治療の邪魔をする靴
先生の治療の足を引っ張るもの。
先生の知らないところで治療効果を下げようとするもの。
それが、、、
「靴」です。
靴は、誰もが使う「道具」です。
そんな道具である靴が、「選び方」、「使い方」を間違えてしまうだけで、大きく身体に影響し「治療効果を阻害するもの」、になってしまいます。
しかし、「選び方」、「使い方」を正しく行えば、治療の補助をしてくれ、時にはそれ自体が治療になってしまうこともあります。
「靴」という一つの「道具」が、先生の治療にとって良い「道具」になるように、このサイト内ではお話していきます。
これまで、独自に考えだした「靴の機能特性が与える足部・身体への影響」について、医療関係者向けのセミナーを数多く行ってきました。
そんなセミナーでお話してきた内容を、これから余すことなくご紹介していくつもりです。
興味のある先生は、是非お楽しみにしてください。
ところで、最初の写真ですが、、、
右と左の写真で違うところがあることにお気付きでしょうか?
分かりやすいのは以下の3つです
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後足部の傾き(ST回内)
右の写真より左の写真の方が、ST回内が大きくなっています。
*ST回内の詳しい説明はこちらからどうぞ↓
距骨下関節の基礎
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下腿の外方への傾斜
右の写真より左の写真の方が下腿が外方に少し傾斜しています。
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下腿三頭筋の筋収縮
右の写真の方が下腿三頭筋の筋収縮がしっかりと見られるのではないでしょうか。
さて、ここからいろんなことが考えられます。
例えば、地面を蹴りだす時はSTが回外し、足部が強固になることで力強く蹴り出せるようになります。しかし、この時にSTが回内していてはしっかりと蹴り出せません。
左の写真は大きく回内しています。
さらにそのまま踵が離れる瞬間でも、まだ回内しています。
その写真がこちら、
これでは回外筋には負荷が大きくかかりますし、後脛骨筋のように足関節底屈、内反の作用がある筋は、内反の作用ばかりが強いられ、底屈の作用が弱くなってしまいます。
同時に他の底屈筋も弱化していく要因にもなるでしょう。
右の写真では左に比べ、より中間位に近づき(本来であればもう少し回外したいところですが)しっかりと前足部に体重がかかりやすくなることで下腿三頭筋の出力が出るようになります。
蹴り出しの状態がさらに骨盤の回旋量に反映されますから、そこからまた何かしらの影響を受けることになります。(靴による骨盤の回旋量との関係はまた後日お話します。)
骨盤と大腿骨の関係を復習する↓
歩行時の膝関節
これだけでも、色々と痛みの原因になってきそうですね。
そして、これらの違いが靴の違いだけでおきているとすれば、、、
この2枚の写真ですが。
ただ、靴を履き替えただけです。
他に何もしていません。
両方ともランニングシューズの中の「レーシングシューズ」というものです。(それぞれのランニングシューズの種類、特徴と身体への影響についてもまたお話ししていきます。)
そのレーシングシューズの種類を変えただけです。
治療室で「ん~、よし。いいね。じゃ明日、走ってみようか」
次の日の部活中、左の写真を2、3時間続けられた時の恐怖。。。
想像したくもありませんね。
そんなことを避けるためにこのサイトでは、靴のお話もしていきます。
では、まず何から注意したらいいか?
たくさんあるので、一つずつご紹介していきます。
まずは、「ヒールカウンター」というものに着目します。
ヒールカウンターとは、靴のかかと部分に入っている芯材です。
このヒールカウンターは、ICから特にMstまで後足部を支えてくれる役割をもっています。
靴にはここが硬いものや柔らかいもの、色々あります。
ポイントは、
とにかくここが硬いものがいいということです。
(ただし、糖尿病など「靴擦れ」に注意が必要な場合はこの限りではありません)
欲を言えば硬くて長い方がいいです。
長いとは、踵から内側縦アーチの部分までヒールカウンターが伸びているものです。
そうなると、後足部から内側縦アーチ部分まで支えてくれるため、歩行中の足の動きがより前方に運びやすくなります。
前方への動きを邪魔するのは特に前額面上の動きですから、そこをまずこのヒールカウンターが支えてくれるというわけです。
ご年配の方やお子さんの靴は、ついついここが柔らかいものを選びがちですが、硬い方が歩行を助けてくれます。
アスリートも同じです。
例えば、サッカーのスパイク。
このスパイクはMIZUNOのモレリアウェーブというスパイクですが、素晴らしいヒールカウンターが内蔵されています。
こちらはアシックスのGEL Hoopというバッシュです。こちらも、とてもしっかりしたヒールカウンターが搭載されています。普段よく患者さんにお勧めするバッシュです。
実は、足幅や足部形態、歩行様態に合わせ競技シューズを選ぶと、それだけで症状が軽くなることもよくあるんです。
(シューズのフィッティングに関しては、追々お話ししていきますね)
ということで、
まずはヒールカウンターに着目してみました。
このヒールカウンターと、次にご紹介する「シャンク」というものを考えて靴を選ぶと、最初に見ていただいた写真のように歩行や走行に大きな差が出てきます。
「シャンク」については次に靴の記事をアップするときにご紹介します。
それでは、
早速、患者さんの靴。かかと部分を触ってみてください。
柔らかかったら、硬い靴に変えることをお勧めしてみてはいかがでしょうか。
「ここが硬い方が足の横ブレを防いでくれるから歩きやすくなるんですよ」
先生のこの一言で患者さんも納得してくれることでしょう。
ぜひ、靴のチェックも評価の一つにしてみてください。
ちなみにわたくし。
靴を見るときは、最初にかかとを触って、そこが柔らかかったら、もうそれ以上は見ません。。。
松本実生(まつもとじつお)【鍼灸師】
株式会社アーチ代表取締役
足と靴のGAIT代表
日本で唯一、靴を作れる鍼灸師。
現在は、足の痛みに特化した靴・インソールの専門店「GAIT」
患者さんの痛みはどこから来ているのか?と疑問を抱いたときに、
患者の足部形態、歩行動作を分析し、その方に合った靴をピンポイ