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歩行時の足部

治療の邪魔をする靴2

前回「治療の邪魔をする靴」という記事で、靴の機能について少しお話しました。

今回は、その続きです。

前回の記事はこちら↓

治療の邪魔をする靴

 

前回の「ヒールカウンター」に続き、今日は「シャンク」というものに着目していきましょう。

 

まず、シャンクとは一体なんなのか?ということですが。

シャンクとは、靴底にある固い材料のことです。

 

例えば、こんな感じや

 

 

 

 

 

 

こんな感じなど、

 

ちょうど靴底の真ん中あたりにある固い部分です。

各メーカーさんや種類によって、材質や硬さは様々です。

中には、外からは見えなくても底の材料の中に入っているものもあり

ます。

(*ちなみに、写真の2足はとても良い靴で、よく患者さんにオススメしている靴です。またの機会にご紹介します。)

 

 

このシャンクは、元々は鉄の材料で、現在もいわゆる男性の革靴や女性のパンプスなどに使われています。実際には、靴底の中に入っているため外からは見えません。

 

〈鉄材のシャンク〉

 

 

 

 

 

 

 

シャンクの機能は靴底がグニャっと曲がらないようにし、靴の形成を保つことです。

 

元々は鉄の材料ですが、現在はウォーキングシューズやスポーツシューズなど、素材や形がどんどん進化しています。

 

そして、その素材を中に埋め込むのではなく、靴底自体にその材料が使われる、「シャンクソール」と呼ばれる形になっています。

特に、ランニングシューズをはじめ各種競技用シューズでは、軽量で丈夫な素材が使われているものが多く存在します。

 

 

しかし、このシャンクですが。。。

 

冒頭の2枚の写真のようにしっかりとしたものもあれば、そうでないもの。ものによっては、入っていないものまであります。

 

 

そして、ここからが私たち治療する側の人間が無視できない部分になります。

 

 

このシャンクをどのように捉え、治療をする際に頭の片隅に置いておくべきなのか。

もちろん、「先生の治療の邪魔をしないように」という観点からです。

 

 

今日は、このお話をしていきたいと思います。

 

 

まず、シャンクが「入っている靴」と「入っていない靴」の大きな違いを2つ説明します。

 

一つ目は、靴底の曲がる部分です。

 

下の写真を見てください。左はしっかりとしたシャンクが入っているもので、右はシャンクが入っていないものです。

 

 

それぞれ、靴底の曲がる部分の違いは一目瞭然です。

 

この時、とても大事になるのが、MP関節部分でしっかりと靴底が曲がるのか?

ということです。

 

このMP関節で曲がる部分を「返し」と呼びます。

この靴は「返し」がいい。「返し」が悪い。などと表現されます。

 

歩行中、MSt後半からTStにかけて、MP関節が大きく伸展してきます。その時に、靴底が同じように曲がる靴とそうでない靴では、どちらがよりスムーズに前方への体重移動ができるのか、なんとなく想像できると思います。

 

特に、シャンクがしっかりしている靴では、MP関節部分の曲がりを柔らかくし「返し」をよくしている靴が多くあります。

 

MP関節部分で曲がらない靴、靴底全体が硬く「返し」自体があまりない靴などは、MP関節の動きを阻害する可能性がでてきます。

 

そして、サイズが合っていない靴の場合もそのようなことが考えられます。サイズの合っていない靴を履いてしまうと、MP関節と「返し」の部分が合わなくなるため、それが歩行に影響を与えてしまうことが考えられます。

 

 

さて、問題はここからです。

 

前方に体重が移動しMP関節が伸展しようとしている動き。つまり矢状面の方向に体が移動しようとしている動きが阻害されると、前額面上の動きや水平面上の動きが出やすくなります。

それが、歩行中の足部の動きに影響を及ぼします。

 

例えば、蹴り出す時に母趾側の内側に足が抜けたり、あるいは小趾側の外側に足が抜けたりという感じです。

 

そして、さらに。

 

TStの際、MP関節の伸展が阻害されれば、それが股関節の伸展に影響し、そこから骨盤の回旋にまで影響をする、というふうに考えられます。

 

 

 

