股関節の痛みの原因は?~評価とアプローチ~
股関節のアプローチ、少し難しさを感じていませんか?
例えば…
・立ち上がるときに「イタッ!」と感じる
・階段を上るときに足がもつれる、痛い
・長時間歩くと股関節や腿が痛い
こんな症状を患者さんが訴えた場合、
問診・評価をして
関節の痛みなのか、周囲の組織なのか、
または、神経の痛みなのか
自信を持って説明することができますか?
評価だけではなく、
股関節へのアプローチ方法も曖昧で悩んでいる先生も多いのではないでしょうか?
今回は、股関節の評価方法とアプローチについて、実際の患者さんのケースを元にお話させていただきます。
では、具体的な患者さんのプロフィールを見てみましょう。
– 年齢:20歳
– 性別:男性
– スポーツ:サッカー(左利き)
– 主な症状:
右股関節前面の痛み(急性ではない)
股関節屈曲時のつまり感
階段の昇り降りやボールキック時の軸足の痛み
では、状態を確認していきます。
【矢状面】
立位
まず、骨盤を矢状面での「前傾と後傾」を評価していきます。
骨盤の触診方法について詳しくはこちら↓
・骨アライメント評価(骨盤前/後傾)
ASIS(上前腸骨棘)、PSIS(上後腸骨棘)を触診します。
骨アライメントでASISからPSISが二横指高いのが正常とされています。
*寛骨の形態差がありASISと恥骨結合で判断する場合もある
(参考文献)
福井勉・他:結果の出せる整形外科理学療法、MEDICAL VIEW、2009
左右のPSIS(上後腸骨棘)を触診し、どちらが上方に位置しているかを考えます。
上方に触れる側が前傾位、下方に触れる側が後傾位と評価されます。
特に、前傾位のPSISが触れやすい点が鑑別のポイントとなります。
患者例

PSISを触診し、ホワイトテープでマークをつけました。
写真のように左側のPSISが上方にあり、右側が下方にある場合は、
左は前傾位、右は後傾位と評価できます。(前額面での顕著な骨盤高位差はない前提です)
この場合、左右で筋肉の緊張する部分に違いが出ます。
左は臀部上部に緊張が見られ、患側である右側の股関節前面〜大腿前面は常に緊張している傾向があります。
その理由を姿勢評価と共に考えていきましょう。
・筋緊張の評価
上半身(重心線)に対して股関節の位置を基準に評価します。
骨盤後傾位(股関節伸展位)の場合、
外部では股関節伸展モーメント
内部では股関節屈曲モーメントが働きます。
その結果、TFL(大腿筋膜張筋)・中臀筋前部線維がハイモーメントになり、筋が緊張する傾向があります。
骨盤前傾位(股関節屈曲位)の場合、
外部では股関節屈曲モーメント
内部では股関節伸展モーメントが働きます。
その結果、大臀筋上部がハイモーメントになり、筋が緊張する傾向があります。
患者例
左

右
この場合
左→前傾傾向
外部股関節屈曲モーメント
内部股関節伸展モーメント
右→後傾傾向
外部では股関節伸展モーメント
内部では股関節屈曲モーメントになります。
上臀部を比較してみましょう。
左の上臀部が右の上臀部に比べて、盛り上がっているように見えます。
触診で上臀部の左右差を確認すると、左は硬く、右は柔らかい感じがあります。
逆にTFL〜大腿前面は左が柔らかく、患側の右が硬くなります
このように、どこに筋緊張が見られるかで骨盤の前後傾、左右差を評価することができます。
さらに詳しい関節モーメントについてはこちら↓
https://arch-seminar.com/posturalanalysis/【関節モーメントと姿勢の関係性】-2/
・筋膜tensionの評価
浅筋膜を大腿近位前面で上下・左右に誘導したときの動きやすさを評価します。
筋肉を捉えず、皮膚を誘導するようなタッチをします。
上方変位(上に動かしやすい)
→骨盤後傾傾向
下方変位(下に動かしやすい)
→骨盤前傾傾向

前方変位(前に動かしやすい)
→骨盤前方回旋傾向
後方変位(後に動かしやすい)
→骨盤後方回旋傾向

(k2セミナー参考)
筋膜tension評価・皮膚誘導について詳しくはこちら↓
座位
・骨アライメント評価
PSIS(上後腸骨棘)を触診し、高位差と左右差の評価をします。
座位ではASISの触診がしづらいためPSISを指標にします。

立位と同じように評価します
左の骨盤が上方で、右の骨盤が下方になり、
右の骨盤の方が後傾していることがわかります。
・筋緊張の評価
大腿近位前面(大腿直筋起始部・TFL)の収縮、緊張を評価します。
→緊張の高い場合を骨盤後傾位とします。
緊張・収縮がわかりづらい場合は、自分で筋肉を触診し、確認してみてください。
骨盤を後傾させ、大腿近位前面が緊張していることを確認します。
大腿近位前面を確認しながら骨盤を前傾させると筋肉が緩む位置があります。
その位置が、前後の筋肉バランスがとれた位置といえます。
患者例
(通常時)

(指導後)
通常時の座位で、骨盤が後傾していることがわかります。
患者例の場合、後傾位になり右のTFL〜大腿近位前面は緊張しているということになります。
骨盤を前傾位へ指導した後では、大腿前面の緊張が少なくなります。
治療後は筋緊張が緩和して可動域が増える、しかし日常生活を過ごすと硬さが戻ってきてしまう、こんなケースも多くあります。
これは、根本的な骨盤の位置が改善されず、後傾位のまま生活をすると、また同じ場所に筋緊張が発生してしまうからです。
【水平面】
矢状面と同じように骨のアライメント評価からASISとPSISを触診します。
次に、正中線を基準として、どちらのASISが前にでているかを触診します。
右のASISが左に比べて前に出ていると仮定します。
その場合、右の骨盤が前に出ているので図のように右骨盤前方回旋(左回旋)となります。

