「繰り返すシンスプリントの診かた」回外足と根本原因
シンスプリントは、ほとんどの先生が数多く直面するスポーツ障害のひとつでしょう。
治療後には、改善が見られても練習を再開するとまた痛みが出てくる、、、
結局、何か月と違和感が強く残ってしまい、完治させることができない。そんな症例に頭を悩ませた事はないでしょうか?
・患部のマッサージとストレッチで確かに痛みは緩解する。
・休めば痛くなくなる。
ただ使い過ぎているだけなのであれば、これで治るんですよね。
でも、練習のたびに何度も何度も繰り返す。
なぜか同じ練習量をこなしているはずのチームメイトはそうじゃない。
それは、
シンスプリントの原因は単なる使い過ぎではなく、姿勢や足部のアライメント、身体の使い方が問題だからです。
ここにアプローチをしないと、症状を繰り返すループから抜け出せません。
本稿では、根本からシンスプリントを治すべく、
難治性のシンスプリントの原因となる力学的ストレスに着目し
見過ごされがち、にもかかわらず
疲労骨折など重症化してしまいやすい「回外足」パターンのアライメント、
それに伴う歩行時の動きとモーメントに焦点を置いて話をしていきます。
これを理解しているかどうかで臨床が大きく変わってくるかと思います。
【目次】
・シンスプリントはどんな疾患なのか
・シンスプリントが起こりやすいアライメント
・アライメントに伴って起こりやすい歩行動作と力学的モーメント
・力学的モーメントから考えるシンスプリントを発症する機序
◇『シンスプリントとはどんな疾患なのか』
まずは、シンスプリントについて再確認しておきましょう。
シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)とは、
ご存じの通り、脛骨内側に痛みが出るスポーツ障害です。
日本整形外科スポーツ医学会によると
「運動時および運動後に脛骨中央から遠位1/3の内側後方を中心に広範囲に疼痛を有する過労性障害」
とされています。
疼痛部位には深部筋膜や長趾屈筋が付着しており、
長趾屈筋の過収縮による後脛骨筋との交差部での滑走不全や深部筋膜への過剰な牽引ストレスが原因と指摘されています。
また、脛骨疲労骨折に移行することもある疾患です。
疲労骨折は2種類に分類され、
走行動作で脛骨内側近位1/3・遠位⅓に起こる「疾走型」
跳躍動作でのストレスで脛骨中⅓で起こる「跳躍型」
の2つの型に分類されています。
これらの部位が筋の牽引、骨の捻転、骨への圧迫・引張などのストレスを繰り返し受けることで、疲労骨折に至ると考えられています。


◇『シンスプリントが起こりやすいアライメント』
シンスプリントが起こりやすい特徴的なアライメントは、大きく分けて2つあります。
それが「回内型(扁平足)」と「回外型(ハイアーチ)」です。
より多く見られるのは回内パターンで、扁平足傾向の強いアライメントを呈します。
アーチの潰れによって、長趾屈筋や後脛骨筋が引き伸ばされ、筋交差部に滑走不全が起こってしまうというタイプです。
今回は、
比較的例は少ないですが、もう一つの
脛骨への圧迫・引張ストレスが大きく、脛骨の疲労骨折に移行してしまいやすい「回外パターン」
に焦点を当てて、考察していきます。
回外パターンのアライメントは
【足部】 後足部-内反
ST関節-回外
前足部-外反
MT関節-内転
リスフラン関節-底屈・回内
内側縦アーチ-高い
【下腿】 外旋(外方傾斜)



というのが典型例となります。
ではなぜこのアライメントが脛骨にこれほどの強いストレスを与えるのでしょう?
その答えは歩行動作の中にあります。
◇『アライメントに伴って起こりやすい歩行動作と力学的モーメント』
回外パターンでポイントになるのは
⒈前足部外反
⒉リスフラン関節底屈位
この2つです。
⒈前足部外反
→ショパール関節が回内している状態(=ショパール関節回内拘縮)
⒉リスフラン関節底屈位
→足部を内側から見てリスフラン関節を背屈方向に動かしたとき、その可動性が乏しい状態
詳しい足部の評価の仕方に関しては前に別のコラムでご紹介していますので、そちらをご覧ください。
https://arch-seminar.com/gaitanalysis/歩行時の足部/リスフラン関節の影響によって起こる扁平足、ハ/
↓↓↓↓↓↓↓↓
歩行中にこの2つのポイントがどのように関わってくることで脛骨へ大きな圧迫・引張ストレスが加わるのかを関節モーメントの視点から見ていきましょう
ご存じの通り、歩行には歩行周期が存在し、
そのフェーズによってかかる力学的関節モーメントの大きさや方向は違ってきます。
歩行周期のうち、地面からの反力で影響が出やすい
LR(ローディングレスポンス)
MS(ミッドスタンス)
TSt(ターミナルスタンス)
のフェーズで考えます。
歩行周期についてはこちらから
→ https://arch-seminar.com/vocabulary/
LRでは
つま先まで接地し、荷重していきますが
さて、ここで着目するのは「前足部外反」の場合です。

前足部に荷重をかけていく際、ショパール関節が回内位にあるため(=前足部外反)
足底面を接地しようとするとそのままでは小趾が浮き上がってしまいます。
そこで小趾を接地するために足部ではST関節回外方向に動かす代償動作を行い足裏全体で接地させようとします。
その動きによって、距骨と下腿が外旋に誘導され、下腿は外への出っ張り(外方傾斜)が強くなります。


