしてもいいですし、ゴルフボールやテニスボールなどのボールを背中の下において転がしてもいいです。
リリースをしてから、再度回旋をチェックしてみてください。
変化が出た先生も多いのではないでしょうか。
スポーツの動作の中で、体幹の回旋は重要視されることが多いです。
体幹の回旋の動きが出ない理由として、
可動域はあるけど回旋が出ない場合と、可動域制限がある場合が考えられ、可動域制限がある場合何が原因となっているのか?を見極める必要があります。
その判断材料に、脊柱のアライメント評価とカップリングモーションを考えてみるのもいかもしれません。
小池 隆史(こいけたかふみ) 【柔道整復師】
スポーツラボ鍼接骨院 千種