【歩行・動作分析の考え方のポイント! 『関節モーメントとは?』】
歩行・動作分析の考え方のポイント!
『関節モーメントとは?』
今回は関節モーメントとは何かについてお話していこうと思います。
このサイトの記事でも色々なところに自然とその考え方が出てきています。
歩行や動作をみていく際の基本的な考え方になるといってもいいのではないでしょうか。
実際、ここをよく分からないままにしていると行き詰ってしまうので、しっかりと確認してみましょう。
関節モーメントとは
「筋張力などにより関節を回転させる力」のことです
分かりやすく言えば
「身体が倒れるのを止める力」が、その一例です。
人の動作やそれに伴って発生する痛みには、基本的な関節の動きだけでなく、力学的な要因が加わっていると考えられます。
痛みが出ている場所は、なぜ痛くなったのか?
どのように負担がかかっていたのか。
根本的に痛みを引き起こした原因、それを力学的な要因「関節モーメント」から見つけられるかもしれません。
それでは、どのように力学的な要因が加わっているのか。
まずは、ポイントとなるワードを押さえておきましょう!
・床反力:身体と床の接触部分から生じている反力のこと。床から質量中心方向に加わる力
・質量中心(COG):身体重心のこと
上半身質量中心(U-COG)⇒第7~9胸椎の位置
下半身質量中心(L-COG)⇒大腿骨1/2~近位1/3の位置
質量中心(COG)⇒U-COGとL-COGの中点に位置(解剖学的立位肢位では、だいたい第2 仙骨前方に位置)
・(内部)関節モーメント:生体内部で働く筋や靭帯が関節を回転させる力
※内部を省略して用いられることが多いです。
・外部関節モーメント:外力の影響によって回転させられる回転力
関節モーメントを推測するには…
例:
・黄色○:質量中心
・黄色矢印:床反力
・緑矢印:床反力による外部膝関節屈曲モーメント
・赤矢印:膝関節伸展筋力による(内部)膝関節伸展モーメント
このように質量中心が膝関節の後方に位置するとき、床反力は膝を屈曲させるように(下腿を屈曲させる)作用するため、この肢位を維持するためには膝関節の屈曲を止める力が必要となります。
この止めようとする力が(内部)関節モーメントです。
関節モーメントは、身体が倒れるのを止める力でしたね。
この姿勢を維持しているとき、私はもも前が疲れて、張っていました。
膝関節の屈曲を止める力として、膝伸展筋(大腿四頭筋など)が働いたということです。
つまり、
外力によって、膝は屈曲させるので、外部膝関節屈曲モーメント
膝をその肢位に保つための筋活動は、(内部)膝関節伸展モーメント
と表現します。
では、歩行周期をもとに関節モーメントを考えてみましょう。
ここでは、ランチョ・ロス・アミーゴ方式で歩行周期をみていきます。
<歩行周期>(引用:月城慶一ら・観察による歩行分析2005)
歩行各相の説明はこちら↓
歩行動作は立脚相と遊脚相の2つに分けることができます。
立脚相は足を接地している相ですね。IC→LR→MSt→TSt→PSwまでということです。
また、一歩行周期の約60%が立脚相と言われています。
多くの場合、立脚相の時に問題があることが多いことから、立脚相の関節モーメントをみていきたいと思います。
その中でも今回は股関節の関節モーメントに着目していきます。
<矢状面>
IC~MSt(立脚前半相)
床反力は股関節の前方を通過、股関節の伸展モーメントが作用
このとき更に骨盤後方位(お尻が後方に引けている状態)で股関節伸展モーメントは増大
黄矢印:床反力
緑矢印:床反力による外部股関節屈曲モーメント
赤矢印:股関節伸展筋力による(内部)股関節伸展モーメント
MSt~PSw(立脚後半相)
床反力は股関節の後方を通過、股関節の屈曲モーメントが作用
このとき更に骨盤前方位(お腹が前に出ていく状態)で股関節屈曲モーメントは増大
黄矢印:床反力
緑矢印:床反力による外部股関節伸展モーメント
赤矢印:股関節屈曲筋力による(内部)股関節屈曲モーメント
<前額面>
IC~MSt(立脚前半相)
床反力は股関節の内方を通過する、股関節外転モーメントが作用
このとき更に骨盤が外方位にあると股関節外転モーメントは増大
黄矢印:床反力
緑矢印:床反力による外部股関節内転モーメント
赤矢印:股関節外転筋力による(内部)股関節外転モーメント
MSt~PSw(立脚後半相)
骨盤が内方位にあれば、
床反力は股関節外方を通過する、股関節内転モーメントが作用
※上半身がもう少し青矢印方向にあり骨盤が内方位にあると
黄矢印:床反力
緑矢印:床反力による外部股関節外転モーメント
赤矢印:股関節内転筋力による(内部)股関節内転モーメント
このように、関節モーメントを考えてみてください。
(内部)関節モーメントが増大すれば、その部分の筋や靭帯、皮膚等に負担がかかってきます。
今、目の前に立っている人、歩いている人はどんな関節モーメントがかかっているでしょうか?
そんな風にみていると、どこに負担がかかってくるのかが分かってきます。
患者さん、クライアントさんのお身体をみるときに、まずはどの組織が痛みを発生させているのか、を評価しないといけないと思います。
その後はなぜその組織に負担がかかってしまったのか、を力学的に評価するということが大切になってくるのではないでしょうか。
ぜひ関節モーメントを考えてみてください!
「歩行時の股関節の筋活動」はこちら↓
「歩行時の大腿外側の張り」はこちら↓
岩瀨 優子(いわせ ゆうこ)【鍼灸師・アスレティックトレーナー】