骨盤回旋評価について詳しくはこちら↓
次に股関節の大腿骨(大転子)を触診し、寛骨(骨盤とのアライメント)をみていきます。
まず、大転子の前縁・後縁をつまむように触診します。
次に、左右の大転子がフラットな位置にあるかを確認し、寛骨(骨盤)の回旋を評価します。
評価方法としては、歩行時の歩隔で立ち左右交互に体幹を回旋させます。
その際の骨盤の回旋量の左右差を見ます。
患者例


写真の様に大転子の左右差がない状態で立位骨盤回旋テストを行いました
骨盤が右前方回旋(左回旋)していると評価できます。
CKCでの骨盤(股関節)の回旋は、大腿骨側が動きが少なく、骨盤側が大きく動きます。
そのため、
右(骨盤前方回旋)→股関節外旋位
左(骨盤後方回旋)→股関節内旋位
となります。
さらに筋膜tensionを触診し、誘導してみると、股関節の肢位と同方向に動かしやすさがあります。
ここで、立位で前額面と水平面を合わせて評価してみると、
骨盤後傾(股関節伸展位)・骨盤前方回旋(股関節外旋位)になっている場合があるかと思います。
こういうアライメントの方の多くは、
・大転子(骨頭付近)が、前方(腹側)に突出しているように感じませんか?
これはとても重要な感覚です!
これらをふまえて最後に
股関節伸展機能の評価をします。

写真のように大転子に印をつけ、股関節伸展をし、以下の3つを評価します。
①殿筋群(大臀筋)の出力確認
→大殿筋に力が入っているか
②大腿骨頭(大転子)の動き
→骨頭(大転子)が床方向へ落ち込むように伸展していないか(大転子を触診しながら行う)
ハムストリングスの出力が、殿筋より優位であると落ち込みやすい
③下肢重量感(主観的)
→左右 を比較し、どちらが重く感じるか(骨頭が落ち込む側が重く感じる傾向)
この3点を確認し、股関節が正しく使えているかを評価します
特に③の下肢重量感については、
大腿骨質量中心の近位に付着する大殿筋がうまく機能すると大腿が軽く伸展する感覚となり、
大殿筋機能低下が生じている状態で、ハムストリングスが過度に働くと、骨頭部分が床方向に滑る力(回転力)が生じ、求心位が保たれなくなる結果、股関節伸展運動が重く感じられると考えられます。
つまり、抗重力での股関節伸展運動においては、大殿筋とハムストリングスの出力バランスがとても重要だということがわかるかと思います!
患者例
左(健側)
※反転あり
右(患側)
①右の殿筋の出力低下がみられた
②右の股関節伸展で骨頭の落ち込みがみられ、ベットから大転子までの距離が左に比べて近い
③患者さんの主観では右が重く感じた
(骨頭の求心位が保たれていないため)
ハムストリングス優位により遠位が中心の股関節伸展となり
骨頭の落ち込みがみられると考えられます。
他の筋肉の要因も考えられますが、この評価から
右の股関節前面の筋肉が過活動し、
右股関節伸展出力不全があると考えられます。
さて、
ここまでは評価についてですが
最後にアプローチ方法を2つお話します。
今回アプローチとしては右の骨盤後傾位の改善、股関節外旋位の改善を狙います。
①『後方殿筋群(外旋筋)リリース』
外旋筋をイメージし、1分間ボールやグリッドでほぐします。
写真の角度で前後に転がしながらほぐします。

②『ヒップリフト』
ヒップリフトは臀筋とハムストリングの遠心性収縮の制御と骨盤の前傾位保持機能(股関節屈曲機能)改善を目的とします。

※股関節を曲げた際に前方に詰まり感がある場合には、
大腿近位前面に手を当て、遠位方向に皮膚を誘導しながら、股関節を曲げて(骨盤を前傾)下さい。
ヒップリフトエクササイズ詳しくはこちら↓
【結果】
2週間の治療で股関節の痛みは無くなった。
股関節のつまり感を取り除くことができ、股関節屈曲可動域が改善した。
治療後に骨盤前傾位での姿勢保持が得られ、股関節〜大腿前面筋の緊張緩和も確認できた。
【まとめ】
軸足で踏みこむ際に、骨盤が過度に後傾することにより、股関節前面(大腿直筋)に繰り返し過度な伸張ストレスがかかったのが原因と予測できる。
骨盤回旋、大腿骨回旋運動にて、患側に伸張ストレス増大が確認できた。
患側の骨盤後傾の修正、骨盤と大腿骨のアライメント修正することで股関節前面への負荷を減らすことができた。
ハムストリングス優位で股関節伸展をしているため殿筋群の出力強化が必要であった。
今回は『股関節と骨盤』について解説しました。
これらの評価・アプローチだけでは改善されないものもありますが…
痛みの原因を判断した上で、なぜその部分に痛みが出ているのか、
どんなストレスがかかっているのかを動作から予測する必要があります。
アライメント評価を通じて、動作分析を行い、正しく見極めることが大切です。
股関節の治療で悩む方が少しでも減っていただければ幸いです。
セミナー申し込みはこちらから↓
https://arch-seminar.com/seminar02-form/

株式会社アーチ
磐田市千手堂 アシスト鍼灸整骨院
鍼灸師・柔道整復師
加福 悠人











