「治療家向け」シーバー病・踵の痛みに対する安静以外の臨床アプローチ
臨床でよく遭遇する踵の痛み。
特にオスグッドシュラッター病やシーバー病のように、
「休めば痛みは軽減するが、運動を再開するとまた痛い」と
訴えてくる成長期の骨端症やスポーツ障害。
先生はどのようにアプローチしているでしょうか?
運動を休止して
炎症が治まれば、痛みは軽減しますが
炎症を引き起こす原因が残っていれば、痛みは再発してしまいます。
何かを変えてあげないと、同じことの繰り返しになってしまう。
つまり、安静以外のアプローチが必要となります。
例えば、オスグッドシュラッター病では、
股関節の屈曲不足(内部伸展モーメント不足)を膝関節の屈曲(内部伸展モーメント過剰)で補うことで、
大腿四頭筋がオーバーユースとなり、付着部である脛骨粗面への牽引力が高まり、炎症を起こしやすくします。
この場合は、股関節の屈曲(骨盤の前傾)を作り、殿筋を強化(内部股関節伸展モーメント増大)することで、
改善が見込まれます。
オスグッドシュラッター病に関する記事はこちらをご覧ください。
【Sway back姿勢から考えるオスグッド病、ジャンパー膝】歩行と姿勢の分析を活用した治療家のための専門サイト【医療従事者運営】
そして、今回は踵の痛みに対するアプローチについて、
実際に臨床で行っているアプローチをお伝えします。
シーバー病は踵部の後下方に疼痛をきたす小児疾患 であり、
踵骨骨端症が原因と考えられています1).

そして、骨端線は物理的に弱く、踵骨にはアキレス腱と足底の筋がついているため、
運動で繰り返し骨端線の周囲に牽引力が加わることや、運動時にかかる踵への衝撃で
炎症を起こしたり、骨に細かい傷がついたりすることが痛みの原因と言われています。
つまり、踵にかかる牽引力、衝撃、剪断力をいかに減らしていくかがポイントになります。
今回のポイント3つ
①後方重心
②足部の関節可動域
③下腿前傾
上記をそれぞれ解説していきます。
(歩行評価・動作分析を治療に取り入れたい方はこちら) → https://arch-1007.jp/Page?id=P5dab8a9
①後方重心
後方重心は、踵骨側に体重がかかるため、
より踵骨への負担(圧縮ストレス)が増えることが推測されます。
スウェーバック姿勢などは、後方重心の典型ではないでしょうか。

スウェーバックに関する記事はこちらをご覧ください。
【姿勢分析・動作分析を始めたばかりの方へ】歩行と姿勢の分析を活用した治療家のための専門サイト【医療従事者運営】
他にも、片側をより後方重心にさせる原因があります。
(片側の踵だけ痛い場合はこちらの可能性があります)
それは骨盤や胸椎の回旋です。
骨盤や胸郭のアライメントによって
上半身質量中心や身体重心は変化します。
典型的な例として
骨盤 右挙上 左後方回旋
下位胸椎 左後方回旋

この姿勢の場合、左後方に重心がかかることが推測されます。
通常、骨盤の前方回旋側が(今回の場合は右)骨盤後傾位になりやすいですが
骨盤の挙上がある場合は下制側(今回は左)が後傾位になることが
臨床上多いです。
それらのアライメントにより、左後方荷重になり
左踵骨側に体重がかかり
距骨下関節は回内していきます。
踵骨回内につきましてはこちらの記事をご覧ください。
距骨下関節の回内は踵骨回内、距骨内旋・底屈l歩行と姿勢の分析を活用した治療家のための専門サイト【医療従事者運営】
それにより、踵骨内側への圧縮力とアキレス腱の牽引力が強まる可能性があります。
こちらに対するアプローチは荷重を変化させればいいので
アライメント修正を行います。
基本的にアライメント修正は
短縮している筋に対して、リリースと遠心性収縮
伸張している筋に対しては、求心性収縮
を行います。
上記アライメント(骨盤左後方回旋、右挙上、下位胸椎左後方回旋)で
臨床で行っている例を少し挙げますと
下位胸椎の左後方回旋に対してのアプローチ
肩甲骨の位置を動かさずに胸郭が左後方に回旋すると
下の画像のように
左肩甲骨は外転位、右肩甲骨は内転位になります。


左肩甲骨の外転位は、左前鋸筋が短縮位のため左の前鋸筋をリリースします。
(右の胸部脊柱起立筋の固さが胸椎の右後方回旋の動きをブロックするためこちらもリリース)
筋収縮は
左前鋸筋に対して遠心性収縮(左のサイドベントなど)


左外腹斜筋は伸張しているので求心性収縮を行います。(左のクロスクランチなど)


骨盤の右挙上位に対するアプローチ
骨盤の右挙上位は立位を保つために
下の図のように
骨盤に対して、右股関節内転位、左股関節外転位になります。

つまり、
右股関節を内転させる内転筋、
左股関節を外転させる中殿筋は
短縮位となるため、右内転筋、左中殿筋をリリースします。
遠心性収縮は左中殿筋
求心性収縮は右中殿筋
などを行っています。
②足部の関節可動域
次は踵にかかる衝撃吸収についてです。
接地時の衝撃吸収に適した足部アライメントは、
距骨下関節: 回内(距骨-内旋・底屈 踵骨-回内)
ショパール関節(MT関節): 外転・回外
リスフラン関節: 背屈
あと第1列の並進運動などもありますが2).
いずれにせよ、どこかの可動域が足りなくなると
それを補うために他が動き過ぎます。
今回の場合、左ショパール関節(MT関節)の外転が出ないことで
距骨下関節の回内で代償しているパターンでした。
1万歩走った場合は、片方で5000回も距骨下関節の過回内で接地しますので、
踵骨部の負担が大きいと推測できると思います。
臨床ではショパール関節の外転可動域を出していきますが
下腿の外旋も影響するので、大腿二頭筋のリリースも行っています。
③下腿の前傾
運動中のジャンプの着地動作で下腿の前傾が入りすぎると
アキレス腱の牽引が強くなります。
これも踵にかかる負担を増やします。
うつ伏せで、膝を90°屈曲させて、足関節を背屈させると
背屈が入りすぎる女子中学生や小学生がいます。

この場合、着地時に体重を支える筋力が足りず、
受動的に下腿が前傾してしまうので、
臨床ではヒラメ筋を鍛えて制動をかけられるようにします。
ドンキーカーフレイズなどが代表的なトレーニングだと思います。
以上、今回はシーバー病に対する、安静以外のアプローチ例を、記事を読んでいただいた後に
なるべく実践できるように挙げさせていただきました。
一つの痛みに対して、色々な診かたや、アプローチがあると思います。
今まで、チェックしていなかった事があれば参考にしてください。
歩行評価・動作分析を基礎から学びたい方はこちら → https://arch-1007.jp/Page?id=P5dab8a9
アーチ鍼灸整骨院
柔道整復師
松本 朝臣

参考文献・資料
1)山本享,佐藤雅人.Sever病(踵骨骨端症). 最新整形外科体系 小児の運動器疾患 第 2 版.越智光夫編.東京:中山書店:2007. 170-173
2)着地動作における足部・足関節運動解析 Foot and Ankle Kinematics During Landing. 早稲田大学大学院 スポーツ科学研究科 深野 真子 Fukano, Mako:2010










