サッカーキック時の足根洞痛の考え方とアプローチ
「サッカーキック時の足根洞部痛の考え方とアプローチ」
今回は、慢性的な痛みが続きやすい足根洞症候群について考え、臨床の中で有効的だったアプローチについてお話ししていきます。
足根洞症候群は足首の外側、距骨と踵骨の間のくぼみ(足根洞)、外果周囲に長期にわたり歩行時痛を訴え、圧痛を認めます。
足関節内反強制で起こりやすい外側側副靭帯損傷とは異なり、距骨前方引き出しなどの足関節不安定性が顕著にないにもかかわらず、痛みがあるのが特徴です。
足根洞症候群で多いのが靭帯損傷、断裂を伴う足関節捻挫の既往があるが、治療をしてこなかったパターンです。
特に内反捻挫をし、前距腓靭帯の損傷により、靭帯での制御ができず距骨が前方方向へ動きやすくなる。
それにより、距骨は過度に内旋し、捻挫後の足部で多い扁平足タイプになる。
距骨が過度に内旋しているため、扁平足でも足関節の背屈制限(不良)が生じ、足根洞部でインピンジメントし、圧縮ストレスがかかることで痛みが生じる。
捻挫後に扁平足になるパターンの足根洞症候群の考え方はこちらのコラムをチェックしてみてください。
ここから本題に入りますが、今回は扁平足のパターンではなく、サッカーをしている方に多いハイアーチタイプのキック時の足根洞部痛についてお話ししていきます。
*ここでいうサッカーのキックはインサイドやインステップではなく、より足部の外返しの動きが強く、痛みの訴えも多いインフロントキックとしてお話ししていきます。
そもそも、外返し*という動きは
・距骨下関節の回内
・横足根関節の外転
・距腿関節の背屈の複合運動の結果によるものです。
*関節可動域表示ならびに測定法 、2022 年 4 月改訂以前の用語を使用しています。
それを踏まえた上でハイアーチに多い足のアライメントをみると
・距骨下(ST)関節、回外
・横足根(MT)関節、内転・回内
・距骨外旋、背屈
・下腿外旋
これをみても外返しの動きと真逆なためキック時の動きに制限が出てしまうと考えられます。
さらに、ハイアーチ+背屈制限による外側荷重位は立位や歩行時に足関節前外側に外側方向への伸長ストレスがかかります。
そうなることで足根洞内の軟部組織の炎症や肥厚が生じ、疼痛や神経症などの足根洞部痛の症状が発症します。
足根洞症候群は扁平足により、足根洞部がつぶされ圧縮ストレスにより痛みが出るものが多いですが、重度の内反捻挫の既往があり、過度に距骨下関節回外した場合、ハイアーチで外側荷重位が続き、足根洞部に伸長ストレスがかかり痛みが出ることもあります。
したがって、来られた患者さんの足根洞部痛は、どちらのストレスがかかって痛みが出ているのか考える必要があります。
ここからはさらに距骨下関節、横足根関節、距腿関節に分けて考え方とアプローチをお話しします。
・距骨下関節
距骨下関節回内には踵骨の回内の動きが必要です。
長い期間、距骨下関節が回外していると下の画像のような骨の隆起ができてきます。

D-5セミナー資料より引用
これはハグルンド変形といい、踵骨の後上方が突出、骨肥大するものです。
足根洞症候群のように長期間、痛みがあり、距骨下関節回外位でハイアーチの方は踵骨の変形が見られることが多いため、足部を触診する際にチェックしておくといいです。
踵骨の回内を促すアプローチとしては距骨下関節回外位により、短縮が考えられる屈筋支帯をリリースし、踵骨の回内を誘導するのがおすすめです。


距骨下関節についてもっと知りたい方はこちらのコラムをチェックしてみてください。
・横足根関節
横足根関節の外転には距骨の底屈、内旋の動きが必要です。
そのためには横足根関節内転、回内位により、短縮している距舟関節内側をリリースし、外転時に距舟関節内側が離開できるようにすることが重要です。
さらに、踵骨と立方骨の関係をみていきます。
距骨下関節回外時は踵骨が回外します。この時(荷重位において)、立方骨は回内方向に動きます。
立方骨は止まったままで踵骨が回外することで相対的に回内していると考えても構いません。
この踵骨の回外位と立方骨の回内位は骨性のロック状態となり、足部の剛性を高めます

片寄正樹,足部・足関節理学療法マネジメント,株式会社メジカルビュー社,2018
ハイアーチの方で色々なアプローチをしても背屈の動きを確認した時に骨で止まっているなと感じる時はありませんか?
骨性のロックした肢位で、拘縮している状態かもしれません。
そのためには、踵立方関節の骨性ロック肢位での拘縮を解消し、立方骨が回内、回外方向にスムーズに動くことが大事になります。
アプローチとしては舟状骨をおさえたまま立方骨が回内、回外方向に動くか確認し、可動域に制限がある方向に誘導しながら動かすことがおすすめです。
捻挫後の横足根関節についてはこちらのコラムをチェックしてみてください。
・距腿関節
距腿関節の背屈はここまでの横足根関節での距骨の底屈、内旋の動きが出て、それに伴う下腿の内旋の可動域があるかを確認します。
下腿内旋可動域は腓骨上にある長腓骨筋、腓骨・脛骨間にある長趾伸筋、前脛骨筋が内旋方向に動くかを確認していきます。
アプローチとしては、下腿近位から遠位にかけて皮膚、浅筋膜の層で内旋の動きが出ない場所をリリースし、内旋方向に誘導していきます。

距腿関節でもう一つ重要なのが腓骨の動きをみることです。
ハイアーチで距骨下関節回外位の方の場合、腓骨が下方に偏位していることが多いです。
距腿関節の背屈可動域を出したい場合、腓骨の挙上が必要になります。

D1セミナー資料より引用
下腿内旋可動域を出すときと同じように
腓骨の近位から遠位にかけて皮膚、浅筋膜の動きが少ない部分をリリースし、腓骨の挙上運動を誘導します。
ここまでハイアーチの方のサッカーキック時の足根洞部痛について距骨下関節、横足根関節、距腿関節に分けて考え方とアプローチをお話ししてきました。
ハイアーチの方のキック時の痛みをなくすためには足関節の外返しの動きが必要であり、お伝えしてきた距骨下関節、横足根関節、距腿関節のどの関節の動きを出す必要があるのか患者さんに合わせて対応することが重要です。
痛みは落ちてきたがすっきりと治らないという同じ症状で悩まれている先生の少しでも参考になれればと思います。
アスリート鍼灸整骨院 袋井
西島 勇気 【鍼灸師、アスレティックトレーナー】











