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歩行時の足部

腸脛靭帯炎と足部のつながりについて

【腸脛靭帯炎と足部のつながりについて】     

 

腸脛靭帯炎。別名ランナーズニー。

 

マラソンなど長距離を走るランナーにみられることが多い症状です。

 

2月、3月と多くのマラソン大会が全国各地で開催され、練習や本番で膝を痛めてしまった方を診られた先生も多いのではないでしょうか。

 

今回は腸脛靭帯炎と足部のつながりについてお話していきます。

 

 

《腸脛靭帯炎とは》

 

腸脛靭帯(ITB)は大腿筋膜張筋と大臀筋の付着部ならびに腸骨稜を起始とし、脛骨Gerdy結節に付着します。

 

ITBは膝関節伸展位では大腿骨外側上顆(LFE)の前方に位置していますが、膝の屈曲に伴い緊張を増大させ、LFEを乗り越え後方に移動していきます。

 

このITBがLFE上に位置するときにITBがLFEを圧迫し、ランニングなど膝の屈伸運動を頻発することで腸脛靭帯炎が発症します。

 

 

 

JCHO東京山手メディカルセンター 腸脛靱帯炎(ランナー膝)より画像引用

 

 

 

 

 

 

ITBは大腿筋膜張筋と大臀筋から付着しているため両筋が短縮してしまうと緊張が増してしまいます。

 

いかにITBの過緊張を抑え、LFEとの圧迫を軽減することが症状改善のポイントになります。

 

ITBなど大腿外側組織がハイモーメントになる原因は様々です。

 

・上半身質量中心の変位

 

・骨盤の側方sway

 

・膝の外側スラスト

 

・足部の外側荷重

 

今回はこの中から足部の外側荷重に着目して考えていきたいと思います。

 

 

骨盤に着目した大腿外側組織の張り感についてはこちらをご覧ください。

 

 

 

外側荷重になりやすい足部は2パターンあります。

 

①前足部外反でST関節回外代償パターン

 

②後足部内反で第1Lis関節底屈拘縮パターン

 

 

 

①前足部外反でST関節回外代償パターン

 

 

前足部外反は横足根関節(MT関節)が回内可動域を有している足です。

その前足部外反でも、特にこのST関節回外代償パターンになるのは、

MT関節が回内位となり、回外可動域が少ない場合、ST関節回外代償パターンを呈することが多いです。

 

D5セミナーより画像引用

 

 

つまり、MT関節回外可動域が少なく、回内位にあるので、

踵骨と母趾だけが地面につき、小趾が地面についていないままでは前方へ進むのは難しいためMstでST関節回外させることで小趾を接地します。

 

*この時、MT関節回外の動きがある場合はST関節回外代償せず、小趾を接地してきます。

 

ST回外すると距骨は背屈、外旋し、距骨の外旋によって下腿も連動して動くため外旋していきます。

 

しかし、このまま荷重(足関節背屈)させていこうとしても上手く背屈できません。

 

なぜなら、足関節背屈には距骨の底屈、内旋、下腿の内旋が必要だからです。

 

この場合、下腿をさらに外旋、そして外方傾斜させることで背屈を代償します。

 

この下腿の外旋、外方傾斜、後傾がおこり、膝内反ストレスが増大することで膝外側支持機構として働くITBの緊張が高まります。

 

 

②後足部内反で第1Lis関節底屈拘縮パターン

 

このパターンは足関節内反捻挫後に治療をせずに放置されたままの例が多いように感じます。

 

また、競技でいえばサッカーをしている方に多くみられる足ではないでしょうか。

 

この足はST関節回外でST関節回内の動きがないためICで踵骨外側で接地した後、小趾から地面につきます。

 

そこから荷重していき母趾を地面につけるために第1Lis関節を底屈させます。

 

この動きが繰り返されると第1Lis関節底屈拘縮となり、MP関節が伸展位となりやすい。

 

*この場合のMP伸展は通常の中足骨に対して基節骨が背屈するものではなく、基節骨に対して中足骨頭が下に下がっていくケースが多い印象です。

 

そのため、足底筋膜は短縮しており踵離地時に足部は回外しやすいので母趾で蹴り出せず、外側荷重になりやすくなります。

 

足部から下腿への上行性の運動連鎖は①と同じようになります。

 

 

ここまで2パターンの外側荷重による腸脛靭帯炎になりやすい足部をお話してきましたが外側荷重ではなく腸脛靭帯炎になりうる足部のアライメントについても少しだけ触れておきます。

 

 

③前足部内反(MT関節回内の動きなし)のST関節回内代償パターンです。

 

前足部内反の足はMT関節が回外位になり、回内可動域制限を有している足です。

D5セミナーより画像引用

 

前足部内反はICで踵骨から接地した後、小趾が地面につきます。

 

そこからMstにかけて母趾をつけるためにMT関節回内しようとしますが動きがないためST関節回内代償し、母趾をつけにいきます。

 

ST関節回内に伴い、距骨は底屈、内旋し、下腿も連動して動くため下腿は内旋します。

 

この時に注意しなければいけないのは下腿全体で内旋しないということです。

 

下腿遠位はST関節回内でアーチをつぶすため内旋しますが下腿近位はバランスを保つために外旋し、外方傾斜させます。

 

大腿の遠位は相対的に内旋となります。

 

コラム「シンスプリントと距骨下関節回内について」より画像引用

 

この時にITBにもストレスがかかりますが、①、②のパターンとは異なるストレスがかかります。

 

⓵・⓶は下腿外方傾斜で膝内反増大による伸張ストレスでした。

 

⓷は下腿近位外旋、大腿遠位内旋による回旋ストレスがかかります。

 

 

今回は腸脛靭帯炎になりうる足部のパターンを3つお話しました。

 

足部だけでもこれだけパターンがあり、途中でお話したような上半身質量中心や骨盤による影響など治療をするうえで考えなければいけないことはたくさんあります。

 

姿勢や歩行動作を見て評価することで何が原因で痛みが出ているのかを考えられ、痛みの改善、再発予防へと繋げられるのではないでしょうか。

 

 

 

西島勇気【鍼灸師・アスレティックトレーナー】

 

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