腸腰筋で転倒が防げるのか?
【腸腰筋の魔法】
皆さんもご存知、腸腰筋。
なんなら腸腰筋様かと思います。
なんだってしてくれます。腸腰筋。
股関節伸展から屈曲動作へのばねとなり、陸上界でもサッカー界でも
大きな武器の一つとして君臨していることと思います。
問題は、リハビリの世界でしょうか。
今日はこの無敵な腸腰筋のお話をさせてください。
治療、リハビリの世界でよく耳にする「転倒」。
このフレーズは多くの施設、治療家の間で腸腰筋はつきものとなっていると思います。
高齢者にとっても大きな武器となり、椅子に座ってももをあげる姿は
皆さんも頭に浮かぶ光景であり、なんなら今日だってそうしてきた人もいらっしゃるかと思います。
ひとつ疑問があります。
「本当にももをあげることで転倒は防げるものなのでしょうか?」
筋力の低下を叫ばれ、筋力アップをやさしいレベルから始めさせられる高齢者。
そこが悪いのではなく、僕たちの仕事は「本当に足が上がらない理由が腸腰筋なのか?」と疑問を抱くべきなのかなと。
年を重ねていくと起こりえる歩行の特徴として、歩幅の低下があると思います。
そもそも、歩幅が低下すれば、下肢の伸展相が少なくなります。そうなると、次前方へ振り出される力も少なくなります。その力が無くなれば、伸展相からスイングするときに自然と股関節が屈曲する力も弱くなります。
じゃあなぜ歩幅が低下するののでしょうか?
歩幅を広げて歩行を無理やりしようとするときにつきものなのは、骨盤の水平面での回旋です。
より遠くへ足を出したいのなら、骨盤を回旋させることでより足を前方へ運ぶことができ、その反対の下肢はより後方へ持っていくことができます。そして、その大きく広げた下肢のバランスをとろうと、上位胸郭の骨盤との逆回旋が上肢を大きく振ることを助けます。
言い換えると、骨盤の回旋は胸郭の逆回旋が起きないことには、起こりにくいとも取れます。
年齢を重ねていくと、関節は変性しやすくなるのはみなさんご存知かと思います。
胸郭にどれだけ関節があるのでしょう?
活動量の低下も相まって、胸郭の動きの低下は高齢者の特徴といえるのではないでしょうか。
胸郭の動きの低下は、歩幅を狭くするという事です。
患者さんは、「右足でつまずいて」「左足でつまずいて」と毎回つまずく方は違うのでしょうか?
気にするのはそこかと思います。
可動域が低下した胸郭。
うしろから見たときに左右どちらにも傾かずに固まっているのでしょうか。
そんなことはあり得ません。
多くの人が左右どちらかに上半身の質量が変位している事でしょう。
日常生活のくせ、過去に痛めたところをかばうなど何か傾く可能性はいくらでもあるからです。
じゃあ、考えましょう。
あなたが左に上半身を側屈したとき、重心はどちらにあるでしょうか?
そうです、左です。
普段使う言葉でいうと、体重は左に乗っていることになりますね。
じゃあ、その場合左足って、上げられるのでしょうか?
これ、無理なんです。
当たり前なんですが、当たり前が無くなってしまっているんです。治療家の僕たち。
あげるためには右足に体重を乗せ換えないと上がらないはずなんです。
じゃあ、胸郭の可動域が低下し、左に上半身質量がある状態の患者さんに、伝説の腸腰筋の筋トレはいかがでしょうか?
椅子を両手で押さえれば、左のももは上げることができるでしょう。
両手が支えとなって、支持基底面が広がり、その中で左のももはあがるでしょう。
「ちょっと上げにくいけど、続けていけば上がりますよ。頑張りましょう!」
「少しづつでいいですよ。慣れてきたら、10回から20回に増やしましょう。」
その後、家に帰る途中つまずく足は鍛えたはずの左足じゃないでしょうか?
上半身の質量をもし右に少しでも移動できることができていたのなら、その左足はつまずかずに済んだかもしれません。
もうお分かりでしょう。
伝説の筋トレは、使い方を間違うと伝説で終わるんです。
僕たちがやらなければいけないことはいつだって同じ。
その人を見て、その体を見させていただく。
目をつぶって、覚えたトレーニングをすることではなりません。
なぜそうなるかを見抜けるようになることが、その人の悩みを救うことになり、
いつかその人にとっての本当の伝説なるのだと思います。
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髙木慎一(たかぎしんいち)【柔道整復師】
Athlete Village浜松代表
アライメント・姿勢・歩行動作を総合的に分析し、その方に必要な
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