『治療家向け』サッカーにおける内転筋肉離れを「骨盤アライメント・上半身質量中心」から考える
【サッカーにおける内転筋肉離を骨盤アライメント(骨盤挙上・前方回旋)と、上半身質量中心から考える】
普段、治療院での業務をしながら
高校サッカー部のトレーナーとして、現場で選手たちと接しています。
その中で、
特によく遭遇するのが、内転筋の肉離れです。
試合中のスプリントやキック動作で痛める選手もいれば、
違和感を抱えたままプレーを続け、 慢性的に痛みを訴える選手も少なくありません。
「なぜこの選手だけ繰り返すのか?」
「同じ動作なのに、なぜ右だけ痛めるのか?」
こうした疑問に対して、
局所の筋肉や柔軟性だけでは説明がつかない
今回は、①骨盤の前方回旋 ②骨盤の挙上 ③上半身質量中心の3つの観点から
サッカー選手の内転筋肉離れを考察していきます。

①骨盤の前方回旋がつくる股関節伸展ストレス
まずは、骨盤の回旋を見ていきましょう。
アライメントを確認し、どちらの骨盤が前方回旋か評価をします。
骨盤の前方回旋側は、股関節伸展位になります。
これから姿勢評価をはじめる先生が診るべき3つのポイントはこちら
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仮に右骨盤前方回旋の場合、
[右前方回旋](=骨盤の左回旋)

右の長内転筋や大内転筋上部は短縮された状態にあり、
特にインサイドキックの振り上げ脚や方向転換などの
「伸展+外転+外旋」動作
アライメントの影響で、短縮していた内転筋群が強く伸ばされながら力を入れて加速しようとする
=遠心性収縮を強要されます。
遠心性収縮は、
筋肉が伸びながら力を発揮している状態です。
これが強く、かつ急激に起こると、
内転筋の近位部(恥骨付着部付近)に
過剰な牽引力が加わり、肉離れを起こしやすい状態になります。
これが骨盤前方回旋側に起こる内転筋の肉離れの要因です。
②骨盤の挙上が加えるストレス
骨盤の挙上とは、立位アライメントで
片側の腸骨稜が高位に触診される場合を指します
右が高い場合は、右骨盤挙上位となります。
この骨盤の高低差も内転筋の肉離れに関係してきます。
例えば、右の骨盤が挙上している場合
右の骨盤が上がることで、
高位側 右:股関節内転位傾向
低位側 左:股関節外転位傾向
と評価が出来ます
股関節が内転位の状態では、
内転筋群のハイスティフネス(短縮位)が考えられます。
その状態からスポーツ動作(キック、切り返し、ストップ動作など)で、
さらに急激な遠心性のストレスがかかることにより
挙上側である右の内転筋に肉離れが起きやすい状態が出来上がります。
3.上半身質量中心(U-COG)の偏位がもたらす荷重バランスの崩れ

上半身質量中心(U-COG)とは、
その名の通り上半身重心のことを指し、
肩甲骨下縁付の近第7-9胸椎レベルに位置するとされています。
このU-COGの位置は、下肢の荷重バランスと筋への負担に大きく影響します。

入谷誠:足底板の現在,Sports medicine,2008,No102より引用
画像の写真は、U-COGが右側へ偏位しています。
立脚時、骨盤に対して体幹が倒れる、デュシェンヌと言われる姿勢です
力学的ストレスは、
外部股関節外転モーメントに対して
内部股関節内転モーメントが働き内転筋の出力が増加します。
日常生活では、上記の写真ほど体幹が傾き内転筋へストレスをかけることは多くないですが、
スポーツ動作ではこのような姿勢でのストレスがかかることにより
内転筋の肉離れに繋がることがあります。
例としては、サッカーのゴールキーパーが
右骨盤挙上位(右股関節内転位)から、
さらに右側に来たボールに横飛びをすると右の内転筋が急激に伸ばされ
肉離れするのを想像できると思います。

【臨床でのポイント】
これらのポイントをふまえて
内転筋肉離れを繰り返す選手では、
患部の治療とともに、骨盤アライメントやU-COGへのアプローチが重要な要素となります。
骨盤挙上側は股関節内転位で、
内転筋群は短縮傾向となり遠心性収縮がしにくくなります。
股関節外転筋である中殿筋は伸張された状態で、
求心性収縮がしにくくなります。
そのため、内転筋のリリースをしてから
遠心性収縮を入れるトレーニングを行い、
中殿筋はシザースなど求心性収縮を入れるトレーニングを行います。
逆に下制側は、中殿筋のリリースと遠心性収縮、内転筋求心性収縮を行います。
U-COGが右の場合は、右の前鋸筋は短縮傾向となりますので
右の前鋸筋のリリースを行い、サイドベントなどで遠心性収縮を入れ
アライメント修正を行います。
【まとめ】
普段のアライメントに遠心性のストレスや
上半身質量中心の偏位が加わることで、
内転筋肉離れのリスクはさらに高まります。
再発を防ぐためには、
局所治療だけでなく、
骨盤前方回旋・骨盤挙上・上半身質量中心
の評価とアプローチが重要です。
サッカー選手に多い「片側ばかりの内転筋損傷」は、
単に筋の硬さだけでなく
その背景に
骨盤アライメントと質量中心のアンバランスが隠れているかもしれません。
【アーチ鍼灸整骨院】
鍼灸師:宮腰茜