さて次は、シャンクの入っている靴と入っていない靴の大きな違いの2つ目です。

 

先程は、靴を横から見て靴底の曲がり具合を見ました。

今度は、縦から見てみましょう。

 

下の写真を見て下さい。

 

靴の前足部側と後足部側を持って、強く捻じった時の写真です。

 

 

 

もう、どちらがシャンクがしっかりしているか、先生にはお分かりでしょう。

 

そうです。

 

左の写真です。

 

シャンクがない靴は、靴全体の構造も柔らかくなり写真のように捻じれやすくなります。

 

さて、これを歩行中の足部に照らし合わせて考えてみましょう。

 

ICから足底全体が接地し荷重がかかり始めると、徐々にSTは回内してきます。

 

つまり、前足部は地面に固定され、後足部が回内してくる形です。

 

     〈後足部回内(左)と通常の足(右)〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、後足部の回内が過度に起こることが原因となる足部障害がたくさんあることは先生もご存知かと思います。

 

過度な回内は、「一歩」の中での足底の接地時間が長くなります。

 

下の写真は踵が上がる瞬間に画像を止めたものです。

 

左の写真の方が、STが回内しているのが分かると思います。

 

 

ICの後、荷重と共にSTは回内し、その後TStにかけて地面を蹴りだすためにSTは回外します。この時に過度に回内している場合は足底が接地している時間が延長します。

 

ものすごく簡単に言うと、「土踏まずがつぶれている時間が長い」、ということです。

 

足底の接地時間が延長すれば、STの回内に伴う下腿の内旋モーメントが大きくなります。

すると膝関節は屈曲が優位になるため、股関節や他部位の機能次第では膝関節伸展機構障害の原因にもなりえます。

そこに付け加えMP関節の伸展まで阻害されれば骨盤の回旋量が変化し、さらに膝への影響が考えられるようになります。(歩行時の急所「歩行時の骨盤」をご参照ください)

こちら→歩行時の骨盤

 

というように、シャンクの違いにより、前額面上での足部の動きにも影響を及ぼす、ということがお分かりいただけたかと思います。

 

このシャンクと前回のヒールカウンターが合わさることで、前回の記事でご紹介したような写真の違いが出てきます。

 

〈前回の記事の写真〉

 

もちろん、回内方向だけではなく、回外方向への影響も考えなければいけませんが。靴の底、特にランニングシューズなどは、母趾方向への体重移動を誘導するような作りになっているため、前額面上の動きでは、より内側、つまり過度な回内が見られる時に影響されやすいようです。

 

今、お話ししてきたことは、上の写真のような、ちょっとした違いかもしれませんが、それが一歩だけの問題ではなく、何千歩、何万歩、となってくれば、少なからず体に影響を及ぼしている、と考えられるのではないでしょうか。

 

 

もちろん、シャンクのない靴、靴底が柔らかい靴が「絶対ダメだ」と言っているわけではありません。それはそれで、

・その人本来の足の動きが阻害されない。

・あるいは、余分な材料を使わないことで靴が軽量になる。

というような利点もあります。

 

しかし、何かしら痛みや身体のトラブルに悩む患者さんに接する私たちは、その方にとって「今、何が一番必要か」を考えなければいけません。

 

その選択のための一つの知識だと思って頂ければ幸いです。

 

松本実生(まつもとじつお)【鍼灸師】
株式会社アーチ代表取締役
足と靴のGAIT代表

日本で唯一、靴を作れる鍼灸師。
現在は、足の痛みに特化した靴・インソールの専門店「GAIT」の代表も務める。
患者さんの痛みはどこから来ているのか?と疑問を抱いたときに、インソールと 出会い、その土台である靴の原因にも目を向け、靴のフィッテングはも ちろ ん、自身でオーダーメイドの靴も製作するようになる。
患者の足部形態、歩行動作を分析し、その方に合った靴をピンポイントで選択す る能力は業界でも随一。今まで行ってきたセラピストとしての知識とト レー ナーとしての豊富な経験を基に、一般の方からアスリートの競技用シューズまで 幅広く対応しその方に合った靴、インソールの提供、製作をしてい る。

 

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