【股関節前方のつまり感の原因と「歩行」「腰痛」「膝痛」の関係性について】
【股関節前方のつまり感の原因と「歩行」「腰痛」「膝痛」の関係性について】
股関節を屈曲した時前方のつまりを訴える。臨床上目にすることが多い症状です。
股関節前方がつまる場合患者さんは、
「前が突っかかる感じ」、「これ以上曲がらない感じがする」などと仰います。
このようにつまり感を訴えるのには原因があります。
さらに、つまりを訴える側は比較的、患側が多く、
例えば、右股関節がつまる場合、右膝の前面を痛めている、右腰を痛めている
このような方が多い印象です。
腰痛の場合、股関節伸展に伴う腰椎過伸展代償による腰痛もありますが他にも原因があります。
今回は患側に多い股関節のつまりの原因について紐解いていきます。
まず、つまりの原因についてですが
【つまり=筋肉や筋膜、皮膚などの軟部組織】
によるものが多く考えられます。
もちろん、骨などの構造的な問題によるものも存在しますが、多くの場合は軟部組織によるものだと考えられています。
骨が原因の場合、
股関節を屈曲させていくと、
“カチッ“と止まってこれ以上股関節が曲がらない感覚があると思います。
この場合は、
変形性股関節症の進行期や末期の場合、
ほかには、股関節を屈曲させていく際に
臼蓋と大腿骨の衝突を引き起こす大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)などが原因としてあると思います。
それに対して、軟部組織が原因の場合、
股関節の屈曲可動域はありますが、
股関節周囲の筋肉や腱、靭帯、関節包などの軟部組織が硬くなり屈曲を制限します。
軟部組織の中でも主に股関節の前面の筋肉、大腿四頭筋や大腿筋膜張筋、縫工筋などが硬くなり
股関節の屈曲を阻害します。
そして、このように股関節の前面が硬くなる原因は「姿勢」によるものが大きいと考えています。
では、どのような姿勢をしているのか?
それは、「骨盤の前方回旋」を呈しています。
このサイトでも度々出てくる骨盤の前方回旋ですが、
もう一度おさらいしていきます。
静止立位姿勢で骨盤のアライメントを評価するときASISとPSISを指標に触れていきます。
そこで、右のASISが前方にいっているか?左のASISが前方にいっているか?
これを確認していきます。
右が前方回旋の場合、右骨盤前方回旋となります。
反対に左の骨盤は後方回旋となります。
そして、この前方回旋は骨盤の後傾を伴いやすいです。
つまり、後傾しながら前方へ出ていくので大腿前面の筋肉や筋膜は遠心性収縮がかかります。
先ほどの、大腿四頭筋や大腿筋膜張筋などもこのような理由で筋緊張が高くなります。
大腿直筋の起始は下前腸骨棘~停止が脛骨粗面のため、
膝前面には牽引ストレスがかかり膝前面の痛みを訴えます。
このストレスが繰り返されることにより、オスグッドやジャンパー膝などに進行していきます。
これが前方回旋側に起こる膝の痛みの原因になります。
では、腰が痛い場合はいかがでしょうか?
例えば、右腰が痛い場合
先程と同じく、右骨盤が前方回旋している場合、大腿前面は遠心性収縮がかかり、
後面の大殿筋や中殿筋後部線維、ハムストリングスは短縮位となりやすいです。
そして、前方回旋側は後傾を伴っている為、股関節は伸展位となります。
このまま歩行を繰り返せば右の骨盤は後傾しながら前方へ抜けていくので
ICで大殿筋のショックアブソーバーが機能せず、右の骨盤はswayしていきます。
右の骨盤前方回旋+Swayすることで腰方形筋の筋膜の絞扼により痛みが出やすくなります。
これが前方回旋側に起こる腰の痛みの原因になります。
このように膝の痛みも腰の痛みも共通していることは前方回旋側の痛みだということです。
ここまで読んでいただいた先生方はなぜ股関節前方のつまりが患側に多いのがもうお分かりですよね。
前方回旋側は股関節伸展位となり、
大腿前面の筋肉は遠心性収縮の状態が続き伸張ストレスが加わります。
それに対して、
後面の筋肉(大殿筋、外旋筋群)は短縮ストレスがかかっています。
股関節を屈曲させたときに前方回旋側の大殿筋や外旋筋群などは硬くなっている為屈曲可動域が低下します。
さらに、大腿前面の筋肉は伸長ストレスが加わっているので滑走不全が起こりつまりを感じます。
これらが原因で股関節はつまり感を訴え、つまり側は膝や腰に痛みを訴えることが多いのです。
このつまりを改善するためには静止立位評価や指床間距離(FFD)、
踵臀距離(HBD)などの評価を行い
どこが硬くて屈曲の制限をしているのかを見極める必要があると思います。
石井 涼 【アスレティックトレーナー】