「姿勢から考える股関節前面のつまりと腰痛」
「姿勢から考える股関節前面のつまりと腰痛」
子供のころから親から姿勢が悪いから良くしなさいと言われたことがあるのではないでしょうか。
基本的立位姿勢とはどんな姿勢かまずお話しします。
基本的立位姿勢は、矢状面から見て耳垂・肩峰・大転子・膝関節前面・外果前方が一直線になっています。
<基本的立位姿勢>
公益財団法人 日本体育協会(第1版2007年 公認アスレティックトレーナー専門科目テキスト5巻検査・測定と評価 p.21 )より
不良姿勢の中で日本人に多い姿勢として、Sway back姿勢があります。
Sway back姿勢の特徴は頭部前方変位、胸椎後方変位、骨盤後傾・前方変位、股関節伸展位になっています。
<Sway back姿勢>
(K1セミナーの資料)より
常にSway back姿勢でいると、以下のような痛みを訴えることがあります。
・頭部が前方変位していることにより、肩上部や頸部の張り感、肩こり
・胸椎後方変位・腰椎平坦・骨盤後傾位により、腰部の生理的弯曲が減少することにより腰痛
・股関節伸展位になることにより、大腿前面の張り感や、股関節のつまり感
今回はSway back姿勢でいることが原因での、股関節のつまり感と腰痛についてお話していこうと思います。
【股関節のつまり感】
股関節のつまり感が起こる原因の1つとしてSway back姿勢で常に生活していることが挙げられます。
Sway back姿勢で股関節のつまり感が出てくる理由として、皮膚運動学にポイントを置いて考えていきましょう。
皮膚の生理的運動は、『皮膚が余る場所には皮膚が離れ、皮膚が不足する場所には皮膚が集まるように動きます。』
例えばFFDをする場合、股関節前面は皮膚が余るので皮膚が離れるように動き、股関節後面は皮膚が不足するため皮膚が集まってきます。以下の写真のようになります。
<FFD時の皮膚運動>
このことから常にSway back姿勢でいると、股関節は伸展位になるため、股関節前面に皮膚が集まっている状態になります。そのため股関節を屈曲した際皮膚が集まり過ぎていて、皮膚が離れる動きが足りず詰まり感を感じることが多いです。
<sway back姿勢時の股関節の皮膚運動>
そのため、股関節を屈曲してつまり感がある場合は股関節前面(大腿前面)の皮膚を遠位に引っ張りながら屈曲させると詰まる感じが減ります。
そのことから、Sway back姿勢を治すことにより、骨盤後傾・股関節伸展位が改善され詰まる感じが減ってきます。
【腰痛】
腰痛患者を診てきて、Sway back姿勢が多いと感じたことがあるのではないでしょうか?
はじめにも説明しましたが、Sway back姿勢の特徴として頭部前方変位、胸椎後方変位、骨盤後傾・前方変位、股関節伸展位になっています。
基本的立位姿勢を維持するには、腹圧が必要になります。
腹圧に関係ある筋肉のことを体幹深部安定化筋群(インナーコアユニット・ローカルシステム)といい、腹横筋・内腹斜筋・胸腰筋膜・骨盤底筋の筋肉の働きが必要になります。
これらの筋肉の主な作用として、
腹横筋は、腹壁を凹ませることで腹圧を高め姿勢の維持、腰椎の安定化に寄与します。
また、立位姿勢で上下肢を動かす際、姿勢保持の為に働く第一の腹筋でもあります。
内腹斜筋は、体幹の屈曲や脊柱の回旋に働きます。
他に、骨盤内における内腹斜筋の筋線維は横方向にあり、仙腸関節への剪断力を防ぐことがあると考えます。
また、骨盤が後傾位にあると仙腸関節への剪断力が増大し、その際、内腹斜筋の筋活動が減少します。
上記腹横筋と内腹斜筋は、胸腰筋膜の深葉に起始するため腹圧への関係が強いです。
その胸腰筋膜は、固有背筋全てを包む骨と結合組織でできた管の外側の部分を形成しています。
腹横筋・腹斜筋が働くことで腹圧が高まり、さらに起始部である胸腰筋膜も一緒に働くことで腰椎の安定化、姿勢を維持することができると考えます。
骨盤底筋は、骨盤の中にあり、骨盤内の臓器を支えてくれています。
これらのことから、腹圧を高める事によって腰痛が軽減するのでは無く、腹圧を高める筋肉の働きによって、基本的立位姿勢を維持するのに効果があり、腰痛予防できると考えます。
そのためのトレーニングとして、ドローインがあげられます。
・ドローインやり方
① 背臥位で膝を立てます
②息を吸いお腹を膨らませます。
③ゆっくり息を吐きながらお腹を凹ませていきます。
ポイントとして、息を吐き苦しくなってくると腹横筋・内腹斜筋が緊張してきます。
これを10回行います。
体幹深部安定化筋群を働かせることで骨盤前傾、腰椎前弯での姿勢維持ができるため腰痛の予防になります。
このことから、Sway back姿勢でいると使う筋活動が低下し、重力に対して体を支えれなくなり痛みが出やすいため、アライメントを修正していくことが大事です。
参考文献
¹※高崎 恭輔・他「仙腸関節における骨盤偏移の評価と理学療法」より
²※三浦 雄一郎「体幹筋機能の研究と慢性腰痛症の運動療法」より
鍼灸師:荒木 千陽