【靴、インソールを活用しているセラピスト・治療家へ】ハイアーチなのに“靴内側の摩耗”? 構造と機能のズレから読み解く『代償性扁平足』
ハイアーチなのに
“靴内側の摩耗”?
構造と機能のズレから読み解く
『代償性扁平足』
靴内側の摩耗、インソールで内側を高くしても解決しない症例ありませんか?
それは
“構造的ハイアーチ“に隠れた“外反扁平足“を
見逃しているからかもしれません。
“扁平足“で”靴の内側に摩耗がある“ 場合
「靴の内側が摩耗する=内側荷重」
と捉えてアプローチする想像ができますね。
しかし、今回来院された方の足を見てみると(座位)

ハイアーチ
に見えます。
お悩みは『いつも靴の内側が摩耗する』とのこと。
さて、どうしましょうか?
今回のコラムでは
「ハイアーチ様の足部で、なぜ靴の内側が摩耗するのか?」
という臨床で遭遇しやすい矛盾を
実際の例をもとに解説します。
『長く歩いていると下腿外側が張ってくる
いつも靴の内側ばかり減っている』
というお悩みで来られたAさんの例です。
実際に靴を見てみると
・踵の内側が明らかな摩耗
・中敷きが母趾球部で破れている


靴からは、明らかな内側荷重が予測されます。
しかし、
Aさんの足部は
・ハイアーチ様
・母趾球部に胼胝(べんち)あり
・歩行を見ると扁平足様
つまり
座位での荷重下では回外足だが
歩行時は過回内している
ということです。
ここで何が起きているのか分析するためには
足部評価が必要不可欠です。
▼歩行周期はこちら
https://arch-seminar.com/vocabulary/
Aさんの足部を評価してみましょう。
評価するのは3つ
① 距腿関節の背屈可動域
まず確認したいのが、距腿関節の背屈制限です。
踵を床につけたまましゃがめるかを確認します。

◉下までしゃがめない場合
立脚中期(MSt)以降で脛骨の前傾が出ず
距腿関節以外の部位で代償している可能性が考えられます。

つまり、本来は矢状面で進むべき運動が
背屈制限によって他関節の
代償運動へ移行していくということです。
▼背屈制限を支持するモーメントから考える場合はこちら
Aさんは踵をつけたまましゃがめなかったため
距腿関節の背屈可動域制限あり
と評価されます。
② 前足部の可動域
横足根関節を把持し
前足部の回内・回外方向への可動性を評価します。
ここで重要なのは
「後足部に対して前足部がどう位置しているか」
という相対関係です。

写真のように把持し、実際に前足部を回外・回内方向に動かします。
・回内方向へ動く(または回外可動域が乏しい)
→ 前足部外反
・回外方向へ動く(または回内可動域が乏しい)
→ 前足部内反
と判断します。
前足部内反(回内可動域-)が存在していると
荷重時に足底内側を接地させるために
他関節での代償で内側接地を実現させます。
Aさんは
前足部が回外方向へ動くも
回内方向への可動域がなく
前足部内反と評価します。
Aさんのハイアーチ様足部は
この
前足部内反
によって、そう見えているようです。
▼前足部と後足部の動きから偏平足に対する知識アップデートはこちら
③ 第一列リスフラン関節の可動域
楔状骨を把持し
第一中足骨頭を上下方向へ動かします。

・中足骨頭側が上がる → 背屈
・中足骨頭側が下がる → 底屈
と判断します。
第一列が背屈できないと
本来歩行周期のTStで必要な
ウィンドラス機構が機能しません。
Aさんは
第一列のリスフラン関節は底屈位で
背屈可動域が少ないため
ウィンドラス機構が機能していない可能性があります。

▼矢状面から考える足関節背屈制限はこちら
今回のAさんのケースをまとめると
・距腿関節の背屈制限
・前足部内反
・第一列リスフラン関節の底屈固定
によって、歩行時に本来必要な
「前進方向への可動域」
そのすべてが制限されています。

結果として
足部は前進を継続するために
距骨下関節の過回内
を選択します。

ここが重要です。
この距骨下関節の回内代償は
本来の歩行周期LRでの衝撃吸収ではありません。
矢状面での可動域を失った結果として起こる
TSt時の“強制的な内側崩壊”です。
それは一見
「ハイアーチ様足部」
しかし
「機能は代償性扁平足」
という状態なのです。
単なる内側荷重増加ではなく
推進障害が隠れていたという訳ですね。
まとめ
靴の内側が摩耗するという現象に対して
単純に
「内側荷重だから内側を持ち上げる」
だけでは不十分なケースがあります。
特に
靴は
・踵の内側が明らかに摩耗している
・中敷きが母趾球部で破れている
しかし
足部は
・ハイアーチ様
・母趾球部に胼胝(べんち)あり
・歩行を見ると扁平足様
である場合
・距腿関節の背屈可動域
・前足部の可動域
・第一列リスフラン関節の可動域
を評価してみてください。
もし①〜③の制限が見つかったなら
優先順位は
・距腿関節背屈可動域の改善
・第一列リスフラン関節モビライゼーション
・前足部機能改善
になるはずです。
構造上の可動域制限が
歩行時に代償運動として現れていないか
そこまでを評価できると
インソールや治療の精度は大きく変わるかと思います。
正確な評価で原因を追求することは、
患者さんの未来につながります。
このコラムをヒントに
人の数だけある「原因」を探り当て、
目の前の方の治療に活かしてみてはいかがでしょうか。
▼ハイアーチによる足関節の背屈制限と歩行の関係についてはこちら
スポーツラボ鍼整骨院 滝ノ水
柔道整復師 伊藤由貴












