臨床でよくみる「回内足(扁平足)による膝内側の痛み」について
「ランナーの膝痛」の治療、
特に「膝の内側の痛み」で、
「治療後、痛みが改善しても、走ると痛みが戻る」
という経験はありませんか?
中でも、特に明確な外傷がなく痛みを訴えるケースでは
患部だけでなく上半身、股関節、足部アライメントが関与していることが少なくありません。
「患部にどのようなストレスが生じて痛みを発生させているのか?」
そして、「その原因は何か!?」
それを解決するためにも
まずは、正しく評価を行うこと。そして、そこからのアプローチで、
治療を終えても再発しないところまで、身体の機能を改善させることができます。
今回は、実際の臨床ケースを交えながら、
足部アライメントがどのように膝内側の痛みに影響するのかを解説していきます。
1.足部アライメント評価
初めに足部のアライメント評価を確認していきます。
◇前足部(内反/外反)

まずは、前足部の可動域をみる方法ですが、
➀患者さんにベッドに仰向けで寝ていただき、距腿関節およびST関節中間位でMT関節を最大回内させる
②右足部をみる場合は右手の手のひらで踵骨を把持して親指で距骨頭に触れ、左手は中足部を把持する
③左手の中足部を回内方向に誘導しMT関節の回内(回外)の可動域を確認します。
・MT関節の回内可動域がない場合
→ 前足部内反
・MT関節の回内可動域がある場合
→ 前足部外反と評価します
*踵骨の底側面と中足骨の底側面が並行な状態を中間位とします

◇後足部(内反/外反)および後足部角
→ 底背屈中間位で踵骨のシルエットを触診し、内外反を確認します

→ 後方から後足部角(床面対する踵骨の回内/回外)を観察します

◇距骨下関節(ST関節)—(回内/回外)
→ 回内可動域の有無を確認

◇横足根関節(MT関節)—(内転優位/外転優位)

◇リスフラン関節(背屈/底屈)

セミナーではさらに詳しく足部評価も行っております
さて、一括りに回内足といっても様々なパターンがあるのですが、
回内足の典型的なパターンは
・前足部内反
・後足部外反
・MT関節外転(→内転制限)
・リスフラン関節背屈、外転、中足骨外転位
この時ST関節は回内位になります。
ST関節の回内 = 距骨の内旋・底屈 + 踵骨の回内 です。
このST関節が過度に回内することで内側縦アーチが低下してしまいます。
では次に、回内足と鷲足炎の関連性について見ていきましょう。
2.回内足と鵞足炎の関連性について
〈回内足による運動連鎖の影響〉
扁平足や回内足の場合
上行性の運動連鎖では、以下のようなメカニズムが生じます。

(参考文献)
小林寛和ら,スポーツ動作と安定性、関西理学3,49-57,2003
・ST関節の回内 → 下腿遠位の内旋を誘発
・下腿遠位の内旋 → 大腿遠位の内旋(相対的に下腿近位外旋)を誘発し、knee-inが起こる
(knee-in:スクワットやランジ動作等で足首〜股関節を結んだ直線よりも膝が内側へ入る)
・knee-inが続くことで、鵞足部(縫工筋・薄筋・半腱様筋付着部)への牽引ストレスが増加
〈鵞足部への負荷増大要因〉
・上記のような上行性の運動連鎖により、
回内足の影響でknee-inし、鵞足部に付着する筋が持続的に引き伸ばされることで炎症を引き起こす。
・歩行時やランニング時、着地のたびに鵞足腱と内側側副靱帯との間の摩擦を増加させる。
・結果として、慢性的な膝内側部痛(鵞足炎)へと進行する。
(参考文献)
※【松本秀司,スポーツ整形外科学3 下肢のスポーツ外傷・障害,中山書店,2021】より引用
上記の内容を踏まえて、実際の患者さんの症例を見ていきましょう。
3.症例紹介
症例:50代女性 ランニング(マラソン)中の膝内側の痛み
〈主訴〉
・約1か月前から左膝の内側(膝蓋下脂肪体〜鵞足部)に鈍痛がある
・ランニング開始10~20分で痛みが出始める
・ランニング後は歩行時痛も出現するが、翌朝の起床時には痛みなし
・過去に大きな膝のケガ(骨折、靭帯・半月板損傷等)はなし
〈評価・所見〉
◇視診・触診
・内側縦アーチの低下(扁平足傾向)、特に左足で顕著。
・ST関節回内、MT関節外転、リスフラン関節背屈
*実際の足部アライメント

・膝関節の軽度の外反(X脚傾向)。
・膝内側(内側側副靭帯付近)の圧痛あり。
・鵞足(縫工筋・薄筋・半腱様筋付着部)付近の圧痛あり。
◇動作確認、スペシャルテスト
・ランジ動作で膝が内側に倒れ込む(knee-in)※写真➀
・外反ストレステスト伸展位P(-)、軽度屈位P(+)
・片脚立位で内側縦アーチ低下 ※写真②
・歩行のミッドスタンス時に足部の過回内が顕著 ※写真③
写真①(ランジ動作で膝が内側に倒れ込む)

写真②(片脚立位で内側縦アーチ低下)

写真③(歩行のミッドスタンス時に足部の過回内が顕著)

◇特に疑われた病態
・内側側副靭帯のⅠ度損傷
・鵞足炎
以上の点から、今回の症例は
回内足により大腿内旋、下腿外旋の捻れ(相対的に大腿に対し下腿が外旋)が起こり、
左膝内側に牽引ストレスがかかることで痛みが出ているのではないかと推測しました。
〈まとめ〉
上記の症例の患者は、治療計画に基づき
MT関節の内転の可動域を出すことや回内足に対してのインソール作製を行ったことで
膝の痛みが取れ、来院から1ヶ月半後のロゲイニング(約20km)の大会を無事に完走することが出来ました。
今回の症例は、足部が原因で膝関節内側の痛みを引き起こしていたと考えられます。
患者の訴えは膝痛であるが、膝に痛みを発生させている要因はどこなのか、
ストレスがかかってる原因を正しい評価から探し出すことはとても大切なことです。
膝周囲の筋や組織へのアプローチのみでなく、足部や股関節その他、上半身の影響など
多くの要素から痛みの原因を予測する必要があります。
今回お伝えした膝内側に痛みが出てしまう主な原因と足部アライメントの評価方法は、臨床でも役に立つ機会が多いと思いますので、ぜひ治療に取り入れてみてください。
また、今回のような症例に対する評価からアプローチ等も、本セミナーではお伝えしていますので、興味を持たれた先生は是非ご参加ください!!
アスリート鍼灸整骨院 瀬名川店
辻岡 伸也 〈鍼灸師〉