さらにMSに向かうにつれて、この現象は大きくみられるようになります。
そしてMS
片脚立位の状態になりますね。LRで起こっていた問題はさらに他の要素も加わり、かかるストレスは大きくなります。
ここでのポイントは「リスフラン関節底屈位」です。

MS時、通常は
・前足部の回外方向への可動域
・リスフラン関節の背屈可動域
この可動域があることで適度にアーチが潰れ、衝撃の緩衝や荷重ストレスの分散ができます。
しかし、
シンスプリントの回外パターンの場合には、
先程もお話しした「前足部外反」と、この「リスフラン関節底屈位(背屈可動域制限)」の2つにより、上記の可動域はほぼ無いことが多いです。
ですので、アーチを潰して(プロネーションして)衝撃を緩衝しながら荷重しようとしてもアーチが潰れず、このメカニズムが働かないのです。
アーチを潰せない足部は床反力をダイレクトに受け、そのまま脛骨に伝えてしまいます。
これが「リスフラン関節底屈位」によって起こる脛骨へのストレスです。
この結果として
・ST関節→強い外部内反モーメント
距骨-外旋・背屈
踵骨-内反
MT関節-内転
リスフラン関節-底屈
・膝関節→距骨の動きに伴って下腿・大腿-外旋 が強くなり
外部膝関節内反モーメント増大
・股関節→外部股関節外転モーメント増大
となります。
下肢全体が常に外側にしなる様なストレスを受けながら動作を行っているということですね。
Tst
このタイミングから前足部へ体重を乗せる位置を移行していきます。

ここでもポイントとなるのは「リスフラン関節の底屈位」でのストレスです。
考えられるのは‘‘リスフラン関節の背屈制限による重心移行の遅延‘‘です。
足関節の背屈には
距骨→内旋・底屈
下腿→内旋・前傾 という動作が必要ですが
リスフラン関節が背屈しないということは舟状骨の空間的な落ち込みが起きず、
その結果、
距骨→外旋・背屈
下腿→外旋
となってしまいます。
このようにリスフラン関節の動きが制限されていることにより、動作の制限は距骨の動きにも影響しますので、身体は下腿の外旋・外方傾斜などの側方への動きで代償を行います。
こうなると脛骨の前傾に遅れが生じ、背屈制限という現象になって現れます。
この結果、重心が後方に残る時間が長くなります。
〈リスフラン関節と足関節背屈制限の関係については詳しくはここから〉
外側への代償を行いながらも動作は進行し、そのまま逆側の立脚へと移行します。
◇『力学的モーメントから考えるシンスプリントを発症する機序』
ここまでお話ししてきたように、立脚期には常にST関節回外位を強いられる歩行になります。
回外状態であるということは足関節の内反と底屈(内がえし動作)を行う後脛骨筋や長趾屈筋が短縮状態のままになるということです。
ここにアーチをつぶすように上から体重などのストレスがかかります。(外部足関節外反モーメント)
しかし、アーチを潰すことはできず、脛骨ごと外方へ傾斜するので内部足関節内反モーメントが働き、後脛骨筋や長趾屈筋は強い遠心性収縮を行います。
こうなると重なる腱同士での過剰な圧着が起こり、滑走不全や炎症を引き起こすと考えられます。
ここでもう一つ、このアライメントが疲労骨折に移行しやすい要因になる、脛骨自体への力学的ストレスを考えてみましょう。
脛骨はこの画像のように前方へ凸の形をしています。

この脛骨に対して、MStからTStにかけて後方荷重のまま長軸方向の圧縮ストレス(上からは体重、下からは床反力)がかかる時間が長くなります。
この力は、脛骨を前方凸の形状からさらに前方に「しならせる」ように働きます。
脛骨前方(凸側)→強い引張応力
脛骨後方(凹側)→強い圧迫応力
このようなストレスです。
回外型で特徴的な「前足部外反」と「リスフラン関節底屈位」によって
通常よりも後方荷重の時間が長引くことで、この「しなり」のストレスに晒される時間を長くさせます。
そして走行時や跳躍時に多く使うヒラメ筋などによる後方からの牽引のストレスも加わります。
これが繰り返され、蓄積することでやがては疲労骨折に至るということです。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回はシンスプリントで見られる回外型のアライメントでおこる力学的なストレスとそのメカニズムを考えていきました。
「長い間治らない、痛みが取れても動くと繰り返すシンスプリント」にはこの様な姿勢、アライメントが関係しています。
痛みが取れても運動を再開するとまた繰り返すというのには
このような根本的な運動連鎖が修正できていない事が原因かもしれません。
次にあなたが、なかなか治らないシンスプリントに直面した際には是非、
患部だけでなく少し視野を広げて歩行や立位でのアライメントを評価してみてください。
患部からだけでは見えなかった根本的な問題が見えてくるはずです。
私達のサイトでは、こうした運動連鎖に基づく身体の評価や治療のアプローチについて、
今回の話よりもっと多くの情報を発信しています。
是非あなたの治療のヒントを見つけに来てください!
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スポーツラボ鍼接骨院 千種店
鍼灸師 アスレティックトレーナー
吉川千尋












