【基礎】歩行分析「上半身」
【歩行分析の基礎 上半身を見る】
歩行分析の入り口として必要なポイントの3つ目が上半身です。
上半身も、とても重要なポイントになります。
上半身を診るときに重要なのは「上半身質量中心」です。
上半身の質量中心は、第7胸椎~第9胸椎あたりで、
剣状突起(みぞおち)の付近として考えると分かりやすいかと思います。
この上半身質量中心を覚えると、歩行評価以外にも大変役立つことがあります。
それは、下半身にももちろん同じ質量中心があり、
それと比べて位置関係を診ることで、
どこの筋肉が使われやすいのかという謎が解けてしまうんです。


すると、歩行や動きの評価を行い、治療をするときに大変役立ちますし、
例えばアスリートのケガの原因を探るときにも役立ちます。
これについては、また細かくお話します。
さて、この上半身質量中心を歩行の中で診ていきます。
例えば、膝が痛くて、O脚変形の強い患者さんがいたとしましょう。
痛い膝は右膝です。
想像してください、
歩くたびにラテラルスラスト(膝に体重がかかった時に、外側に「グイッ」と一度押し出されるように動く動きの事)が起こり、なんとなく体を左右に揺らしながら歩いています。
それでも体の幅よりも、膝の方が外に出ていて、とてもつらそうです。
この方の右足が地面につきます。
その時に、その痛い膝の中心(これは正面から見ての「ど真ん中」、後ろから見ての「ど真ん中」で結構です)と、この「みぞおち」を線で結びます。
歩いているときは頭の中で、動画などを見るときは実際に線で結んでみましょう。

この結んだ線は、
1) 膝の中心から内側(右膝より内側)に傾くのか、
2) 垂直(膝と上半身質量中心がまっすぐ)か、
3) 膝の中心から外側(右膝より外に線が傾く)かを診ます。
さて、この中で一番膝にとって何の影響もないのはどれでしょうか?
答えは 2 です。
この状態は、普段重力のもとで暮らしている私たちが、
「重心」という言葉を無視できない環境にいることを意味しています。
この 2 の状態は膝に対して、上の重さが下の土台にまっすぐかかっていることになります。
歩行では、このように患者さんの痛い場所にどんなストレスがかかっているかをこの重心の関係を使って診ることができます。
となると、極端ですが
このO脚の膝の真上まで上半身を揺らして持ってきたとしましょう。
この膝にはストレスはかからなくなるという事です。
実際には、そこまで揺らすことはありませんが、理屈的にはこうなるという事です。
では、大概の膝のO脚変形のある方は、どうなっているかというと、
体を左右に揺らしていますが、1の状態の方が多いです。
こうなると、膝より、上半身の質量中心は正中線に近いので、実は、膝には外に外に押し出されるストレスがかかります。
膝の真上に重心があれば、真下にかかるストレスだけ。
膝よりも内であれば、膝は外に押し出される、
その反対の3だと、膝は内側に押し出される。
1だと、膝の内反(O脚方向)ストレスがかかり、
3だと、膝の外反(X脚方向)へストレスがかかります。
この例は、膝の変形が強い方の話でしたが、
これはどんな膝の痛みの方でも同じように診ることができます。
例えば、膝周囲の痛みに鵞足炎があります。
右の鵞足炎として例えましょう。
この多くは、足を地面に着くたびに先ほどの3のような外反ストレスがかかると、内側が延ばされて痛みを感じるというようなことがあります。
ということは、歩行を診て、右足が地面に着いた瞬間に痛い膝に対して、上半身の質量中心がその膝よりも外にあるかを診ればいいんです。
ということで、基礎を3回に分けて話してきましたが、一往復目にはポイント1の骨盤を診て、二往復目にポイント2の足部、そして、三往復目に上半身の質量中心を診てみましょう。
髙木慎一(たかぎしんいち)【柔道整復師】
Athlete Village浜松代表
アライメント・姿勢・歩行動作を総合的に分析し、その方に必要な
クライアントはパフォーマンスを上げたい小学2年生から、膝の痛