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上半身・胸郭のアライメント

肩甲上腕関節と前鋸筋との関係性について

 

   【肩甲上腕関節と前鋸筋との関係性について】

 

今回は、肩甲帯の中でももっとも広い可動域を持つ関節

 

肩甲上腕関節と前鋸筋との関係性についてです。

 

肩関節周囲の様々な症例


肩関節周囲炎 腱板炎 石灰沈着性腱板炎 拘縮肩 上腕二頭筋長頭腱障害

 

など、多くの疾患がありますが、

 

どれも、上腕骨と肩甲骨からなる肩甲上腕関節(GHJ) 

 

治療をするにあたって

ここは評価したい部位ではないでしょうか。

 

基本的には

GHJが安定すれば、上記の症例は改善に向かうのは間違いないと思います。

(関節・靭帯 等が外的要因で損傷した場合などは除きます)

 

今回は、

そのGHJとの関係性で「前鋸筋」を取り上げてお話をさせていただきます。

 

先に、

 

今回一番お伝えたいことは

 

前鋸筋の収縮 = 肩甲骨の外転 と肩甲上腕関節の安定 

 

これだけをみるのではなく

 

胸郭の後方回旋からくる前鋸筋の短縮も考えて治療する

 

このことが頭にあると、治療の幅は広がると思います。

 

ただ肩甲骨のアライメントを外的要因からだけで診て

 

肩甲骨が外転しているからという観点だけで肩関節周囲の筋肉や

前鋸筋中心の治療だけをして、いつまでたっても肩の痛みに変化が起きない状態の方はいませんか?

 

そこを改善するためには、

上位・下位の胸郭ポジションをしっかりと確認し

Sway-back姿勢からくる前鋸筋の短縮の可能性も視野に入れて欲しいのです。

 

そのうえで、肩甲上腕関節についてお話します。

 

 

【肩甲上腕関節とは】

 

肩甲上腕関節の関節面は、すべての方向において非常に大きな可動域を得られるように保たれています。

 

肩甲上腕関節は球関節(ボールと受け皿の関係)であることで、人間の関節の中でも自由度の高い関節ですが、

 

ただ、その反面、代償として不安定性と安定させている筋に過度の負荷がかかってくる関節です。

 

つまりは筋によって、「安定」にも「不安定」にもなり得るということです。

 

その中で、安定させる筋肉の一つとして前鋸筋がありますが

 

 

そもそも前鋸筋の役割とはなんでしょう??

 

<起始>  第1~第9肋骨側面

<停止>  肩甲骨肋骨面の内側縁の全長

 

<作用>

Ⅰ、第1肋骨と第2肋骨に起始する線維の一部は肩甲骨上角に停止する(superior part)

 

前鋸筋の上部線維はその走行が水平方向になっており、肩関節の水平内転方向への身体の回転軌道

を誘導するに適しています。

 

Ⅱ、第2肋骨に起始する線維の一部と第3肋骨に起始する線維群は下角までの内側縁に停止します(middle part)

Ⅲ、第4~第9肋骨に起始する線維は、肩甲骨下角に集中して停止します(inferior part)

 

前鋸筋の下部線維は、斜め下方向へ走行しており身体の回転軌道を下側の上腕骨長軸方向へ誘導するのに適しています。

また、前鋸筋の起始部の下部線維は外腹斜筋と筋連結を有していて、前鋸筋の下部線維の活動が外腹斜筋の活動を誘発し

体幹の屈曲回旋が強まる性質を持っています。

 

 

「前鋸筋はsuperior partmiddle partinferior part3つのパートに分けられる」

 

それぞれに解剖的差異が存在し、機能も異なっています。

 

superior part:第1~2肋骨から起始し、肩甲骨上角に付着します。「上角~肩甲骨内側にまで付着する」

 

       肩甲挙筋と前鋸筋上部は連続している

 

middle part:第2~3肋骨起始し、肩甲骨内側縁へ付着します。middle partは他のpartと比べて薄いようです

 

inferior part:第4~9肋骨から起始し、肩甲骨下角に付着する。大切なことはinferior part菱形筋と連続している

 

それぞれの筋と連続しながら

 

最終的には、前鋸筋の作用は様々な筋肉との連続によって

肩甲骨の外転に作用し、僧帽筋と協同して胸郭を引き付け安定させる役割になります

 

ただし、

 

もし、本当に前鋸筋の短縮だけが関連した肩関節周囲の症例かどうか??

 

これは、

 

全体の姿勢を診ての判断が必要になります。

 

胸郭に対して左の前鋸筋が短縮すると、左側の肩甲骨は外転しますね。

その反対だったら?

つまり、肩甲骨が固定されて、前鋸筋が短縮したら?

 

もし、肩甲骨が動いているのではなくて、土台の胸郭がくるっと回旋していたらどうなるのでしょうか?

〈上から見たまっすぐな胸郭〉

〈胸郭のみ左回旋させた図〉

この図は肩甲骨を全く動かさずに、胸郭を左に回旋させた図です。

 

右の肩甲骨は内転位となり、左は外転位と評価できるはずです。

 

この評価を、肩甲骨だけで終わらせると

 

右の肩甲骨を外転位にしたくなり、左を内転位にしたくなりますね

胸郭の回旋を無視して・・・。

 

この場合、実際に起きていることは

左の前鋸筋が短縮して肩甲骨が外転しているのではなく

 

他の理由で胸郭が後方に変位し肩甲骨が外転しているかのようにみえる

 

この時点で反対側の前鋸筋に短縮が無かったら、胸郭は回旋します。

 

そして胸郭の左回旋となり

 

胸椎のカップリングモーションに当てはめると

 

胸椎での左の側屈して

左胸郭後方変位+左側屈となります。

 

左の骨盤に対して後方変位した左胸郭、言い方を変えれば左胸郭に対して、左の骨盤は前方変位とも言えます。

 

ここでSway-back姿勢が関係してきます。

このサイト内では、Sway-back姿勢について多くの記事があるので、

それらもぜひ参考にしてみてください。

 

 

肩関節周囲の症例で

前鋸筋が原因になっている場合ももちろんあります。

 

そんな時は、

 

前鋸筋の短縮  =  肩甲骨外転 

          下位起始部では、外腹斜筋過活動による体幹の屈曲回旋が過度になる

          上位停止部では、肩甲挙筋 

          下位停止部では、菱形筋 

 

それぞれの前鋸筋との連続性が深いので治療の際のポイントにするのもいいと思います

 

ただし、Sway-back姿勢からくる

 

胸郭の後方回旋などによる肩甲骨の外転なら

 

いくら前鋸筋の短縮を治療しても状態の変化は起きてきません。

上行性だけでなく下行性(足部や下肢など下からの影響)からくる肩の症例も頭に入れておくことが必要になります。

 

 

肩関節周囲の痛みがあった場合、

もちろん患部周囲で何が起きているか??

の判断は一番大事ですが、

 

GHJのみの評価をせず肩甲骨・胸郭・骨盤まで

 

全体を診て判断することが 肩関節周囲の痛みを一日でも早く改善することができるかもしれません。

 

 

 

中田 徹  【鍼灸師】

 

 

 

 

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